- 2014年6月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フランス
- トピック:難民と移民
約700人の移民、庇護希望者をキャンプから追い出す機動隊(C) AFP/Getty Images
5月28日、フランス北部カレーでおよそ700人の移民や庇護希望者が、非公式のキャンプから追い出された。当局は、衛生上問題があるためだと説明するが、かえって状況を悪化させる恐れがある。
フランス警察はこの朝、移民や庇護希望者の住む仮設居住地を取り囲み、住民を追い立て始めた。疥癬(皮膚病の一種)が発生したとの報告を受けたため、と弁明している。当局は衛生面での緊急事態対策に強制退去という方法を用いたようだが、解決より問題が悪化する可能性の方が高い。追い出された人びとが、この先どこに住めるのか、必要な治療を受けられるのか、わからないままだ。
未成年には一時的な代替住居が与えられるようだが、その数ははっきりしない。ほとんどの人は住む場所を失うだろう。そうなれば、別な人権侵害にさらされる危険がある。
現地NGOによると、キャンプに住んでいたのは、ほとんどがシリア、アフガニスタン、エリトリア国籍の人びとである。すでにフランスに保護を求めている人もいれば、英国に渡ることを考えている人もいる。
アムネスティはじめ人権、医療、移民の権利に取り組む10のNGOは、この強制退去の前日、首相に書簡を出し、キャンプにおける悲惨な衛生環境について再度伝え、強制退去ではなく適切な医療対応をとるよう求めた。
この場所の衛生問題についてはNGOが繰り返し注意を喚起してきたが、フランス当局は聞く耳を持たず、大量の強制退去を推し進めた。疥癬治療の薬は十分に行き届いていないという報告もあり、懸念はさらに募る。
強制退去は答えではない。必要なのは、綿密な衛生計画である。しかし残念ながら、フランスではこれが初めてではない。これまで何度も、住民に選択肢を用意することなく、一度に大勢の人を強制的に退去させてきた。
国際法のもと、フランスは強制退去を実施するのではなく、強制退去から人びとを守るべきだ。喫緊の衛生問題があるときは、なおさらだ。移民や庇護希望者も例外ではない。フランスには彼らに対する責務がある。
認可されていない居住地での暮らしはもとより不安定で衛生状況も芳しくない。強制退去は、こうした状況を悪化させる。医療支援団体が住民に提供してきた治療やプログラムを中断させるだけでなく、不十分な住宅供給の問題を先送りにすることになる。
アムネスティ国際ニュース
2014年5月28日
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