- 2017年9月20日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:先住民族/少数民族
8月25日にロヒンギャの武装集団が警察施設などを襲撃して以来、治安部隊の大規模な掃討作戦で、37万以上のロヒンギャの人たちが、自宅を追われ、隣国のバングラデシュに逃れた。
アムネスティが入手した証言や情報などから、ラカイン州での治安部隊の作戦は、周到に準備されたロヒンギャの民族浄化作戦であることが明らかになってきた。
アムネスティは、衛星画像、現場の写真と映像、火災探知データなどを入手し、またビルマとバングラデシュの国境付近で目撃者数10人に聞き取りをした。
それらの情報を分析した結果、治安部隊がほぼ3週間にわたり、ラカイン州北部一帯のロヒンギャの村々を狙った大規模な焦土作戦を展開していたことがわかった。治安部隊と自警団のような集団がロヒンギャの村々に火を放ち、逃げまどう人びとを手当たりしだいに撃ち殺していった。間違いなく民族浄化である。
大規模な焼き討ち
情報分析によると、8月25日以降、州北部一帯の居住地域で、375メートル以上にもわたる大規模な火災が、少なくとも80地区で確認された。過去4年の同時期のデータも調べたが、この規模の火災は一切認められなかった。
それぞれの地区が焼け野原と化し、焼き出された人たちは、数万人に及ぶと見られる。そして、火災は、ロヒンギャが多く住む地域に集中していた。
現地に入ることが認められないため、それぞれの地区の火災の規模は特定できないが、アムネスティは、火災を示す衛星画像を住民の証言と焼き討ちされた家屋の画像を突き合わせた。
雨期であるため衛星画像からは放火を正確に把握できないため、放火の実態を特定する作業は困難を極めたが、実際の件数も規模も、分析結果よりも多いものと思われる。
ただし、バングラデシュとの国境に近いマウンドー地区で複数の民族が住むインディン村では、ロヒンギャの家屋が焼き尽くされる一方、隣接する他の民族の地域は、焼き討ちを免れていたことは、わかっている。
インディン村でロヒンギャ集落だけが焼き討ちに遭ったことを示す衛星写真 ©2017 Planet Labs, Inc.
周到に計画された襲撃
襲撃を受けたロヒンギャ住民が必死の思いで逃げる中、治安部隊は、ガソリンを撒いたり、ロケット砲を使って家屋を焼き討ちにした。
9月8日、マウンドー地区のヤエ・ツイン・キュン村を追われた男性(48才)は、襲撃を目のあたりにした。「彼らは、家々を次々に焼き払った。900軒あった家が、今は80軒しか残っていない。もう誰もいないので、遺体の埋葬すらできない」と嘆いた。
また、衛星がとらえた火災のデータからは、8月26日にマウンドー地区のミョ・トゥ・ギ村の一帯も、焼き尽くされたことがわかった。
複数の地区では、地元の役人が前もって村民に焼き討ちがあることを伝えていたという。何とも衝撃的である。一連の襲撃と焼き討ちが、周到に計画されたものであることがわかる。
マウンドー地区ケイン・チャウン村の男性(47才)の話も悲惨だった。 「50人ほどの兵士が2方向から村にやってきて、手当たり次第に銃撃を始めた。みんな、パニックになって逃げだし、必死に川を泳いで渡った。渡れなかった人の中で男たちは、至近距離から撃たれたり、刺し殺された」
ラテダウン地区パン・キアン村の村民は、9月4日早朝、部隊に同行してきた地元の役人から、「午前10時までに村を出たほうがいい。全部焼かれてしまうぞ」と警告されたという。 警告通り、家族が身のまわりの品々を荷造しているとき、火の玉のようなものが家を直撃した。恐怖の中、着の身着のままで逃げたという。
ビルマ当局は、治安部隊が焼き討ちに加担していることを頑なに否定している。それだけではない。「ロヒンギャの人たちが、自分たちの家に火をつけている」などと、信じ難い主張を展開した。
数十万人が国を追われる
バングラデシュのコックスバザールに逃れたロヒンギャの人びと © Amnesty International
昨年後半から今年初めにかけて、軍の大規模な軍事作戦の影響で、およそ87,000人が国を追われてバングラデシュに逃げ出した。
国連の推定によると、今回の焦土化作戦により、37万人以上がバングラデシュに逃れた。さらに、今後も数万人が家を失い、国内避難民になる可能性があるという。
ロヒンギャをめぐる問題は、数日以内に国連人権理事会で議論されることになる。これは、国際社会が、今も進行中のこの問題の深刻さをしっかり把握し、その重大さを反映した強力な打開策を採択する機会となる。理事会はまた、国際調査団の任務を拡大しなければならない。そして、ビルマ当局は、全面的にその受け入れに協力すべきである。
2017年9月15日
アムネスティ国際ニュース
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