ブラジル:オリンピックを前に増える警察の殺人 怯える住民

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2016年5月 3日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ブラジル
トピック:

オリンピックまで、あと100日となったリオデジャネイロでは、4月に貧民街の住民が少なくとも11人、警察官に射殺され、多くの住民は恐怖の中で生活している。アムネスティ・インターナショナルは警告を発した。

昨年リオデジャネイロ市だけでも、少なくとも307人が警官に殺害された。これは、昨年同市で発生した殺人件数の5分の1に当たる。当局は殺害した警官を取り調べないばかりか、街頭での抗議活動などに、ますます強硬な対応をしている。

オリンピックを主催する都市は安全だという神話に抗うように、同市の警官の手による殺害は、過去5年間にじわじわと増加してきた。警察はデモに対してゴム弾、スタングレネード、ときには銃器を使用し、多数に重傷を負わせてきた。

これまで殺害はほとんど捜査されず、警官の低致死性武器使用に関する指針やその使用訓練もなく、警察は相変わらずデモ隊を「社会の敵」だと見なしている。

これからの100日間、警察とオリンピック運営機関は、いかなる治安出動も人権を侵害することのないようにしなければならない。警察は公安の維持には、慎重かつ対話の姿勢で臨み、「まず撃って、それから尋問」というやり方を捨てなければならない。

リオデジャネイロ州では近年、警官が過剰に武力を行使するケースが急増しているが、犠牲者の大半は、貧民街や社会から取り残された地域出の若い黒人だ。

ブラジルがワールドカップを主催した2014年には、同州での警察の殺害は、前年40%増の580人に達した。昨年はさらに増え645人だった。

この増加をオリンピック開催に直接結び付けることはできないが、数値は、過剰な武力行使、暴力、不処罰に明らかな傾向があることを示しており、これは公安機関の汚点となるものだ。殺害の多くが、オリンピックが開催されるリオ州で発生している。

昨年8月、アムネスティは調査報告書を公表した。その中で、ワールドカップの直後からアカリの貧民街で、警察による過剰な発砲と殺人の実態を詳しく述べた。そして、2014年の警察の殺害の大多数は、超法規的な処刑の可能性が濃厚であることがわかった。事実が公表され、世論の圧力があるにもかかわらず、警官は誰一人として裁かれていない。

加害警官の不処罰が続く限り、彼らの殺害には歯止めがかからない。

リオなどの都市で、警察の殺人行為が日常的になっていることは、きわめて憂慮すべきであるのに、国の関係機関の対応は、相変わらずお粗末だ。

オリンピックを間近に控え、デモ隊に対する警察の抑圧が、もうひとつの懸念だ。

アムネスティはワールドカップの時も、警察が低致死性武器を誤用したり、過剰で不要に使用していることに対して、厳しく非難した。しかし、それ以降も政府は、警察の武器の使用を規制する方策を取ってこなかった。

実際のところ、オリンピックにからむ公安関連の法律はテロ禁止法だけであり、この新法も、抗議活動を阻止し犯罪化するために利用されるであろう。

アムネスティ国際ニュース
2016年4月27日

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