ミャンマー(ビルマ):健康を害する硫酸工場を移転せよ

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2016年8月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:企業の社会的責任

ビルマ(ミャンマー)政府は、村落に危険なほど近距離に建設された硫酸工場を直ちに移転させなければならない。この工場は、健康や環境に深刻な影響を及ぼす懸念があるにもかかわらず、稼働が続いてきた。

カンコウン村の住民はアムネスティ・インターナショナルに「工場から発生する強い異臭に悩まされている」と語った。

この異臭は呼吸や皮膚、目などに健康被害を及ぼしてきた。関係省庁と環境NGOが2013年に行った土壌サンプル調査によれば、高レベルの硫酸塩が検出されたとのことである。限られた調査とはいえ、この結果で工場が及ぼす影響に深刻な懸念が生まれた。

政府は、直ちにこの問題に対応し、硫酸工場の稼働を停止させるべきだ。健康被害と無縁の地域に工場を移転させる必要がある。

モージョー硫酸工場は2007年に建設されたが、2013年にアウンサンスーチー氏率いる調査委員会の調査で、工場の運営会社が、地元当局の許可を得ずに建設していたことが判明した。

運営会社は、ミャンマー・エコノミック持株ユニオン(以下UMEHL社)で、軍が所有している。結局、2013年の7月に操業許可が下りた。

同国では無許可の工場操業は違法だ。しかし、当局はこの問題を捜査せず、6年間、違法に操業していた同社の所有者にも何の制裁措置も取らなかった。

先月新たに選出された地元当局が、健康評価と環境評価が判明するまでは、毎年与えていた工場の稼働資格を更新しないことを決めたと発表した。

住民によると、工場は1カ月以上稼働していなかったが、その後、資格が更新されていないにもかかわらず、稼働を再開させたという。役人の話では、中央政府が無許可だと知りながら稼働を認めているとのことだ。

住民によると、6月15日の稼働再開後、空気は汚染され、ほとんどの生徒は工場から50メートルしか離れていない学校に行くのをやめてしまった。

世界的に見て実効性ある健康対策は、住宅地域と化学工場の間に緩衝地帯を設けることだ。

政府は、運営会社のUMEHL社に対して、移転にあたり、まず影響を受ける住民との協議の中で、適切な環境評価と社会評価を行うこと、そして、移転中やその前後に優先的に取り組むべき安全対策の開示を確約させなければならない。

また、政府は工場に対して、評価による影響がどうであれ、徹底した評価を実施し、その結果を開示し、問題の解決に取り組まなければならない。関係当局も、無許可操業期間中にUMEHL社が工場法に違反したかどうかを捜査しなければならない。

背景情報

モージョー硫酸工場は、レパダウン銅社とザベーダウン・チージンダウン銅社の2社に硫酸を供給している。この2社は、UMEHL社と中国万宝鉱社の合弁会社だ。レパダウン鉱山は、今年5月、銅の本格的な生産を開始した。

『ビジネス優先?ビルマの銅山における企業の犯罪と人権侵害』(2015年)は、この2社が関与する重大な人権侵害を詳細に記した。両社は長年、強制立ち退きを行い、今後も数千人が立ち退きを受ける可能性がある。

アムネスティは今年6月、同社に対して書簡で懸念を述べ、入手した評価情報の開示を求めたが、回答はなかった。新政権は、開発で発生した環境や人権への懸念が被害住民との真摯な対話を通じて解決するまでは、レパダウン鉱山の操業を認めてはならない。

アムネスティ国際ニュース
2016年7月20日

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