日本:谷垣法相に対する難民関係要請書

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2014年6月27日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:難民と移民

法務大臣 谷垣 禎一 殿

2014年6月11日

要 請 書
日本における難民、庇護希望者および移住者の権利を保障するため
日本政府の取り組みを促進するよう求めます

公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 若林秀樹
 

市民的及び政治的権利に関する委員会(以下、自由権規約委員会)は、2014年7月15日および16日に、ジュネーブにて第6回日本政府報告審査を実施します。審査に先立ち、アムネスティ・インターナショナルは、日本の人権状況に関する情報を提供するために、自由権規約委員会へ提言書を6月13日に提出いたしました。

提言書では、とりわけ難民、庇護希望者および移住者について、以下の通り日本政府に対して提言しております。

     
  1. 難民認定手続きが公正かつ効果的で透明性のある方法で行われ、国際法と難民条約の基準に基づく手続きを確保する。

  2. 移住者と庇護希望者に対する無期限の収容を止める。

  3. 移住者と庇護希望者の収容は、最終手段であり、必要で適切かつ法の根拠に基づき、代替措置が効果的でなく、また逃亡の客観的危険性があると、当局が証明できる場合に限定されることを保証する。

  4. 被収容者に対する拘束具の使用は、移送の際に逃亡を防ぐ、自傷行為や他傷行為を予防する、器物損壊を予防するといった場合に限定することを保証する。拘束具の使用は厳密に必要な場合に限って使用されなければならない。

  5. 効果的な医療及び精神的ケアについて、被収容者である移住者と庇護希望者が、緊急事態を含みアクセスできることを保証する。

  6. 入国者収容所等視察委員会の独立性、権限、有効性を強化する。同委員会に対し適切な資料を提供し、入管収容施設に対する効果的な視察を確保し、施設内の移住者または庇護希望者からの申し立ての受理・審査を妨げてはならない。

難民政策に関して、2008年の日本政府第5回定期報告に対する自由権規約委員会の審査はその最終見解にて、改正入管法の問題や認定率の低さ、難民認定手続きの遅延、難民参与員の独立性や権限の欠如について懸念を示しました。同委員会勧告は、庇護希望者を拷問の危険がある国へ送還することを明示的に禁止するため、法改正を検討し、手続中における適切な支援を確保すべきであるとしました(CCPR/C/JPN/CO/5、パラグラフ25)。

前回の審査から6年が経過し、自由権規約委員会は、今回の審査において再度、生命、自由が危機にさらされるおそれのある国に送還されないノン・ルフールマンの原則の保障のための法改正や、庇護希望者の収容状況について情報提供を求めています(自由権規約委員会質問事項)。

日本政府はすでに、自由権規約委員会に対し回答を提出しています。難民不認定処分等に対する異議申立て制度や、難民審査参与員制度を設け(CCPR/C/JPN/6、パラグラフ195)、UNHCRやNGOからの推薦を受けた者を含む難民参与員の意見を尊重しているため、手続保障が確保されていると述べています(パラグラフ196)。

しかし、2013度は難民審査参与員の意見をくつがえした事例(4件7名)も認められました。そもそも、難民認定手続きに対し、庇護希望者は言語の問題に直面し、また自国の情報を収集することが大きな負担となっています。申請手続き自体が困難であり、申請後の事後的な参与員の制度の確立だけでは不十分であると考えます。

また、日本政府は、難民認定申請者を多く収容していることは誤解であり、収容が長期に及ぶ場合には仮放免をしていると回答しています(パラグラフ207、追加資料)。しかし、収容期間が数カ月ではなく数年にわたる事例も散見されます。さらに、収容施設内での問題として、常勤医のいない収容施設において医療へのアクセスが制限され、病院移送時も含め、拘束具の使用が常態化されていることは、被収容者の肉体的・精神的尊厳を欠く取扱いと言えます。

アムネスティは長年にわたり、日本政府が国際人権諸機関からの勧告を完全に実施し、難民保護のための制度を抜本的に見直すよう要請してきました。今回の提言書は、難民、庇護希望者、移住者の権利が制限され続けていることを改めて浮き彫りにしています。例えば、難民認定申請者は2013年度に3,260人となり、過去最高数となっているにもかかわらず、認定者はわずか6人でした。シリア難民をはじめ、いわゆる紛争難民を含めた、難民条約に基づく難民以外の庇護希望者は今後増加すると考えられます。また、報道機関によると現政権は移民の受け入れを拡大する方針を採っており、移住者の人権を保障する法整備が喫緊の課題となります。

以上、来る7月の自由権規約委員会による日本政府報告審査を機に、日本政府が難民、庇護希望者および移住者の人権をより保障する政策を促進するよう要請いたします。
 

以上