- 2023年2月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:シリア
- トピック:地域紛争
シリア政府軍は、アレッポ北部のクルド人が多数を占める地域の封鎖を一刻も早く解除すべきだ。
昨年8月に同地域の道路封鎖が始まって以来、クルド人が多く住む地域の何万人もの住民が食料や燃料などの生活物資の不足に直面してきた。燃料がほぼ底を尽き、人びとは、凍てつく寒さの中で暖をとるために家庭内にあるものを燃やすなどして凌いでいる。
アレッポ北部のシェイク・マクスードやアシュラフィエ、シャハバ地域の50以上の村が、北東シリア自治行政区(AANES)傘下のクルド人民評議会の支配下にある。
シリア政府は、燃料や小麦粉などの必需品や人道支援物資の流入を規制してきた。住民の話では、過去1年間、燃料や小麦粉の流入が断続的に制限され、昨年4月には1カ月以上も滞った。昨年8月の封鎖開始は、シリア北東部のAANES支配に強く反発するトルコとシリアの間の国交正常化交渉の開始時期に重なると、住民は言う。
シリア政府が政治的配慮で何万の住民から必要な物資を奪っているのは、許しがたい。政府はこの人道危機に対し、生活に欠かせない物資の運搬や人道支援団体の移動を無条件に認めるべきだ。これは道徳上の要請というだけでなく、法的な要請でもある。政府には、住民が食物や医薬品などを十分確保できるようにする国際法上の義務がある。生活必需品の流通の阻止は、住民の権利の侵害にあたる。
アムネスティは住民と避難民7人に話を聞き、メディア報道を調べ、衛生画像を分析した。検閲所の設置がいつ始まったのかの特定は難しいが、衛星画像によると、3つの検閲所が昨年増設されたことがわかる。
燃料不足 市民の窮状に拍車
住民の話では、昨年8月末以降、シリア軍はクルド人が多く住む地域への燃料の搬入を制限する措置を取ってきた。その結果、同地域の1日の電気使用時間は、封鎖前の1日7時間から封鎖後には2時間になったという。
物流規制がこのまま続けば、食品店や病院など市民の生活に欠かせない店舗や施設が燃料不足に陥り、閉店や閉鎖を余儀なくされる。複数の住民が、「軍の師団の中には密輸ルートを作り、わずかな量の燃料を法外な値段で売っている」と証言する。
シャハバ地区の病院の勤務医はアムネスティにこう話す。「病院の発電機用燃料がなくなってしまわないかが一番の気がかりだ。ICUや手術室、救命救急センターでは、電気を絶やすわけにいかない。不要不急の照明や医療機器の電気は切ってはいるが、わずかな節電にしかなっていない」と。
シェイク・マクスードに住む、夫と子ども2人の5人暮らしの女性はこう話す。
「古いものやおもちゃなど不要品は燃やす。でも問題は、毒素を吸い込んでしまうこと。だからいつも咳をしている。子どもたちも同じ。子どもが通う学校にはストーブがないので、子どもたちはいつも具合が悪い」
滞る医療支援
アムネスティの聞き取りでは、封鎖が始まって以来、住民は食糧支援を受けられず、病院では最低限必要な医薬品も底をつきつつあった。
前述の5人暮らしの女性は、「夫の高血圧用の薬が切れてしまったのに、病院には薬がまったくない。薬局では法外な値段で売られている」と話す。
病院に物資を届ける予定だった人道支援団体は、シリア当局の許可手続きが長引き支援の延期を余儀なくされたという。また、「政府系人道支援団体のシリア・アラブ赤新月社も封鎖開始以来、支援物資を届けることができない」という証言もあった。
背景情報
過去10年間、アムネスティなどの人権団体は、首都ダマスカス、ダラア、アレッポ、ホムスを始めとする地域がシリア軍に包囲された様子を記録し、公表してきた。アムネスティは2017年には、包囲された地域の住民が食料や医薬品など生活必需品の支援を断たれた上、市外が軍の激しい攻撃を受けたことを報告した。シリア軍の違法行為は、人道に対する罪にあたる。
国際人道法は、民間人の飢餓につながる戦術を禁じている。紛争当事者は、民間人への迅速で円滑な人道支援を許可し、促進しなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2023年1月24日
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