- 2024年7月26日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フランス
- トピック:表現の自由
パリ五輪でのフランス人女性選手のヒジャブ着用の禁止は、国際人権法に違反し、フランスの関係当局の差別的な偽善とオリンピック委員会の弱腰を浮き彫りにした。
自国選手のスポーツ用ヒジャブの禁止は、パリ大会が初のジェンダー平等オリンピックだというフランスの主張を根底から覆し、同国スポーツ界に根付く人種差別とジェンダー差別を露呈している。
女性の服装を取り締まる差別的規則はイスラム教徒女性の人権を侵害し、スポーツに参加する上で大きな障害となる。また、スポーツをより包括的に、身近なものにしようとする取り組みに水を差す。
ヒジャブの禁止は、五輪開催国が国際人権条約の義務や国際オリンピック委員会(IOC)の人権枠組みで定められた公約や価値観に違反する。しかしIOCは、度重なる要請にもかかわらず、フランスのスポーツ当局に五輪でのヒジャブ着用禁止の撤回を促すことを拒否している。また、アムネスティを含む人権団体・選手団体などがIOCに書簡を連名で送り行動を求めたが、「今回のヒジャブ禁止はIOCの管轄外であり、信教の自由の解釈は国によってさまざまだ」との回答だった。
スポーツ用ヒジャブの禁止は、FIFA(国際サッカー連盟)、FIBA(国際バスケットボール連盟)、FIVB(国際バレーボール連盟)などの服装規定と矛盾する。 アムネスティが欧州38カ国の規定を調べたところ、宗教的な被り物の禁止を国内法や各スポーツの規則で明文化しているのはフランスだけだった。
フランスでは、イスラム教徒女性に対する宗教的被り物の禁止は、オリンピックやパラリンピックにとどまらない。サッカー、バスケットボール、バレーボールなどでは、プロ、アマを問わずヒジャブの着用が禁止されている。その結果、多くのムスリム女性が競技から排除され、オリンピックレベルに達する上で必要なトレーニングや競技の機会を奪われている。
スポーツでの宗教的排斥は、屈辱、トラウマ、恐怖を引き起こし、多くの女性が好きなスポーツをやめざるを得なくなったり、他の国に活躍の場を求めたりする結果となっている。余暇やレクリエーション、あるいはプロ選手としての競技参加を妨げられることは、心身の健康だけでなく生活全体に深刻な影響をもたらしかねない。
国際法では、国家の中立性や世俗主義は表現の自由や宗教の自由を制限する正当な理由にはならない。にもかかわらず、フランス政府は数年前からこれらの主義主張を振りかざし、イスラム教徒の女性に不当な影響を与える法律や政策を正当化してきた。これは20年以上に及ぶイスラム教徒女性の服装に関わる有害な法律や規則制定の一環であり、偏見、人種差別、ジェンダーに基づくイスラム恐怖症などがもたらしたものだ。
サッカーの団体「ヒジャブース」の共同代表は、「私たちは、政治的、宗教的問題ではなく、スポーツに参加する人権の問題として闘っている」とアムネスティに語った。
政治家が女性の服装を指示してはならないし、女性が、スポーツと、信仰、信念、文化的アイデンティティのどちらかを選ぶよう強要されることがあってはならない。
今からでも遅過ぎることはない。フランスの政府とスポーツ連盟、IOCは、夏の五輪とすべてのスポーツでヒジャブ着用の禁止を廃止すべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2024年7月16日
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