ミャンマー(ビルマ):今も続く国軍の残虐行動

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2019年10月31日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:先住民族/少数民族

アムネスティの調査で、ミャンマー(ビルマ)北部の少数民族は、今なお国軍の残虐行為の対象となっていると同時に、民族系武装組織による襲撃の矢面に立たされていることが明らかになった。

国軍は、シャン州の少数民族の人びとに相変わらず苛烈な攻撃を加え、戦争犯罪も犯しているが、その責任は一切問われていない。残虐行為には、兵士だけではなく、指揮官も加担している。

アムネスティは3月と8月の2回、シャン州のカチン族、リス族、タアン族の住民に対する国軍と武装組織の戦争犯罪などを調査した。

アムネスティが接触した住民らは、繰り返し国軍の特定の師団(第99軽歩兵師団)の関与を指摘した。この師団は、一昨年8月から始まったラカイン州ロヒンギャに対する凄惨な残虐行為にも関与していた。

この部隊が配備されると、必ず同様の人権侵害が起こっている。国軍、とりわけ軍高官の責任追及に向け、国際社会が行動することが急務である。

国軍が昨年12月、武装組織に停戦を宣言した後も人権侵害は続いた。最近の北部での国軍と複数の武装組織が入り乱れての紛争で、さらなる人権侵害が明らかになってきた。紛争が激化する背景として、政府は薬物売買を、武装組織は軍の攻撃を挙げている。

一方、膠着状態の和平交渉は、すべての当事者が来年の総選挙準備に手を取られ、進展は望み薄だ。

繰り返される軍の人権侵害

昨年、国軍による重大な人権侵害が、特にシャン州で後を絶たなかった。12月の停戦宣言後も続いている。

国軍の兵士が住民を拘束し、しばしば拷問などの暴行を加える。ほとんどの場合、カチン族、シャン族、タアン族などの住民は、民族性を理由に特定の武装組織との関係を疑われ、制裁の対象となった。

今年3月、シャン州クッカイ地区で2人のカチン系住民が、第99軽歩兵師団兵に拘束され、暴行された。2人が漁からもどってきたとき、すでに国軍とカチン独立軍間の戦闘が始まっていた。国軍兵士に、「お前は独立軍の兵士か」と問われ、「違う」というと暴行を受け、一人の男性は、口の中に手りゅう弾を押し込まれたと話した。

住民の中には、国軍の基地に連行され、3カ月間も拘束され、連絡が取れない人もいた。18才と14才の2人の少年は、基地で塹壕を掘るなどの労働を強要された。

民族系武装組織による人権侵害

アムネスティの調査で、カチン独立軍を含む4つの武装組織が、住民に人権侵害を加えていることがわかった。

住民は、敵対する武装組織と関係があるとして狙われ、拘束や拉致、食料や金品の略奪などを受けた。

人権侵害には、強制労働もあった。拘束された住民は、戦闘員の所持品を運ばされたり、戦闘中に別の村への案内を命じられたりした。

このように武装組織も住民の拉致、虐待、強奪、強制労働などの人権侵害を犯している。

代償を払うのは住民

昨年、戦闘の余波で自宅を追われ人たちは数千人に達した。多くが、逃げてはまた追われ、一カ所に落ち着くことができなかった。その結果、人道支援の手が届きにくくなった。さらに、政府や国軍による人道支援の規制で、支援がますます遠のいた。

戦火から逃がれられたとしても、身の安全は保障されない。地雷や簡易爆弾による犠牲者が、昨年から増加しているからだ。

アムネスティは、紛争に加担する国軍とすべての武装組織に対して、国際人道法、国際人権法の尊重、民間人の保護、人道支援組織の避難民へのアクセスの保障などを求めている。

戦争犯罪の加害者は、国軍トップのミンアウンフライン最高司令官に至るまで、司法の裁きを受けるべきである。武装組織の兵士や幹部もまた、捜査を受け責任を問われるべきだ。

国軍も各武装組織も、住民を標的にした攻撃や暴力、その他の人権侵害を停止すべきだ。また、住民が多く住む地域での戦闘も避けるべきである。

ミャンマーの紛争地での終わりが見えない人権侵害の中で、国連安全保障理事会は、長らく傍観してきた。

安保理は、今こそ意を決して、人権侵害に加担したすべての当事者を国際刑事裁判所に付託すべきである。

アムネスティ国際ニュース
2019年10月24日

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