- 2016年9月29日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:コロンビア
- トピック:地域紛争
コロンビア政府と左翼ゲリラ組織、コロンビア革命軍(FARC)の和平合意が9月26日、正式に調印された。合意遂行の成否は、国が、50年以上続いた内戦で犠牲になった数百万人の真相究明・補償・加害者らの処罰ができるかどうかにかかっている。
和平合意は10月2日に実施される国民投票による承認が必要となる。今日は、コロンビアにとってまさしく祝祭日となるだろう。内戦による人権侵害の被害者は、数百万人に達するが、国際法でも犯罪に相当する侵害行為の加害者の罪を問わなければならない。
両者間で昨年合意された暫定的司法モデルは、ある程度の人権侵害の真相究明、裁判、補償の実現に寄与するだろう。
ただし、モデルに定める多くの規定は犠牲者の人権に関する国際法と国際基準に達していない模様だ。例えば、戦争犯罪や人道に対する罪の罰則内容は、犯罪の重大性を反映していない。同様に、命令責任の定義では、ゲリラや治安部隊の指揮官は、部下が犯した人権侵害の責任を免れることができる可能性がある。
同国の人権侵害がはびこる時代は過去のものとなった。しかし、社会から取り残された集団、特に先住民族、アフリカ系住民、小作人らに対する人権侵害やコミュニティのリーダー、労働組合員、土地の権利活動家らへの人権侵害は、続いている。
これらの人権侵害のほとんどは戦闘の中ではなく経済活動の中で起きている。多くは10年前に解体されているはずが今も活動を続ける準軍事組織によるものだ。鉱業、インフラ、工業、農工業の土地搾取に反対する集団が対象になってきた。
政府軍とコロンビア革命軍(FARC)が平和に合意しても、それだけでは、こうした人権侵害を終わらせるにはほとんど役立たないだろう。国が組織的な人権侵害の解決に効果的な策を実施し、準軍事組織に加担する役人、政治家、実業家を裁くことが必要だ。
どのような和平合意であれ、実効性と継続性を持たせるには、長年の紛争で犠牲を強いられた個人、グループ、コミュニティなどとの密な対話がなければならない。そうでなければ和平合意は、机上の空論で終わる。
数字で見る内戦の人権侵害
- 790万人:紛争の犠牲者、そのほぼ半数が女性(被害者へのケアと統合補償のための政府機関UARIV調べ)
- 690万人:家を追われた住民(UARIV)
- 267,000人:紛争に絡む殺害(ほとんどが一般市民)(UARIV)
- 4,392人:法務省が把握している超法規的処刑の犠牲者(国連人権高等弁務官事務所調べ)
- 46,386人:強制失踪者(UARIV)
- 29,622人:誘拐(UARIV)
- 11,062人:対人地雷や不発弾の犠牲者(UARIV)
- 8,022人:準軍事組織やゲリラに使われた子ども兵士(UARIV)
- 63人:2015年に先住民族、アフリカ系住民、小作人のリーダーを含む人権活動家で昨年殺害された人数 2016年は9月までで52人 (We Are Defenders Programme調べ)
- 20人:2015年に殺害された労働組合員(労働者の権利のための非政府組織 ENS調べ)
アムネスティ国際ニュース
2016年9月26日
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