ミャンマー(ビルマ):政府は異教徒間の紛争に終止符を

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2013年5月 9日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:先住民族/少数民族

ヤカイン州では何千というロヒンギャのイスラム教徒が暴力によって強制移住させられている(C) AFP/Getty Images
ヤカイン州では何千というロヒンギャのイスラム教徒が暴力によって強制移住させられている(C) AFP/Getty Images

ビルマ(ミャンマー)で昨年起きた残虐な暴力事件に対する政府側の勧告は、少数民族ロヒンギャのイスラム教徒への差別に対する効果的な対策にならず、さらなる人権侵害を引き起こすこともありえる。

ビルマ西部のヤカイン(アラカン)州で昨年6月に起きた仏教徒とイスラム教徒の間の衝突について、政府が設立したヤカイン委員会が4月下旬、調査報告を発表した。この衝突は多くの死者を出し、何千もの人びとが強制退去を余儀なくされている。

委員会にはロヒンギャの委員は一人もいないのだが、政府に対し国境防衛軍も加えたヤカイン州の治安軍を2倍にするように要求した。

この報告にはいくつか肯定的な点もあるが、問題点もある。
去年の衝突の詳細調査を保留にして、人権侵害に関与した人物の停職処分さえもないまま、治安軍を増強することはさらに虐待を増やすことになる。

治安軍の包括的な改革、例えば、しっかりした説明責任や適切な体制の構築、国際基準に十分沿った訓練なども重要である。

2012年6月以来、国境防衛軍や警察、軍隊は何百もの成人男性や少年(ほとんどはイスラム教徒が多数派の地域出身)を恣意的に拘禁し、その多くに拷問などの虐待を加えている。

治安軍がイスラム教徒コミュニティ、とりわけ少数派になるロヒンギャの人びとを攻撃から保護できていないという報告も後を絶たない。ケースによっては、治安軍は不必要に過剰な武力を使い、結果的に死傷者を出している。

ヤカイン委員会は事実調査委員会の設立を勧告し、法律を破れば確実に起訴されなければならないことを強調した。

事実調査委員会が暴力行為の当事者を特定する独立した調査の一部として機能し、調査に基づいた事実が公表されれば、その設立は前進と言える。

しかし、そのような委員会は刑事司法や国際法の犯罪に対する償いの妨げになったり、取って代わるべきではない。

ヤカイン委員会は、「ベンガリ」と報告書では言及されているロヒンギャが国籍取得を主張していることについて、「透明性や責任のある方法」で検討するべきだ、と述べている。

しかし、ロヒンギャのイスラム教徒を無国籍にすることを記載している1982年の国籍法を見直す要求はしなかった。

国際人権基準では、いかなる人も無国籍ではありえない。国籍の取得でロヒンギャが不当に扱われていること自体が、緊急に対処すべき差別の一形態である。

また、ヤカイン委員会は人道支援が「いまだにいくつかの欠陥を抱えている」ことを認め、今も続くヤカイン州の人道危機への対応を要求している。

国連の調査によると、約14万人がヤカイン州を越えて強制退去させられており、食べ物や医療措置のような必要最低限なものもなかなか手に入らない状態である。

5月に始まるモンスーンの季節に、状況は悪化すると見込まれている。というのも、豪雨により、いくつかの国内避難民のキャンプが流されてしまう恐れがあるからだ。

遠隔地や未登録のキャンプの住民を含めたすべての人びとが支援を必要としている。人道支援機関が彼らを支援したくても自由に接触することができないことは、大きな懸念だ。

雨期の人道危機を避けるために、洪水になりやすい地域に住む強制退去させられた人びとへの支援準備が緊急に必要である。

ヤカイン委員会はヤカイン人とロヒンギャの事実上の強制的な隔離は、お互いの緊張が収まるまで、続けるべきだと勧告した。

確かに、平穏な状態を取り戻すことは必要だ。一方で、政府は国内避難民に意見を募って、彼らが故郷へ自発的に戻れるように手助けする計画も推進しなければならない。隔離と国内避難民キャンプの問題解決に、長い時間をかけてはならない。

昨年8月に設立されたヤカイン委員会は27人で構成され、イスラム教徒も含まれる。しかし、ロヒンギャコミュニティからは一人も入っていない。

アムネスティ国際ニュース
2013年4月30日