日本:紛争時の性的暴力を防止する世界的な努力を害する日本

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2013年11月25日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:日本
トピック:女性の権利

「女性に対する暴力撤廃の国際デー」にあたりアムネスティ・インターナショナルは、日本政府に対し、第二次世界大戦前および大戦中の軍による性奴隷制の被害者への義務を果たし、G8の性暴力防止宣言に対する責務を果たすよう求める。

今年初め、日本は他のG8加盟国とともに、武力紛争時の性暴力犯罪を防止し加害者の責任を問うことを目的とした宣言に賛同した。 しかし、日本はかつての軍による性奴隷制の真相究明、被害者の名誉の回復、賠償などの正義を果たさなかった。これは、今回の取り組みの足を引っ張るだけでなく、他国が紛争時の性暴力被害者に正義を果たさない隠れ蓑となる。

アジア太平洋地域の多くの女性が、1932年から第二次世界大戦終戦まで、旧日本軍により性奴隷制の犠牲になった。旧日本軍は、年齢、貧困、階級、家族状態、教育、国籍、民族などさまざまな事情で欺きやすく、性奴隷制の罠にはまりやすい女性や少女を、巧みに勧誘した。強引な勧誘もあった。 全員が自由を奪われたまま性奴隷にされた。 その結果、被害者は、肉体的、精神的な健康障害、孤独、恥の意識、多くは極度の貧困に陥り、今もなお苦しみ続けている。

G8の宣言では、性暴力犯罪に対する問題意識を喚起し、正義を果たす妨げとなる要因を取り除き、被害者に必要な支援を与え、加害者を裁くことを約束している。しかし、日本は軍の性奴隷制を全面的に認めず、責任を取ることもなく、正義を求める被害者の訴えや活動を繰り返し否定してきた。

アムネスティが特に懸念するのは、最近日本の名だたる政治家や高官が旧日本軍の性奴隷制を容認し、制度の存在を否定するなどしていることである。 例えば、橋下徹大阪市長は、軍の性奴隷制は「必要だった」とコメントしたし、政府は、国連の普遍的定期審査に対する補遺の中で「問題を政治や外交上の問題にしてはならない」と述べている。

安倍首相は9月、ニューヨークの国連総会で「女性が輝く社会の実現」を提唱した。 しかし、日本がかつての性奴隷制の被害者に対し十分な謝罪や賠償をなさない限り、女性に対するいかなる賛美も空々しく聞こえる。 正義を果たす要求に応えてはじめて、日本は紛争地域での性暴力撲滅や女性の権利拡大の実現に指導的役割を果たすことができる。

アジア太平洋地域の性奴隷被害者はますます高齢化し、その多くが正義や充分な賠償を受けないまま亡くなっている。

国際社会、特に戦争の被害が大きかった国々は日本と協力しながら、また被害者を主体的に巻き込みながら、この性奴隷問題に、真相究明、名誉の回復、賠償、過ちを繰り返さないという誓い、歴史教育など、総合的視点で迅速に対処することが必要である。

さらに、アムネスティが日本政府に要求していることは、旧日本軍の性奴隷制の被害者に一刻も早く謝罪や補償など正義を果たし、G8の紛争時の性暴力撤廃宣言との矛盾を解消することである。

特に、アムネスティは日本政府に次のことを求める。

  • 女性たちに苦しみを与えた性奴隷制を公式に認め、大多数の被害者が納得できる方法で、法的責任をはじめとした全責任を取ること。
  • 女性たちに対して犯した罪を明確に謝罪し、政府が直接、国際基準に合致した、適切で実効性のある賠償をすること。
  • 日本の教育制度で使用される教科書に、日本軍の性奴隷制を正確に記述することにより、2度と繰り返さないことを保証すること。

背景

今日まで、日本は性奴隷制の責任を認めず、被害者による真相究明、名誉の回復、賠償などの要求を拒否してきた。政府は、慰安婦問題に関して長い間、1951年のサンフランシスコ講和条約および二国間の平和条約などで決着しているとする立場を取ってきた。アムネスティは、これらの条約が性奴隷制行為に言及しておらず、賠償を求める個人を排除していないことなどから、日本政府の立場を支持しない。

日本政府によって設立された民間基金のアジア女性基金は、賠償に関する国際基準に合わず、被害者は口封じの手段と受け止めている。さらに、政府は以前認めたことや謝罪表明を否定し、法的責任をはじめとする責任逃れを続けている。

日本国内では、多くの地方議会が旧日本軍の性奴隷制の被害者に正義を果たすために実効性のある対応をするよう国に求める意見書を採択してきた。京都府議会は今年3月、県府議会レベルとして初めて、性奴隷制の被害者らへの賠償や救済を行うよう中央政府に要求した。6月には島根県議会が続いた。

アムネスティ国際ニュース
2013年11月25日