ミャンマー(ビルマ):民族・宗教関連法は差別と暴力を助長

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2015年3月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

ビルマ(ミャンマー)議会は、まん延する差別を助長し、宗教的少数派に対する暴力を助長する恐れがある法案を否決するか、大幅に修正しなければならない。

現在議会で議論されている4法案は、人種と宗教の保護を目的としているというが、宗教とジェンダーに基づく深刻な差別を生む可能性をはらんでいる。この法律が施行されると改宗や新たに宗教を信仰するときに国の承認が必要となる。また、仏教徒の女性と結婚した非仏教徒の男性には、さまざまな差別的な責務が課せられる。

著しく差別的なこの法案は、そもそも議論に値するものではなく、廃案にされるべきである。法案は、国粋主義の団体などが触れ回ってきた、女性や少数派、特にイスラム教徒に対する有害な偏見を助長する。もしこれが成立すると、女性や少数派をさらに差別する裁量を国が手にするだけでなく、民族間の暴動が広がりかねない。

これまでの女性に対する集団的な差別に加えて、民族・宗教間で不穏な緊張感が高まる情勢の中で、この法案は議論されてきた。ロヒンギャをはじめとする少数派が法的、政策的、そして実際に悲惨な差別を受けている現状をみると、この法案は女性や特定の集団を標的にしたものだと考えられる。

法案が通過すると少数民族や宗教的少数派がその権利を行使できなくなる恐れがあるだけでなく、国が差別を黙認、あるいは同意すらしていると思われる事態に陥る。また同国は、差別的な法案を議論することで、現在直面している多くの深刻な政治的・経済的問題から人びとの目をそらそうとしている。

アムネスティ・インターナショナルと国際司法裁判所が、この4法案について法的分析を行った結果、次のことが分かった。

  • 「改宗法」は、他宗教への改宗において国の機関へ申請することを義務付けており、これは明らかに信教の自由の権利を侵害するものである。同法のもとでは、国の役人と地域住民で構成される地区登録委員会が設立され、委員会が改宗の申請を「認可」することになる。市民ではない人たち、特にビルマの市民権を与えられていない少数民族ロヒンギャに適用されるのか、されるとすればどのようにかは、不明である。ビルマにおいて、宗教的緊張が急速に高まる中、当局がこの法律を乱用し、少数民族にさらなる嫌がらせを行う恐れがある。
     
  • 「女性仏教徒の特別婚姻法」は、他宗教の男性と結婚する女性仏教徒にのみ対象を絞り、規制していることは明らかである。これは宗教的にもジェンダーの視点からも露骨な差別であり、女性仏教徒は弱者で非仏教徒の夫は仏教徒の妻を無理にでも改宗させるものだという、広く普及している固定概念を助長する。この法律は仏教徒の女性だけでなく、非仏教徒の男性に対しても差別的である。彼らは仏教徒の女性と結婚したなら、仏教徒の男性以上に大きな負担を背負う。
     
  • 「人口抑制保健法」は、表向きは貧しい人びとの生活水準の向上を目的としているが、人権への保護措置を欠く。この法律は、女性の出産間隔を36カ月としているが、この法律に違反した女性を罰するのか、罰するとすればどのようにかは、不明瞭である。多産の女性を保護するのに欠かせない措置がないため、強制的な避妊や不妊手術、中絶などの生殖管理が導入されかねない。
     
  • 「一夫一婦法」では、婚外関係を犯罪とするなど、個人や家族のプライバシーに恣意的に介入する恐れのある規定が提案されている。結婚と家族に関する現行の法を具体化・強化すべきである。

アムネスティ国際ニュース
2015年3月3日

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