エルサルバドル:元大佐 内戦時の司祭銃殺で有罪 不処罰に風穴

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2020年9月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:エルサルバドル
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スペインの全国管区裁判所(全国規模の事件や国外犯に関わる事件を審理する裁判所)が、歴史的な判決を下した。内戦中だったエルサルバドルでスペイン人司祭らの殺害を命じたとして殺人罪に問われていたエルサルバドル軍元大佐のイノセンテ・モンタノ被告に、有罪判決を言い渡した。

内戦中の1989年、首都サンサルバドルで、軍の兵士らがイエズス会の運営する大学構内の居住区に押し入り、ゲリラグループに関わっていたとされる司祭5人を射殺した。その際、料理人とその娘(15歳)も犠牲になった。

1991年、兵士9人が裁判にかけられたが、7人が無罪となり、有罪判決を受けた残り2人も、数年後に恩赦法が可決された2日後に釈放された。

国連の真実和解委員会が、司祭殺害を計画・命令した人物らを特定していたにもかかわらず、その人物らが起訴されることはなかった。

30年近くも、正義を待ち続けてきた犠牲者遺族にとって、今回の判決は、大きな一歩となる。また、遺族や被害者に真相究明、公正な裁き、補償を果たしてこなかったエルサルバドル政府の責任の重さを思い起こさせる。

和平協定締結後ほぼ30年経ったが、武力紛争中の犯罪に関与した人物が、いまだに法の網を逃れ、罪を問われていない。

関係当局は、内戦中に犯された人権侵害事件をめぐる複数の訴訟を抱えているが、これまでに唯一、進展が見られたのは、1981年に住民1,000人近くが犠牲になったエルモゾテの虐殺だ。この事件を担当する裁判官は、当時の軍事作戦を調査するために、近日中に軍の施設に入る予定だ。

同国のナジブ・ブケレ大統領政権にとって、裁判所に資料を提供し、再捜査に協力する姿勢を示す好機だ。協力を拒否するなら、犠牲者と遺族の思いに背を向けた過去の政権と同様の批判は免れない。

大統領を始めとする国の関係者全員に、犠牲者遺族の権利の保障に向けた強い意志と行動が求められている。

背景情報

国連の真実和解委員会によると、1980年から12年間続いた内戦中に拷問や処刑を受けたり、行方不明となったりした市民は、75,000人を超える。

軍は、ゲリラグループを支援しているとみなした地域で、国際法違反の犯罪や人権侵害を数多く行った。武装グループもまた、国際法違反の犯罪や人権侵害を行った。

アムネスティ国際ニュース
2020年9月11日

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