ハンガリー:難民法改正で難民数万人に危機

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2015年8月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ハンガリー
トピック:難民と移民

ハンガリーの難民法の改正により、戦争や迫害から逃れてきた難民数万人が生活できなくなる可能性がある。ヨーロッパで難民問題が深刻化する中、ハンガリーは難民に対する義務を怠ってきた。

ハンガリーで8月1日に施行される難民法の改正により、バルカン半島の隣国を経由して同国に入国した難民が滞在を認められず、強制送還されるような事態になる可能性がある。さらに、ハンガリーは、難民や移民が国境を越えられないようにするため、セルビアとの国境沿い175キロにわたって、高さ4メートルのフェンスを建設中だ。

アムネスティはハンガリー議会に対して、この改正案をハンガリーの憲法裁判所による審査に付すよう要求している。

ハンガリーはもちろん、その他のいかなる国も、難民から難民申請をする権利を奪うことはできない。国には、難民申請を行った人たちを手助けし、個々の難民申請をそれぞれの状況に応じて審査する義務がある。

改正されると、セルビアやマケドニアなどハンガリー当局が「安全」とみなした国を経由してきた難民は、難民申請手続きを拒否される可能性がある。それらの国を単に通過したというだけで、その出身国に関係なく、難民申請を拒否されかねない。

ハンガリーでは、バルカン諸国を経由して入国してくる移民や難民の数が増大するにつれ、難民を拒否する言動や行動が急増してきた。NGOのハンガリー・ヘルシンキ委員会によると、7月10日時点で、今年の1月からの難民申請者の99パーセントにあたる8万6千人が、セルビアを経由してハンガリーに入国している。

アムネスティは、7月初旬に発表した報告書の中で、バルカン諸国を経由してきた移民や難民が迎えた悲惨な結末を記した。マケドニアとセルビアの難民制度は役に立たず、助けを必要としている人びとに対して国際的な保護を与えることができていない。

セルビアでは難民法の施行が不十分なせいで、多数の難民申請書類の処理が保留か未処理のままである。そのため多数の難民が、マケドニアやギリシャに送り出される可能性がある。2014年、セルビアで難民申請を行った388人のうち、難民として認定されたのはチュニジア国籍の申請者1人だった。それ以外には、シリアで武力紛争が続いているため、5人のシリア人が保護措置を受けた。

難民に対するこのような状況は、決して容認できるものではない。ヨーロッパの周辺地域は、かつてないほど多くの移民や難民の流入に直面している。しかし、難民をたらいまわしにすることは、問題の解決にはならないし、ハンガリーやセルビアのような国に対して、難民への法的義務を免除することにもならない。

アムネスティ国際ニュース
2015年7月30日