- 2026年2月 4日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー
- トピック:

- ミャンマー軍は航空燃料の供給を幽霊船に頼っており、イランとの関連を示す証拠がある
- 2025年は軍の空爆による死者が最も多い年だった
- 2025年は軍のクーデター以来最も大量の航空燃料が輸入された
ミャンマー軍は空爆を繰り返し民間人に多数の犠牲を出しているが、これに使用する航空燃料が、軍が権力を掌握してから5年が経過した今もなお、不透明なサプライチェーンを通じて国内に流入し続けていることが、アムネスティの新たな調査で明らかになった。
ミャンマーの航空燃料供給に関与する企業や個人には制裁措置が科されているが、アムネスティの貿易・海運・衛星・港湾当局データ分析によれば、ミャンマー軍はロシア、イラン、北朝鮮などの国々が採用していると報告されている制裁回避手法を模倣している。具体的には、位置追跡装置である船舶自動識別装置(AIS)を停止して検知を回避する「幽霊船」で、ジェット燃料を輸入している。この手口により、供給元の特定は事実上不可能となる。しかしアムネスティは、2024年7月以降、ミャンマー向け航空燃料の輸送を複数回確認している。その中には、イランからの燃料輸出歴があり米国が制裁対象としている船舶2隻による輸送も含まれる。燃料やその他の商材の世界的な流通を追跡する情報プラットフォーム「ケプラー」によれば、これら2隻の船舶による輸送はすべてイラン発と推定されている。またアムネスティが検証した衛星画像も、イランとの関連性を示唆している。
特に注目すべき点は、ミャンマー港湾局のデータによれば、2025年に少なくとも109,604トンの航空燃料がミャンマーに輸入されたことであり、これは前年比69%増、クーデター以降で年間最多の量である。同国への燃料流入阻止のための制裁が科されているにもかかわらずだ。
クーデターから5年が経過した現在、アムネスティの分析によれば、ミャンマー軍事政権は制裁を回避し、自国民への空爆に使用するジェット燃料を輸入する新たな方法を編み出し続けている。2025年は、2021年の国軍の権力掌握以降、空爆による死者が最多を記録した年となった。制裁措置にもかかわらず航空燃料の輸送は増加し、民間人に対する空爆の急増も明らかになっている。国際社会は供給の無法化を助長している企業や政府を阻止するため、さらなる行動を取る必要がある。無為無策が続けば、日ごとに犠牲者が増えるばかりだ。
死をもたらす幽霊船
アムネスティの調査により、2024年半ばから2025年末にかけて、4隻の船舶により航空燃料が少なくとも9回ミャンマーへ輸送されたことが確認された。同時に、この期間中に航空燃料のミャンマーへの輸送方法に重大な変化が生じていることも明らかになった。
顕著な動きの一つは、「幽霊船」を用いた燃料の輸入だ。これらの船舶は、積載時や荷揚げ時にAISを停止させるほか、場合によっては船舶の実際の位置を隠蔽するため、意図的に虚偽または改ざんされた位置情報を送信する(いわゆる「スプーフィング」)。
船名や船籍、所有者を繰り返し変更することもあり、さらに港湾やターミナルではなく、公海での船対船(STS)移送によって燃料を積み込むことも多い。
こうした手法により、貨物の追跡や供給元の特定が極めて困難となっている。しかしアムネスティは、2024年半ば以降に以下の4隻の船舶による航空燃料のミャンマーへの輸入を確認した。
- HUITONG 78 (現在名BARAAWE 1) :中国船籍。2023年から2024年にかけ、少なくとも9回貨物を搬入。さらに2024年7月にも1回搬入した。7月12日のヤンゴンにある石油ターミナルへの搬入時、同船はAISを停止していたようだ。AISデータの分析と衛星画像によれば、同船は6月13日から26日にかけてアラブ首長国連邦(UAE)のフジャイラ沖合停泊地(FOAA・世界有数の海運拠点)で確認されている。FOAAは燃料補給、石油の船対船移送その他の海運サービス用に指定された沖合区域であることから、貨物の積載はここで行われた可能性が高い。
- YONG SHENG 56 (現在名LS MERCURY):中国船籍。2024年7月30日から31日にかけて1回の輸送を行った。AISデータによれば6月15日から29日にかけ、HUITONG 78と同様、UAE沖のFOAAに停泊し、その後ミャンマーへ向かい荷下ろしを行った。
- REEF (旧名 BALTIC HORIZON)):ギニア船籍。2024年10月、2025年7月、2025年10月に貨物を搬入したギニア船籍の船舶。AISデータでは、積載が推定される時期にクウェート近海およびUAE近海にいたことになっているが、これはアムネスティのエビデンスラボが分析した衛星画像などの検証済み情報と矛盾する。分析によれば、2025年9月に同船がイラン有数の港湾都市ホルモズガン州バンダレ・アッバースに高確率で所在していた。しかし同船のAISデータはバンダレ・アッバースから750km以上離れた海域で不自然で幾何学的な「箱型」の動きを示していた。通常の航行パターンでは見られない動きで、AISデータの改ざんを示唆している。
- NOBLE (旧名ASTRA):ギニア船籍。2025年1月から6月にかけて4回の輸送を行った。AISデータと衛星画像は、同船はUAE沖のFOAAで待機した後、ミャンマーへ向かい、そこでAISを停止したことを示している。しかし少なくとも1回の輸送(2025年6月の輸送)では、FOAAを出港後、ミャンマー到着前にイランのホルモズガン州バンダレ・アッバースにいたことを、衛星画像が捉えている。
アムネスティは航空燃料の供給元や産出地を確認できなかったものの、複数の手がかりがイランとの関連を示唆している。
米国財務省外国資産管理局によれば、NOBLE号とREEF号はいずれもイランから制裁対象の燃料を輸送した記録がある。また、過去13カ月間にどちらもイランのバンダレ・アッバースの港で確認されている。ケプラーも、AISデータ、衛星画像、税関情報その他の情報源に基づき、NOBLE号とREEF号の全輸送貨物がイラン発であると判断した。
これらの船舶はAISの空白期間、異常な航跡やスプーフィング、不透明な船対船移送など、「幽霊船」タンカーに特徴的な行動パターンを示している。そして、こうした行動パターンは、イランから制裁対象燃料を輸送するタンカーが一般的に用いる手法と一致する。
背景情報
2021年2月のミャンマーでの軍事クーデター以降、アムネスティは、民間人への違法な空爆に使われる航空燃料の供給を支えるサプライチェーンが存在し続け、変化していることを記録してきた。アムネスティは、さらなる民間人の被害を防ぐため、航空燃料の供給禁止と関与する全企業の撤退を求めている。
アムネスティが2022年11月にジャスティス・フォー・ミャンマー(正義と説明責任を求めるミャンマーの活動グループ)と共同で発表した報告書では、シンガポールとタイに拠点を置く多国籍企業が、ジェットA1航空燃料をミャンマーに供給するサプライチェーンに関与していたことを明らかにした。
2023年にジェット燃料サプライチェーンの一部を対象とした制裁が導入されたあと、アムネスティは供給方法に大きな変化を認めた。直接販売は減少し、代わりに燃料は複数回にわたり購入・転売され、その出所が隠蔽されるようになった。2023年から2024年初頭にかけて少なくとも9回の貨物がミャンマーに到着しており、その多くはベトナムの貯蔵施設を経由していた。これは意図的な制裁回避策である。
アムネスティ国際ニュース
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