シリア:新たな事実。無差別攻撃で増え続ける、市民の死者

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2012年9月24日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:シリア
トピック:変革を求める中東・北アフリカ

無差別攻撃によって破壊された民家(c)AI
無差別攻撃によって破壊された民家(c)AI

シリア軍による情け容赦のない無差別攻撃により、子どもを含む多くの市民が犠牲となっている。

アムネスティは9月上旬、政府軍の攻撃を受けた地域に入り、調査した結果を報告書とビデオ映像にまとめた。イドリブ、ジャバル・アル=ザーウィヤおよび北部ハマ地方の26の町や村では、政府軍の攻撃により、子ども48人と女性20人を含む、市民166人が殺害された。

この数週間、反政府軍の攻勢で撤退を余儀なくされた政府軍は、この地域に無差別爆撃と砲撃を行い、市民全体に悲惨な結果をもたらした。新たな報告書は、それらの攻撃の特徴を、新たな事実をもって示している。


市民に対する無差別攻撃

政府軍は、目標を定めることができない武器を使用して、今や日常的に町や村を爆撃や砲撃している。一般市民を犠牲にすることは承知の上で、である。

住宅地域に対してこのような無差別な攻撃を加えることは、決して容認できない。戦争犯罪といえる。

世界の目がおもにアレッポとダマスカスの戦闘を向いており、今回の調査地域の市民の窮状はほとんど報告されていない。しかし、イドリブ、ジャバル・アル=ザーウィヤ、北部ハマ地方の住民が日々耐えている惨禍は、全く悲惨である。

市民が、自宅で、あるいは砲弾から逃げまどっているとき、あるいは爆撃を避ける避難所などで殺傷されている。

9月16日、ジャバル・アル=ザーウィヤにあるカフル・アウェイドでの連続した空爆で、子ども5人を含む8人が殺害され、多数が負傷した。犠牲者のうち、7人は結婚式の披露宴会場と近くの家で殺害された。1人は少年(6歳)で、パンを買っていたという。


空爆される民家。奪われる命

同じような攻撃が、反政府軍の事実上の支配下になっている地域で繰り返されている。

私たちは日々、この地方のあちこちの町や村で、空爆、砲撃、迫撃砲による攻撃を目撃した。ここ数週間、このような精度の低い武器を住宅地域に向けて展開していることが、市民の死傷者の数を劇的に増加させている。

カフル・アンベルの村では、このような空爆を2回受け、市民35人が殺害された。8月28日には、4回の空爆がマーケット広場にあり、22人の市民が殺害された。

8月22日、ある食料品店の近くで砲撃があり13人が犠牲になった。村を回ってプラスチックを集め、それを売って母親、姉妹、障がいをもつ弟、盲目の父親を養っていたザヒア・アル=アビ(31歳)もそのひとりだった。
大量の負傷者が運び込まれた直後、その病院を攻撃し、パンを買う人びとの列を襲う。これらの攻撃は、多数の市民が集まる場所を意図的に狙っているのであり、国際人道法の侵害と戦争犯罪にあたる。


犠牲になる子どもたち

今回の報告書が記録した多数の子ども死者数は、シリア軍による多くの攻撃は無差別であることを明らかに示している。イドリブ近郊のシェラクの村では8月14日、ゴフラン・ハブーブの自宅が攻撃を受け、本人と弟、従兄弟2人の計4人の子どもたちが殺害された。

数日後の8月18日、イドリブ南部のマアラタル=ノマンの通りに迫撃弾が落とされ、ハジャル・ラジワンとイネス・サブハの2人の少女(ともに5歳)、10歳と11歳の従兄弟が、自宅の外で遊んでいたときに殺害された。

砲撃から逃げているときや、避難場所を探しているときに殺された人々もいる。シリア政府軍が執拗かつ無差別な空爆や砲撃を実施するようになって以来、ここ数週間で何百もの人々が死傷し、その多くが子どもたちである。

しかし、いまだ国際社会の対応は機能せず、このような攻撃の責任者に実効的な圧力を加えることに関し、意見がわかれている。

このような無差別攻撃は戦争犯罪であり、指揮系統に関わった全員は責任を問われ、命令に従っただけという言い逃れはできないと覚悟すべきである。


国際社会は、ただちにアクションを

国連安保理は、これらの戦争犯罪および国際法上の犯罪の加害者が確実に裁判にかけられるよう、シリアの状況を国際刑事裁判所の検察官に委ねる手続きを加速すべきである。

国連安保理の委員は政治的論争を脇に置き、犠牲者を最優先で考えるべきである。

ICCへの付託は国際法の犯罪者に、刑事免責のときは終わり、この紛争のすべての当事者は、政府軍および反政府軍もともに、このような違反を犯す前に熟考すべきであるという、強いメッセージを送ることになる。

反政府軍もときに低精度の武器(迫撃砲など)や本質的に無差別な武器(自家製のロケットなど)を人口密集住宅地で使用し、一般市民を一層危険な状態にしている。

紛争が延々と続くにつれ、反政府軍が長距離用の武器を調達するようになれば、政府軍と同様に大規模で、無差別な攻撃や侵害に手を染めるだろう。国際社会がこれまで止められなかった、あるいは止める気にならなかった攻撃である。

また、すべての武装反政府グループ(自由シリア軍関係であるなしに関わらず)は、政府軍による国際人道法の侵害を自らが犯す同じ違法行為の口実にすることはできない。その指揮下のすべての者たちに、このことは明確にしておかなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2012年9月19日
 

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