ミャンマー(ビルマ):恐怖で締め付けられるメディア

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2015年6月19日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

ビルマ政府は11月の総選挙が近づくにつれ、メディアに対する抑圧を強化しつつある。独立系ジャーナリストやその情報源を黙らせようと、脅迫や嫌がらせ、投獄などを行っている。

アムネスティは新しく発表した報告書『政府の検閲と自己検閲のはざまで』で、ビルマ政府が、2011年から政治・経済改革を導入する一方で、表現の自由の抑圧のために、さまざまな手段を使ってメディアに迫害や脅迫を加えている様子を明らかにしている。

ここ数年で締め付けはさらに厳しくなり、過去1年で少なくとも10人のメディア関係者が投獄された。彼らは全員「良心の囚人」である。

ビルマでは現在、発展という名のもとに抑圧が行われている。その手口もこれまでと変わらず、逮捕、監視、脅迫、投獄などだ。目的は、不都合な真実を知るジャーナリストの声を封じるためだ。実際、表現の自由の状況はかつて以上に悪くなっている。

メディアの状況は、2011年に政治改革が始まって以来、劇的に変化した。かつては厳しい検閲のもと一握りのメディアしかなかったが、現在はいくつかの民間の新聞社や放送局があり、メディア業界は活気づいている。しかし、それでもメディアへの抑圧は広範囲に及び、政府は曖昧に規定された厳しい法律を利用して記者らを投獄している。

恐怖心を植え付けて沈黙を強いる

メディア関係者の話では、日常的に監視され、「投獄するぞ」という脅迫を受けているため、多くの記者が自己検閲をするようになったという。彼らは越えてはいけない一線をよく分かっている。たとえば、軍、過激国粋主義の仏教徒、苦境にある少数民族のロヒンギャなどがテーマの記事は、掲載を控えがちだ。

ユニティー新聞社の従業員が、秘密の化学兵器工場の記事を掲載して、逮捕されたのは、その一線を超えた例だ。5人は2014年7月にそれぞれ7年の刑を受けて投獄された。

このような事例が恐怖心を煽る。聞き取りをしたメディアの大半が、投獄などの報復を恐れて、匿名を希望したことからもわかる。

他にも多くのメディア関係者が、とりわけ政治的に微妙な問題を取り上げて、嫌がらせや脅迫を受けている。メディアに対する攻撃は政府、軍、諜報機関だけでなく、過激国粋主義の仏教徒集団からもくる。記者の話では、少数民族の地域の武力衝突のことなど、軍に関係した記事を報道したときには、暴力や投獄をちらつかせた脅しを軍関係者から受けたという。

総選挙前の今こそ自由な報道が重要

今年後半にある選挙で投票する市民にとっては、情報を提供するメディアの自由な報道活動が、これまで以上に重要だ。政府は、記者の使命としての報道活動をしただけで投獄されている記者全員を直ちに釈放し、表現の自由の尊重を公に約束し、国への反論や批判を封じるために適用している法律を廃止しなければならない。

また国際社会は、ビルマ政府に圧力をかけてメディアの弾圧を終わらせる上で重要な役割を持つ。投獄されているメディア関係者や他の良心の囚人の釈放を求めて、強い圧力をかけていくことが求められている。総選挙までの数カ月、脆弱な人権状況をしっかり監視していかなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2015年6月17日