- 2020年5月12日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ジンバブエ
- トピック:
(C) Amnesty International
新型コロナウィルスのパンデミック(世界的大流行)の中、多くの妊産婦が厳しい状況に置かれている。
出産を間近に控えたルテンドさん(仮名)は、一番近い医療施設でも35キロも離れているところに住んでいるため、陣痛の時に救急車は間に合わないと万一を考えて早めに入院した。5年前、妊娠合併症で妹を失っており、母親からの勧めだった。その後、コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)が始まった3月30日のちょうど翌日、元気な女児を出産した。体調が優れないため、少なくとも2、3日は入院しておきたかったが、出産の翌日には、退院させられた。
2週間後、乳児が病気になった時、ルテンドさんは、薬を買うために40キロも離れたショッピングセンターへ出かけた。移動を厳しく取り締まる兵士から暴行を受けることを覚悟の上だった。
しかし、薬局には欲しかった薬がなく、別の町の薬局を教えてくれたが、その町にたどり着くまでにあるいくつもの検問所のことを考えると躊躇した。「赤ん坊を連れて行けば、外出許可証の替りになる」という知人もいたが、薬を買うためだけのために乳児を危険な目に晒すわけにはいかなかった。
多くの女性が産後、同様の判断を迫られている。
外出制限や医薬品不足だけでない。ジンバブエでは、出産後にその女性の家族や親族が身の回りの世話をする慣しがある。ルテンドさんの場合は、出産後の体調回復期に、母親が面倒を見てくれ、食事を作り、赤ん坊の世話も手伝ってくれたという。周囲の支援が、産後鬱の防止に役立つという研究結果もある。
しかし、ロックダウンの中、多くの妊産婦は、周りの支援を受けることができない。社会や個人の支援を受けられず、一人ぼっちになる人たちがいるのだ。
ある女性の場合、母親が300キロ近くも離れた町に住んでいるため、出産時に立ち会ってもらうことができなかった。その女性は帝王切開を受け、回復に時間がかかっていた。身の回りの世話をしてくれたり、会話したりする人がいなかった。年長の子どもは、家の世話をしてくれているため、自分の面倒を見てもらうところまで頼めなかった。
大家族になると、水道がないとか世話を必要とする家族がほかにもいるなど、問題がさらに込み入る。母親は、家族の入浴用の水や飲料水の確保や食事の用意もしなければならなくなる。
ロックダウン中は仕事もできないため、多くの世帯はさらなる困窮に陥る。妊娠女性の多くが、出産のために病院に移動する費用すら払えなくなってしまう。
出産時にも深刻な問題に直面する。
複数の看護師の話では、ベテランの助産師がいる出産待機施設(産婦人科医に隣接する施設)、産婦人科施設を訪れる女性の数が減っているという。その背景には、ロックダウン中の外出の難しさと違反者への暴力的な対応に、妊婦が不安を抱いていることがあるという。
一方で、自宅出産は、未熟な助産師の手を借りることが多く、産婦の罹患や死亡、乳児へのHIV伝染などのリスクが伴う。すでにジンバブエの産婦死亡率は高く、社会問題となっている。
コロナ危機の終息が見えない中、ジンバブエ政府には、妊産婦医療が抱える諸問題への優先的な取り組みが強く求められている。当局は、女性が妊産婦検診、出産待機施設の利用、熟練の産婦人科医らが常に対応できる体制を整備しなければならない。また、産後の医療や支援への配慮も必要である。
アムネスティ国際ニュース
2020年4月29日
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