- 2013年1月31日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:パキスタン
- トピック:先住民族/少数民族
軍が関与した疑いが高い殺害の多発に抗議する人びと。© A Majeed/AFP/Getty Images
パキスタン軍が部族地帯の住民を殺害している疑いがあり、軍に対する抗議が地域全域で起きている。アムネスティは、違法な殺人に関与した人物全員を取調べ、彼らを公正な裁判にかけるよう、当局に要請した。
1月15日、カイバル部族庁のバラ地区の各所で、置き去りにされた18人の遺体が発見された。親族の申し立てによると、パキスタンの軍隊「フロンティア・コープ」が、18人それぞれの自宅を襲撃し、射殺したという。ある一家では、家族7人が犠牲となっていた。
翌日、州知事邸とペシャワル記者クラブの前で抗議活動があった。
アムネスティの調べによると、軍は毎週のように、住民を逮捕し遺体にして家族のもとに返すか、部族地帯に放置している。これらの死因を調べ、犯人を裁かなければ、暴力の連鎖が続くだろう。
政府軍による権力の乱用
アムネスティは2012年12月、パキスタンに関する調査報告書「凶悪な勢力」を公開。軍とタリバンが、部族地帯で権力を乱用し、超法規的死刑、強制失踪、恣意的拘束、拷問などを行っている事実を指摘した。
アムネスティが知る限り、現役、退役を問わず、軍人が部族地帯でかかわったと思われる超法規的、死刑あるいは他の人権侵害で起訴された例はない。アムネスティが報告した事例も含め、十分な証拠があるにもかかわらず、起訴に至らないことが多い。
パキスタンでは、部族地帯は人権擁護法の対象になっていない。また治安法は、軍に全面的権限と刑事免責を与えている。この状況では、裁判に必要な情報資料の質が、向上するとは思えない。
逮捕と拘禁の全面的権限を与えられた軍
カイバルと北ワジリスタン部族特区は、部族地帯の一部だ。同地域は、裁判所、議会、パキスタン憲法が保障した基本的な人権擁護から除外されたエリアである。
部族地帯の一部では、いまだ厳格な植民地時代のフロンティア犯罪法が生きている。2011年に、軍は今までの違反の捜査を阻止できる(民族のための)諸行動法規(AACPR)のもとで、逮捕と拘禁の全面的な権限を与えられた。
パキスタンでは過去10年、全土で数千の死傷者を出してきたタリバンのような、武装グループとの試練に直面している。しかし政府が人権を尊重しない現行の法体制では、タリバンの犯罪であれ、政府の犯罪であれ、それらの人権侵害に対し、刑事免責の土壌をつくることになる。強力な法の支配と公正さへ地域を導くことは、至難の業だ。
報告書「凶悪な勢力」でも詳しく述べられている通り、FCRは廃止または国際的な人権基準に合わせて改革すべきだ。また、軍がこれまでの人権侵害を隠ぺいする温床となっているAACPRは、廃止すべきである。またパキスタン当局は、裁判所と議会の支配権が、部族地帯にまで及ぶようにしなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2013年1月17日
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