- 2022年5月11日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:EU
- トピック:
欧州連合(EU)は、ビッグテック(巨大テクノロジー企業)の規制を強化するデジタルサービス法案に合意した。
同法は、フェイスブック、インスタグラム(メタ社)やユーチューブ(グーグル社)をはじめとするビッグテックのプラットフォームに対し、憎悪の支持や偽情報の拡散など、サービスが内包するリスクの評価・管理を求める。
また、ビッグテックには年1度の独立監査の義務に加え、規制当局や市民団体などの第三者が、プラットフォームのデータとアルゴリズムという「ブラックボックス」の分析ツールへのアクセスを認めることが求められる。その結果、透明性が高まる。
デジタルサービス法案の合意は、インターネット規制における一つの大きな分岐点となる。同法の施行でビッグテックの野放しの広告手法にブレーキがかかり、人権をより尊重するネット社会づくりが可能になる。
あまりにも長い間、利用者の重大な個人情報がビッグテックの広告戦略に利用されてきた。その結果、プライバシーが侵害され、虚偽情報が拡散し、人種差別が煽られ、個人の信念や意見が悪影響を受けた。今回の規制強化で、EU圏の市民は政治や宗教、性などに関する個人情報に基づく押し付けがましい広告から解放されるだろう。
プライバシーや個人情報保護の権利や差別されない権利を全面的に保護するには、すべての情報収集型広告の段階的禁止が必要だが、今回はそこまで踏み込まなかった。
この法律を張子の虎にしないためにも、法の厳格な適用が欠かせない。また、EU圏以外の国でも、同様の強力な法律の導入が強く求められている。
デジタルサービス法は、インターネット時代の尊厳や自主性、プライバシーといった人権の要を保護する上で大きな役割を果たすだろう。ビッグテックの独占的で利益重視の情報収集型のビジネスモデルを全面的に見直し、人権への脅威が少ないビジネスモデルに変えていく必要がある。デジタルサービス法の施行は、その第一歩だ。
同法は、大手IT企業に対しアルゴリズム、広告モデル、データ収集に伴うリスクについて検討を求め、問題が認められたものについては対応を促す。
また同法により、ユーザーは今後、情報をどのように表示するか選択することができる。例えば、最大効率を目的とするアルゴリズムによるデータ表示ではなく、時系列によるデータ表示などだ。
背景情報
欧州委員会は2020年12月15日、EU域内のデジタルサービスを定める各種規則を見直したデジタルサービス法案を提出した。アムネスティは、インターネット上の人権保護を強化する同法案を支持し、その成立を求めてきた。
数カ月にわたる市民社会の運動を経て、欧州議会、EU議長国のフランス、欧州委員会の各代表者が、今回、デジタルサービス法案に合意した。巨大IT企業が、かつてないほどのロビー活動を展開したが、市民団体が求める主要項目はすべて法案に網羅された。法律の最終的な文書は、今後公表される。
今年初め、アムネスティとグローバル・ウィットネスが実施した調査によれば、フランスやドイツの小規模ビジネスリーダーは、フェイスブックやグーグルの独占的な追跡型広告に代わるシステムを求めている。
アムネスティ国際ニュース
2022年4月23日
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