日本:第5次出入国管理基本計画(案)に対する意見書

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2015年7月21日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:

第5次出入国管理基本計画(案)に対する意見書

2015年7月21日
公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本

法務省は、外国人の入国・在留の管理に関する施策の第5次基本計画案を発表した。これをもとに出入国管理及び難民認定法の改正又は運用が変更されると考えられる。しかし、本計画案では、外国籍を有する者の人権が新たに制限されたり、人権侵害が助長される恐れがある。アムネスティ日本は、人権に配慮した国づくりのため、下記の意見を提出する。

  1. 施策案1に対する意見(我が国経済社会に活力をもたらす外国人の円滑な受け入れ)

    高齢化社会を踏まえ、介護分野での外国人の受け入れを推進することが発表された。日本人介護士であっても、低賃金で長時間勤務などの待遇が問題となっている現状がある。

    同分野の人手不足のみを理由に在留資格を拡充することは、言葉や文化の壁がある者にとって、さらに過酷な労働環境に置かれやすい状況を生み出す可能性がある。介護業界や関係各所との連携で、人権に配慮した具体的な検討をすべきである。

    また、 東京オリンピック・パラリンピック関連で緊急かつ時限的措置として、建設分野における外国人の受け入れ実施が決定されている。しかし、短期的な労働者確保によって、外国人労働者が搾取されやすい状況に置かれる恐れがある。政府が低賃金の労働力を確保するために外国人を受け入れ、建築作業の終了とともに帰国させるならば、外国人労働者は使い捨ての労働力といえよう。建築業界における管理体制強化だけでなく、運用状況において人権保障の観点を入れることが必要である。

  2. 施策案3に対する意見(新たな技能実習制度の構築に向けた取り組み)

    技能実習制度の現状は、安価な労働力の確保になっていると国連の諸委員会などから繰り返し報告されている。不適切な管理団体や実施機関がある現状は、法務省も認めているところである。通報制度の整備や罰則規定が本計画で提案されているが、事後的な対応策だけであれば、職業選択の自由がないことを含め、実習生が搾取されやすい従来の制度的問題に対する根本的な解決にはならない。実習生の権利保障の対策がしっかりと講じられ、本来の目的に沿った運用が徹底されるまで、安易に対象職種を拡大したり、実習期間を延長したりすべきではない。

  3. 施策案4に対する意見(在留管理制度の的確な運用等による外国人との共生社会実現への寄与)

    基本計画案は、外国人との共生社会の実現を目指すとして、在留管理制度の運用と見直しとともに、受け入れ後の地域における「住民」の生活環境の整備や権利保障への配慮をうたっている。

    法務省に一元化された在留管理制度の導入以来、難民申請者を含む非正規滞在者は住民基本台帳から除外され、暮らしと生存を支える基本的な行政サービスを享受できない深刻な状況に陥っていることが市民団体から指摘されてきた。

    潜在的に在留管理外(住民基本台帳外)に置かれた外国籍または無国籍者に対し、行政サービスを含めた基本的権利を保障するための方針を持つべきである。

  4. 施策案6に対する意見(安全・安心な社会の実現に向けた水際対策及び不法滞在者対策等の推進)

    新たな基本計画では、入国管理局の個人識別情報を活用した上陸審査について、顔写真の水際対策への活用等新たな技術の運用を検討するとしている。治安の維持を理由に個人情報を転用することは、プライバシーの保護の侵害など、人権侵害の恐れがある。一度登録されたデータに誤りがあった場合に、国外へ当該外国人が排除された後では取り返しがつかない。慎重な運用を考慮すべきである。

    また、外国人収容施設における被収容者の処遇と迅速な送還の実施を掲げているが被収容者の中には難民申請者も含まれている。収容は最終手段でなければならず、無期限の収容をただちに止めなければならない。難民申請者以外の非正規滞在者であっても、収容を避けるべきである。

    さらに、入国者収容所等視察委員会が収容施設を視察し改善の意見を述べているが、それらが十分に反映されていない現状が指摘されている。視察委員会の意見がより反映される取組みを求める。

  5. 施策案7に対する意見(難民の適正かつ迅速な庇護の推進)

    難民認定手続きは、国際法と難民条約の基準に合致した、公正かつ効果的で透明性のある方法で行わなければならない。計画案においては、適正かつ迅速な取り組みが優先されている。一見良い対応と読むことができるが、一律に拙速に判断することによる弊害が懸念される。

    例えば、申請者の事前振り分けや再申請の制限は、難民申請者にとって必要な保護を受けにくくする恐れがある。個々の事情を考慮しないまま事前振り分けが安易に出身国別や事情別に行われるのであれば、本来保護すべき者が保護対象から外れる危険性が高い。

    また、再申請を含む濫用的な申請について申請権を制限することが検討されている。この場合、真に保護を必要としているが難民性を証明する証拠がそろっていない申請者を排除する恐れがある。難民認定申請中に送還を検討することは、ノン・ルフールマンの原則に反する。

    現在、入国管理局は、難民条約上の難民に該当しないが人道上の配慮が必要な者に対し、在留特別許可を出している。しかし、在留特別許可では難民条約上の難民と異なり、家族の呼び寄せができないなどの問題が生じている。人道的配慮に基づく在留特別許可を出すのであれば、条約難民と同等の扱いを保障するべきである。

  6. 施策案8に対する意見(その他)

    人身取引被害者について配慮を述べているが、被害を踏まえた在留資格の許可により被害者の保護を行うという点について、より具体化すべきである。被害者認知については、年間の認知数が潜在的被害者よりはるかに少ないと国際機関やNGOから繰り返し指摘されている。そのため、被害者の認定がより適切に行われるように十分な対策を講じるべきである。

    また、性的搾取だけでなく、労働搾取の観点では、技能実習制度の見直しとともに保護を考慮すべきである。

  7. おわりに

    本計画の策定にあたり、パブリックコメントによる意見募集だけでなく、外国籍を有する者の個別支援や権利保障の活動を行っている市民団体と意見交換をすることを提案する。

    国際化する社会で、外国籍者の人権に配慮した政策がより必要になっている。アムネスティ日本は、日本政府がさまざまな団体の意見を聞き、それらにより真摯に向き合い、国際人権基準に合致した政策を推進するよう求めるものである。

以上

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