ミャンマー(ビルマ):アムネスティ:アウンサンスーチー氏の「良心の大使賞」をはく奪

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2018年11月14日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

「良心の大使賞」を受賞するアウンサンスーチー氏(右) © Mark Stedman/Photocall Ireland
「良心の大使賞」を受賞するアウンサンスーチー氏(右) © Mark Stedman/Photocall Ireland

アムネスティ・インターナショナルは11月12日、ミャンマー政権の事実上の指導者、アウンサンスーチー氏に対し、民主化と人権擁護に対する功績を讃えて授与した「良心の大使賞」を取り下げた。

アウンサンスーチー氏には11月11日、アムネスティ事務総長クミ・ナイドゥの名で書簡を送り、その旨を直接伝えた。

事務総長は書簡の中で、就任して2年半、国軍による虐殺や表現の自由の制限に対して同氏が無関心を装い、ミャンマーの人権・正義・平等の擁護にその政治的、道徳的権威を行使しなかったことに遺憾の意を表した。 「アムネスティが、『良心の大使』として貴殿に期待したことは、いかなる不正義に対しても道徳的権威をふるって声を上げ続けることでした。ところが昨今の貴殿は、希望と勇気と人権を擁護する象徴的存在では、もはやなくなりました。これは、痛恨の極みです。よって、アムネスティは、貴殿を良心の大使賞に足る人物と認めることができなくなったと判断し、誠に遺憾ながら、授与した賞を撤回せていただく次第です」

終わりなき人権侵害

2016年4月に文民政権の事実上の最高指導者となって以来、アウンサンスーチー氏は、不作為によりさまざまな人権侵害に加担し、その拡大を助長してきた。

昨年8月下旬から始まった国軍主導のロヒンギャ掃討作戦では、治安部隊が、殺戮、強かん、拷問、家屋の焼き討ちなど残虐の限りを尽くした。数千人が死亡し、72万人以上が隣国バングラデシュに逃れた。

アムネスティは、アウンサンスーチー氏が、この残虐行為に向き合わないことを繰り返し非難した。 国連も、大量虐殺の捜査と軍幹部の告発を求めた。

文民政権は軍を統制する力を持たないとはえ、アウンサンスーチー氏率いる政府は、人権侵害の申し立てをはねつけ、国際調査団の受け入れも拒否するなど、軍を責任追及からかばってきた。それどころか、ロヒンギャへの敵意を積極的に煽り、彼らをテロリスト呼ばわりし、放火は自作自演で、強かんはでっちあげだと決めつけた。

そんなこともあり、政府系メディアは、ロヒンギャを暗にほのめかしながら「忌まわしい人間のクズやトゲは、排除せよ」などという記事を書きたて、ロヒンギャへの憎悪を煽った。

「アウンサンスーチー氏がロヒンギャの人びとのために何もしてこなかったことが、同氏の『良心の大使賞』を取り下げる理由の一つだ。政府が、重大で広範囲な残虐行為があったことを認めない限り、ロヒンギャの人びとの保護を国に期待することはできず、ロヒンギャの人権状況が改善される目処が立たない」と事務総長は言う。

さらに問題がある。政権が、掃討作戦で国内で避難生活を送る10万人以上の人びとに人道支援を認めないため、彼らの状況は悪化するばかりだ。

言論の自由を弾圧

国軍が強大な権力を維持しているとはいえ、文民政権は、人権状況、とりわけ表現の自由や集会の自由など、改革に取り組める分野もある。しかしこの2年、政権は、人権擁護活動家や国の政策に批判的な記者を投獄したり、嫌がらせをしたりしてきた。

活動家や記者の弾圧で使われる法律は、民主化運動を推進していたアウンサンスーチー氏自身が当時、逮捕された時にも適用されたものだが、その種の法律を廃止することもなかった。それどころか、アウンサンスーチー氏は、軍の虐殺を報じたロイター記者を告発する際、同様の法律の適用を積極的に支持した。

アムネスティは2009年、長年、非暴力民主化運動と人権擁護に取り組んできたアウンサンスーチー氏を讃え、団体の最高の賞である「良心の大使賞」を授与した。その当時、同氏は自宅軟禁中だった。11月12日は、その軟禁が解かれて丸8年にあたる。

2013年になってようやく賞を受け取れたアウンサンスーチー氏は、アムネスティに対して「我が国を常に注視し、希望が歴史を彩る国になるよう支援をしてほしい」と要請していた。

アムネスティは、この要請を真摯に受け止め、取り組んできた。今後も同国の人権侵害から目をそらすことはない。同氏がどうであれ、アムネスティは、ミャンマーの正義と人権のために闘い続ける。

アムネスティ国際ニュース
2018年11月12日

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