- 2017年10月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:EU
- トピック:難民と移民
欧州諸国は、アフガニスタンの難民およそ1万人を、拉致や拷問、殺害などが日常的な同国に送り返してきた。
紛争が続くアフガニスタンでは、民間人の死傷者が過去最高レベルに達する。そのような危険な国への難民送還を、ノルウェー、オランダ、スウェーデン、ドイツなどが加速化させている。身に危険が迫る国への送還を認めない国際法にも違反する。
送還される人たちには、保護者がいない子どもや欧州に着いたときは子どもだった若者もいる。
急増する強制送還数と紛争死傷者数
国連の調査によるとアフガニスタン国内の民間人死傷者数は過去最高に達している。同時に、欧州から送還されるアフガン難民の数も急増している。
EU(欧州連合)の統計によると、2015年から翌年末までのEU圏からの送還者数は、3,290人から9,460人へとほぼ3倍に膨れ上がった。この時期は、難民認定率が2015年9月は68パーセントだったが、翌年12月には33パーセントに激減した。
傷害、殺人、迫害と隣り合わせの日常生活
アムネスティは、送還された数家族に聞き取りをした。それぞれの家族が口々に帰国後の苦難の日々を語った。
セデカさん(女性、仮名)は母国にいた時、夫を拉致され、身代金で事なきを得たことがあった。数カ月にわたる困難な旅の末にノルウェーにたどり着いた時には、希望があった。しかし、無情にも難民申請は認められず、収容所に入るか、1万700ユーロ(約140万円)を手に自主的に帰国するか、いずれかの選択を迫られ、帰国の道を選んだ。母国に戻って数カ月後、夫は行方不明となり、殺害された。
ファルハディー家の人たちも昨年10月、ノルウェーから強制的に送還され、その翌月、カブールのモスク爆破事件に巻き込まれた。この事件では27人以上が死亡したが、付近にいた一家も被害に遭った。爆風で母親が抱いていた子ども(当時2才)が地面に投げ出されて負傷し、耳からも出血したのだ。幼子は、耳の痛みに今も苦しめられている。
ファリドさん(男性、仮名)は、逃れた先のノルウェーでイスラム教からキリスト教に改宗した。しかし、今年5月、カブールに送還されてからは、改宗による迫害を受ける生活を強いられている。タリバンなどの武装グループが、イスラム教からの改宗者を忌み嫌い、攻撃の対象としているからだ。
「毒杯」を飲まされたアフガニスタン
EUが昨年10月、アフガニスタンとの間で、合意書「移住問題での協調的前進」に調印したとき、欧州各国の政府は同国の悪化する治安状況を認識していた。
アムネスティが入手した機密文書によると、EUは、アフガニスタンにおけるテロ攻撃と民間人の死傷者は記録的であり、国の治安と危険度は悪化の一途であることを認めている。しかし同時に、近い将来、8万人以上を送還する必要が出てくる可能性があるとしていた。
「必要だ」という表現は、アフガニスタンに対する圧力として使われている。それを裏付ける証言がある。アフガニスタンのエクリル・ハキミ財務大臣は、「もし、わが国が欧州の難民問題に協力しなければ、欧州からの援助額に影響することになる」と議会で語っている。また、同国の情報筋がアムネスティに対し、「合意は、援助金の見返りに飲まされた『毒杯』だ」と説明している。
アムネスティ国際ニュース
2017年10月5日
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