マレーシア:ロヒンギャ難民を海に戻す残虐な方針

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2020年6月29日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:マレーシア
トピック:難民と移民

(C) STR/AFP via Getty Images
(C) STR/AFP via Getty Images

マレーシア当局は、北西部ランカウイ島への上陸を認めたロヒンギャ難民259人を国外追放する方針であることを複数のメディアに語った。

当局者によると6月8日、ボートに乗って漂流していた難民に島への上陸を認めたが、船が修理されれば、食糧を提供した上で海に返すという。何カ月間も漂流してようやく島に辿りついた難民を海に戻せば、再び苦難を味わわせるだけだ。

当局によると、漂流中、少なくとも1人が死亡し、生きながらえた人たちも衰弱し、上陸時、ほとんど歩けなかったという。そんな状況を知りながら、マレーシア政府は、彼らを再び危険な海に戻すという。あまりに無謀で前例がない国外追放だ。国際社会はこれを認めないだろう。

船が結果的に違法に他国に着いたとしても、難民の追放は、国際法の大原則に違反するばかりか、移民の密入出国を禁じるマレーシアの国内法にも抵触するおそれがある。

6月初め、同国は、別の船で到着した数百人のロヒンギャ難民の上陸を許可するという人道的で正しい判断をした。

マレーシアは、絶望の淵にある人たちを突き放すのではなく、バリ・プロセス(人を人身売買の危害から守るための地域協定)に基づく近隣諸国と協議を通じて、この難民問題を解決すべきだ。ロヒンギャ難民の国外追放方針は、かつてない愚策であるだけに、地域全体での対応が早急に必要だ。

追加情報

沿岸警備当局によると、6月8日以降にタイ領海にいたとする別の船を追い返したという。タイ海軍は、領海内で難民船の存在は確認できなかったとしている。

2016年と2017年、ミャンマーのラカイン州に住む100万人近いロヒンギャの人びとが、国軍の迫害を受け、バングラデシュに逃れ、難民キャンプで人道支援に頼って暮らしている。ミャンマーには、今も約60万人のロヒンギャの人びとが住むが、彼らへの「人道に対する罪」は続いている。

国際法は各国に対し、自国の沿岸にたどり着いた難民の人権を守る義務を課している。

ノン・ルフールマンの原則は、迫害や深刻な人権侵害を受けるおそれがある国への送還を禁止している。この原則は、国際難民保護の根幹をなすとともに、拷問や残虐、非人道的で品位を傷つける取り扱いや処罰を絶対的に禁止するための基本でもある。

マレーシアとタイは、難民の地位に関する国連条約(難民条約)やその議定書の締約国ではないが、ノン・ルフールマンの原則は、国際人権諸法、および例外なくすべての国を拘束する慣習国際法の下で尊重されている。

ASEAN人権宣言も、難民の支援と受け入れを謳っている。さらに、集団的排斥の禁止は、タイが加盟する市民的および政治的権利に関する国際規約にも明記されている。

アムネスティ国際ニュース
2020年6月19日

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