シリア:国境のシリア難民数十万人に向けられる銃口

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2014年11月20日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:シリア
トピック:難民と移民

トルコ政府が運営する難民キャンプは飽和状態で、入れない人たちは外で何週間も何カ月も待ち続けている。
トルコ政府が運営する難民キャンプは飽和状態で、入れない人たちは外で何週間も何カ月も待ち続けている。

トルコへのシリア難民が増大する事態に国際社会が手をこまねいている間に、かつてないほど多数の難民が国境での追い返しや発砲を受け、数十万人が極貧状況に置かれている。

アムネスティは、過去3年半の間に保護を求めてトルコに逃れてきた160万人が人権侵害に直面している事態を報告書にまとめた。報告書では、この難民危機に対して世界の各国が応分の財政的責任を果たすことに躊躇するという嘆かわしい状況も明らかにしている。

膨大な数のシリア難民を抱えるトルコが、その最低限のニーズを満たすことに悪戦苦闘していることは明らかである。その結果として、トルコの国境をどうにか超えたシリア難民の多くが困窮生活を余儀なくされてきた。国際社会の人道支援は微々たるものだった。一方でトルコも、支援の拡大をもっと強力に要請すべきである。

トルコは建前としてシリアとの国境を開いているが、紛争による荒廃から逃れようとする多くの人びとにとっては、現実は厳しかった。 多くの人たちが国境で足止めを食い、発砲された人もいる。

紛争や迫害などの人権侵害を逃れてシリアを脱出した人は、320万にのぼる。トルコは、その半数を受け入れてきた。 トルコの発表では、難民対応でこれまでに40億ドル(約4,600億円)を支出してきた。シリア難民救済資金として2014年に国連が目指した4億970万ドル(約570億円)のわずか28%しか集まっていない。

トルコは必要な資金の大部分を負担してきた。多くの経済的に豊かな国々が、この危機に際して拠出金の負担増や難民の受け入れに難色を示しているのは、何とも情けない。

難民の97%を受け入れているのは、トルコ、レバノン、ヨルダン、エジプトなどの近隣諸国だ。

国境での発砲

トルコは、シリア難民に対して国境の検問所を開放してきた。しかし実際に開かれているのは、900キロある国境沿いで、2カ所に過ぎない。この2カ所の検問所でさえも、パスポートを所持していなければ、緊急の治療や人道上の必要性がなければ、入国を認めない。

さらに、ほとんどの難民にとって、通行可能な検問所は遥かに遠い。そのため、しばしば越境請負業者を使って、困難で危険な紛争地の不法ルートを選ぶという手段を取らざるを得なくなる。そのルートではしばしば武装勢力に出くわす。

アムネスティは、昨年12月から今年8月までの間に、不法越境で国境警備隊に17人が銃殺されている事実を把握している。紛争を逃れてきて必死に安全を求めてきた人に銃を向けるとは、何とも卑劣である。

今年5月19日の未明、アリ・アジマー君(14歳)はトルコとの国境付近まできて頭部に銃弾を受けた。父親の話では、アリ君は9人の難民と一緒だった。国境までおよそ10mのところでトルコ人の声が聞こえた。怖くなったアリ君は、引き返そうとしたところを、側頭部を撃たれた。事前の警告や呼びかけ、空砲はなかった。この大けがでアリ君は両目とも失明してしまった。

国境を超えても

トルコにいる難民160万以上に対して、生活必需品がそろったキャンプに住んでいるのは、わずか22万人だ。130万人以上は自力で生活する方法を見つけなければならない。政府筋によると、公的な難民キャンプ以外にいる難民で人道機関や団体の支援を受けているのは、わずか15%でしかない。

最低限の食糧や場所を確保するために、親は子どもを働かせるなどの窮余の策でやりくりしようとしている。

2年前、イブラヒム君(10歳)とその家族はアレッポを脱出してトルコに入り、キリスという国境の町で暮らしている。 父と息子は生活のためにゴミ箱からプレスチックを探し集め、プラスチック500グラムで50セント(58円)の収入を得ていた。「毎朝6時に起きて、作業が終わるのが午後4時ごろ」とイブラヒム君は話す。ときに時間があると、地元の学校で読み書きを教わっている。兄弟10人のうち学校に行っているのは彼だけだ。

紛争の惨禍を逃れてきたほとんどのシリア難民は、希望のない厳しい現実にぶち当たっている。彼らは国際社会に見捨てられている。世界の裕福な国々は、こと難民への資金支援や定住先の提供となると、腰が重い。

アムネスティ国際ニュース
2014年11月20日

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