エルサルバドル:非常事態宣言から2年 日常化する人権侵害

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2024年4月 3日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:エルサルバドル
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エルサルバドル政府が一時的措置として非常事態を宣言し、被告人の推定無罪や弁護権など適正手続きの保障を脅かす一連の刑法改正を実施してから2年、今も安全保障戦略の柱として非常事態措置が維持され、国際的な人権義務の無視が続いている。

公正な裁判を受ける権利、刑事事件における合法性の原則、拷問や差別の禁止など、常に保障されるべき権利の停止は、いかなる場合も正当化できない行為だ。しかし、市民団体による多数の人権侵害の申し立てにもかかわらず、それらを無視して決定された。また、国内外の団体は2022年3月末以降の過度の緊急措置や新たな法的枠組みによる人権の危機を批判してきたが、ナジブ・ブケレ大統領は意に介さなかった。

非常事態の継続、行き過ぎた緊急措置の採用、重大な人権侵害の訴えに対する否定、矮小化、隠蔽は、ブケレ政権に人権尊重と人権推進の義務を果たす意思がないことの表れだ。また、人びとに安全か自由かを選択する機会を与えずに、暴力と犯罪の根本問題に対処する長期的で包括的な対策を検討する能力がないことも示している。

今年2月現在、被害者団体や現地の人権団体、報道機関によると、強制失踪327件と恣意的拘束7万8千件以上など、およそ10万2千人が自由を奪われている。過密度148パーセントの刑務所では、少なくとも235人が亡くなっている。

また、人権擁護活動家や反体制派、批判的な声を上げる人は、非常事態下で犯罪者扱いされるため、危険が増している。複数の団体によると、こうした人たちの拘束は34件発生し、直近では今年3月11日、行方不明の娘を捜していた母親が逮捕された。

国内外の団体が指摘する人権侵害を矮小化、隠蔽、否定してきた政権の2期目では、人権侵害がさらに深刻化するとみられている。

政権の姿勢が変わらなければ、刑事手続きの悪用や刑務所での拷問などが日常化し、適正手続き違反や拘束中の死亡件数がさらに増え、自由を奪われている人たちが置かれている厳しい状況がますます深刻化するおそれがある。

国内に抑制と均衡のような体制がなく、国際社会の反応も及び腰な中、暴力と犯罪という複雑な問題をいとも簡単に解決する魔法の公式をブケレ大統領が見つけたかのような誤った幻想が生まれた。

ギャングの暴力が減っても国家の暴力が増えれば、問題の解決にはならない。エルサルバドルは、人権を尊重し、長期的な視点で解決策を探るという包括的な政策に取り組まなければならない。

一方で国際社会には、人権を侵害するいかなる治安体制も許さず、断固とした姿勢で臨むことが求められている。

アムネスティ国際ニュース
2024年3月27日

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