- 2020年5月27日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ハンガリー
- トピック:難民と移民
(C) DPA Germany
欧州連合(EU)司法裁判所は5月14日、ハンガリー政府による「通過地帯」での難民認定申請者の長期拘束はEU法違反だとする判決を下した。
問題となったのは、イラン人とアフガニスタン人の2家族で、通過地帯にそれぞれ464日と526日間、留め置かれていた。
判決が指摘するのは、次の3点だ。
ハンガリーは、庇護希望を求める家族を通過地帯に1年以上も拘束したこと、家族が置かれている状況について裁判所の審判を仰ぐ機会を設けなかったこと、希望する国に合法的に移動する選択肢を与えなかったことだ。
これらの点で、ハンガリーはEU法に違反したとされた。
今回の判決は、難民認定を拒否し続けるハンガリーへの痛烈な批判でもある。
ハンガリー政府は、難民認定申請の結果が出るまで、あるいは国外退去に関する決定が出るまでの間、申請者を拘束するという非人道的な対応をやめるべきである。
また、今回の判決に従って、通過地帯での庇護希望者の拘束を解くとともに、2家族が味わった苦痛が繰り返されることのないよう、難民関連法を改正すべきである。
ハンガリー政府の対応を巡り、昨年11月には、欧州人権裁判所は、送還すれば非人道的扱いを受けるおそれがあるセルビアに庇護希望者(今回の2家族とは別のケース)を送還したのは、人権上の義務に違反するとの判決を下していた。
今回、EU司法裁判所はさらに踏み込み、正式な決定と適切な保護措置もなく通過地帯に留め置いたのは、恣意的拘束にあたるという見解を示した。
背景情報
イラン人の家族は2018年12月に、アフガニスタン人の家族は2019年2月に、セルビアとの国境にある通過地帯で難民認定の申請をしたが、あっけなく却下され、「安全な国」であるセルビアに戻るよう命じられた。しかしセルビア側が再入国を拒否したため、ハンガリー当局は、2家族の申請内容を十分精査することなく、行き先をそれぞれの出身国に変更する決定をした。
これに対して2家族は、決定の取り消しと難民審査制度の改正を求めてハンガリーの裁判所に異議を申し立てた。2家族は判決が出るまで、通過地帯に留め置かれた。
アムネスティは2015年以降、ハンガリーは難民や庇護希望者の入国を徐々に制限し、難民認定申請の審査中、彼らを恣意的に拘束し、国境外に暴力的に押し戻し、国外退去待ちの人びとに食事を与えず、命の危険にさらすなどの対応をとってきたことを調査で明らかにしてきた。
アムネスティ国際ニュース
2020年5月14日
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