日本:北朝鮮のUPR審査に関する要請書

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2019年4月 5日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:

2019年4月5日

外務大臣 河野 太郎 様

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 中川 英明

北朝鮮のUPR審査に関する要請書

2019年5月に開催予定の国連人権理事会作業部会において、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が普遍的定期審査(UPR)の対象となります。この機会に、北朝鮮の人権状況に関してアムネスティ・インターナショナルが懸念する点をいくつか共有させていただきます。

ご承知のとおり、UPRはすべての国連加盟国の人権状況に関する実績を4年に一度見直すことにより、当該国政府と協力して人権問題を克服し、人権の擁護と推進に関する義務と責任の達成状況を改善する方策を見出すための特別な機会です。今年の審査では、北朝鮮における実際の人権状況を明らかにするよう求めるとともに、北朝鮮の人権状況を改善するために必要な措置について開かれた議論が行われるよう、日本政府が審査に積極的に参加してくださるようアムネスティ・インターナショナルは要請いたします。

同封のアムネスティ・インターナショナルが作成した北朝鮮UPRに関する提言書にお目通しください。その中でも、北朝鮮UPRにおいて議論と対処が行われる必要があるとアムネスティ・インターナショナルが考えている主要な点について以下にご説明いたします。

人権保障のための国内体制

北朝鮮における人権保障の制度や仕組みについては、入手可能な情報が依然として非常に限定的です。人権侵害に関する一般の人びとからの苦情に対応する国内の制度に関する情報は、その独立性や公平性、救済の機会、手続き、有効性などに関するものを含め、ほとんどありません。

北朝鮮人権研究協会 (Association for the Study of Human Rights in the DPRK) と称し、「人権保障と促進に関する全体的な問題の検討」、「人権保障措置に関する政府機関への提言」および「人権保障と促進のための国際的なシステムに関する研究活動」等を付託された国内組織の活動については、2014年9月に報告書が発表されて以来、ほとんど情報がありません。

また、北朝鮮は、同国が締約国である人権諸条約の国内における実施を担当していると考えられていた国内の複数の調整委員会を統合して、国際人権条約履行のための全国委員会 (National Committee for the Implementation of International Human Rights Treaties) を、2015年4月に設立しました。 しかし、この委員会では多くの政府機関のメンバーがさまざまな部門を担当しており、全体的な調整はほとんど行われていませんでした。*1

アムネスティ・インターナショナルは、北朝鮮に対して次のような勧告を行ってくださるよう日本政府に要請いたします。

  • 北朝鮮の人権状況に関する特別報告者をはじめ、同国への訪問を要求するすべての国連人権委員会の特別手続に対して、即時かつ無制限のアクセスを許可すること。
  • 北朝鮮が締約国となっている条約の履行を確保するために、国連の人権条約機関との連携を継続し、国内における調整も合わせて強化すること。
    または、
  • パリ原則に従って国内人権機関の設置を検討すること。

子どもの権利および教育を受ける権利

北朝鮮は、初等・中等教育を無料で提供していると主張していますが、アムネスティ・インターナショナルが行った聞き取りでは、子供が教育を受けるには経済的な障壁があることが明らかになっています。情報へのアクセスが制限されているため、同国の子どもたちは人権の価値についての真の教育を受けていません 。*2 毎年のカリキュラムの一環として、子どもたちはさまざまな農場労働を行うことを求められています。現在、16~17歳の子どもたちは、国内の「子どもの権利の保護に関する法令 (Act for the Protection of the Rights of the Child)」の対象から除外されています。*3

アムネスティ・インターナショナルは、北朝鮮に対し次のような勧告を行ってくださるよう日本政府に要請いたします。

  • 18歳未満のすべての子どもを対象とするよう「子どもの権利の保護に関する法令」を改正すること。
  • 「子どもの権利の保護に関する法令」第22条に規定されているとおり、すべての子どもに対して無償の初等・中等義務教育を保証すること。

今年5月のUPRの機会が最大限に生かされ、北朝鮮政府との間で有意義な議論が行われるよう、そしてまた、その結果として北朝鮮における人権の尊重と保護がすすみ、同国の権利保持者が人権を享受できるようになるために、状況が少しでも改善に向かうようにするための具体的かつ実質的な変革がもたらされるように日本政府から積極的に働きかけてくださるよう、謹んで要請いたします。

以上

複写: 外務省人権人道課

*1)UN,"Committee on the Rights of the Child considers the report of the Democratic People's Republic of Korea", 20 September 2017, www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=22120&LangID=E

*2)Committee on the Rights of the Child General Comment No. 1: The aims of education (art. 29(1)), UN Doc. CRC/GC/2001/1, 17 April 2001, paras 4, 19.

*3)UN, "Committee on the Rights of the Child considers the report of the Democratic People's Republic of Korea",20 September 2017, www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=22120&LangID=E