ミャンマー:軍政が強制する選挙を前に弾圧強化

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2025年12月25日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー
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今週末に実施されるミャンマー初の軍事政権が強制する総選挙を前に、戦争犯罪に相当する可能性のある違法な攻撃が発生し、恣意的拘束が急増するとともに表現の自由への弾圧が強化されている。

軍部が7月に可決した「複数政党民主主義総選挙を妨害、混乱および破壊から保護する法律」は、選挙や選挙関係者を対象とした発言や暴力扇動を犯罪化している。同法に基づく懲役刑は3年から最高で終身刑、さらには死刑に至る。

来る軍事政権主導の選挙は、2015年と2020年のミャンマー民主的な総選挙とは著しく対照的だ。2015年は平和と人権尊重を約束する希望の時代だったが、現在は戦争犯罪、逮捕、監視が日常となった絶望の時代だ。

ミャンマー国民の多くがこの選挙に反対しているのは、5年間にわたり違法に民間人を殺害してきた者たちが、責任追及や正義の裁きから逃れ、権力の座に固着したままになることを恐れているからだ。

軍事政権による選挙法の武器化

軍事政権は、選挙法が労働者、設備、選挙プロセスそのものを保護するために設計されていると主張する。しかし12月28日の第1回投票を控えたこの数週間、軍事政権は同法を利用して、あらゆる批判、ソーシャルメディア上の反応や投稿に至るまで標的とする弾圧を強化している。

軍事政権系メディアによれば、同法施行後の数カ月間で少なくとも229人が「選挙プロセス妨害未遂」の容疑で起訴された。拘束された人たちの中には、芸術家や反選挙ステッカーを貼った人たちもいる。

9月にはシャン州の男性が選挙批判で7年の重労働刑を宣告された。12月初旬にはフェイスブック・メッセンジャーで投票を非難した男性がヤンゴン近郊で逮捕され、別の男性は選挙看板を破損したとして逮捕された。国内避難民キャンプでは投票しなければ支援を停止すると圧力をかけられたたとの報告もある。

国連人権高等弁務官事務所によれば、全国330の郡区のうち、戒厳令下にある56では投票が行われない見込みだ。2015年と2020年の前回選挙で勝利した国民民主連盟(NLD)は解散させられ、アウンサンスーチーさん、ウィンミンさんら党幹部は依然拘束されている。

2025年、ミャンマーにおける空爆は2021年のクーデター以降で過去最多の水準に達する見込みだ。軍事政権が投票実施地として支配権確立を図る武力衝突地域では、選挙日程発表以降攻撃も増加している。国連は今月、こうした攻撃は「選挙の実施が発表された主要な係争地域を奪還する意図があるようだ」と指摘した。

こうした攻撃の一例として、アムネスティはミャンマー中部での祭りで発生した有人パラグライダー空爆を記録した。この祭りには、選挙に反対するデモを行う人びとも集まっていた。モーター付きパラグライダーが群衆の真ん中に迫撃砲弾を投下し、子どもを含む民間人が死亡した。12月10日には、ラカイン州ミャウー郡区で民族抵抗組織アラカン軍が管理する病院を軍が爆撃した。クーデター以降、病院・学校・その他の民間インフラへのこうした攻撃が、全土で続いている。

アムネスティは国際社会に対し、この選挙プロセスに特徴的な人権侵害に焦点を当て、ミャンマーにおける責任追及を優先するよう求める。国際社会は、同国へのジェット燃料供給停止と、加担が疑われる者を裁きにかけることに、再び注力すべきである。また、国際刑事裁判所(ICC)に対しては、今回の選挙後に文民指導者として台頭しようとしているミンアウンフライン国軍総司令官をはじめ、ICCの捜査対象となっている他の軍事政権関係者の逮捕状発行を進めるよう求める。

背景情報

クーデターで権力を掌握してからほぼ5年が経過したミャンマー軍事政権(現・国家安全保障平和委員会)は、この総選挙を通じて支配の定着を図ろうとしている。

選挙は12月28日の第1回投票に続き、2026年1月から追加投票が実施されることになっている。投票プロセスが段階的になっているのは、クーデターそのものに起因する。2021年2月1日に軍が完全な権力掌握を試みた際、全国的な抵抗に遭い、国内の広範な地域が武装勢力や民主化支持勢力の支配下に残された。クーデター以降、軍は少なくとも7,000人の民間人を殺害している。実際の犠牲者数はさらに多いとみられる。

ミャンマー軍と武装抵抗勢力間の敵対行為の激化により、多くのロヒンギャやその他の弱い立場にある人びとが巻き込まれ、彼らの権利はさらに踏みにじられている。

アムネスティ国際ニュース
2025年12月22日

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