ミャンマー(ビルマ):紛争激化 国軍の無差別空爆

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2020年7月20日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:地域紛争

(C) Maxar Technologies
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ミャンマー国軍が、武力紛争が激化するラカイン州とチン州で無差別空爆を繰り返し、多数の住民が犠牲になっていることが、アムネスティの調査でわかった。

アムネスティは5月と6月、2州の住民20人以上にオンラインで聞き取りを実施、また衛星画像を分析し、国軍による人権侵害行為を収めた動画も検証した。

空爆があった地域の住民は、当局による回線切断で1年以上もインターネットを使えず、新型コロナウイルス感染の脅威を知ることができず、人道支援情報も得ることができない状況にある。ラカイン州は、5月までは感染をほぼ免れていたが、6月に入ると感染拡大が始まった。

当局が、全土に外出自粛を呼びかけていた時、国軍は、ラカイン州とチン州で戦争犯罪にあたる住宅の焼き討ちや無差別殺害を行ってきた。

ミャンマー国軍を非難する国際的圧力が高まっているにもかかわらず、国軍が無差別殺害などの残虐行為を今も繰り返している事実は、国軍の幹部内でいかに不処罰の根が深いかを示している。

ラカイン州で昨年1月、ラカイン民族武装グループのアラカン軍が、警察詰所を襲撃したことを受けて、政府はアラカン軍「せん滅」命令を出し、国軍が軍事作戦を開始した。その後、武力紛争が激化し、数十万人もの住民が家を追われた。

国連高等人権弁務官は、ここ最近の戦闘激化や国軍の攻撃予告で、あらたにおよそ1万人が避難していると推定する。

3月から5月にかけて、政府が新型コロナ対策に取り組んでいる最中、紛争は激しくなり、国連によると、紛争による住民の死傷者は、5月だけで30人を超えた。

ラカイン州とチン州での戦闘の犠牲者は、ほとんどが仏教徒で、一部にキリスト教徒もいる。イスラム系ロヒンギャの人びとも人権侵害を受けていると報道するメディアもある。

あちこちから飛来する戦闘機

国軍による空爆は、住民に甚大な被害をもたらした。

3月14日と15日、チン州の村では、ごう音とともに戦闘機が飛来して爆弾を投下し、けたたましい破裂音の中で子どもを含む9人が亡くなった。

4月7日には、別の村が空爆を受け、7人が死亡し9人が負傷した。手助けに来ていた男性は、隣にある自分の村付近でも2機の戦闘機と家屋から立ち上がる煙を見た。男性は、別の村に逃れたが、そこでも爆撃を受けたという。

拘禁や暴行の人権侵害

ラカイン州の住民の証言によると、国軍兵士らは、アラカン軍と関わりがあるとみなした住民を恣意的に拘束している。恣意的拘束は、複数の地域で確認されている。

拘束された男性の一人は、数日間、激しい暴行を受けた上、ナイフを喉元に突き付けられてアラカン軍との関係を認める自白をさせられた。その後、反テロ法違反の容疑で起訴されている。

ここ数カ月、国軍が、紛争に批判的な記者やアラカン軍に関係するとみなした人物に対して、反テロ法違反容疑をかけることが増えている。拘束した住民への暴行は、日常茶飯事だ。5月には、目隠しされた住民らが暴行を受ける様子を撮った動画が拡散し、国軍が暴行を認めざるを得なくなることもあった。

別の郡区の女性の証言によると、ラカイン州で3月、兵士たちが彼女の夫を含む10人を拘束し、抵抗する住民に暴行を加えた。兵士が所属する部隊は、アムネスティの以前の調査で、重大な人権侵害を犯していたことが明らかな軽歩兵師団だった。

兵士たちはまた、日常的に住民の住居を襲い、私有物の奪取や破壊を繰り返している。修道院を接収して暫定の駐屯地にすることもある。昨年も同様の行為が行われていたことは、アムネスティの調査で確認されている。

住民の証言によると、米、まき、毛布、衣類、携帯電話、貴金属品などを強奪され、入り口の戸や窓、仏壇は破壊され、家畜は、惨殺されるか持っていかれた。

国軍は、村々で住宅や学校を焼き打ちし、破壊し、死傷者を出した。

一方、アラカン軍もこれまでと同様、人権侵害を繰り返しているものと考えられる。アムネスティは、新型コロナウイルスの流行や紛争による移動規制で住民との接触が難しかったため、アラカン軍の戦闘と人権侵害に関する現地調査を実施できなかった。しかし、複数の報告によれば、アラカン軍は今も、国軍との戦闘で住民を危険にさらし、脅迫や拘束などを行っている。

インターネット切断で届かない情報

昨年6月、ラカイン州とチン州の計9つの地域でインターネット回線が、当局によって遮断された。その後、一部で使えるようになったが、今年2月に再び遮断された。

政府は、インターネットの遮断は必要だと主張してきた。その根拠は、アラカン軍が、当局者の襲撃、地雷の敷設、憎悪の煽りなどにインターネットを利用しているからだという。だが、遮断により、新型コロナウイルス感染症に関する情報が、住民に届かなくなった。

避難施設で支援活動をする人の話では、新型コロナウイルスのことを知っているのは、住民の5パーセントほどだという。

国軍による人権侵害が再び深刻化する中、アムネスティは、国連安全保障理事会に対しミャンマーの人権状況を国際刑事裁判所に付託するよう、あらためて要請する。

空爆とインターネット遮断は、つい最近のことだが、国軍の常軌を逸した人命軽視は、今に始まったことではない。ミャンマー国軍による残虐行為は、今も続いている上に、その残忍な手口は、ますます巧妙になっている。国軍の人権侵害は、明らかに国際刑事裁判所が対応すべき問題だ。

国連安保理は、行動を起こさなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2020年7月8日

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