エルサルバドル:非常事態宣言下の深刻な人権侵害

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2022年5月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:エルサルバドル
トピック:

エルサルバドルの国会は4月24日、犯罪組織に関わる殺人事件が急増しているとされる中でブケレ大統領の要請にもとづき先月末に出した非常事態宣言を延長した。

この30日間、ブケレ政権は市民の権利を著しく侵害する措置や対応を取ってきた。国際基準に反する法改正、大量の恣意的逮捕、被拘束者の不当な取り扱いなど、サルバドル当局は容赦なく人権を侵害している。今回、非常事態宣言が延長されたことで、この状況が今後も続くとみられる。

非常事態宣言により、12歳から16歳までの子どもが最長10年の実刑判決を受け、貧困層や社会から疎外された地域の人びとは恣意的に逮捕され、法的弁護を受ける権利もない。囚人は十分な食事を与えられず、換気が悪い監房に押し込まれる。また、ジャーナリストは、犯罪組織の事件を報道しただけで逮捕されてしまう。

エルサルバドル政府は、市民や市民団体や国際社会に対する敵対的な姿勢をやめ、政策が人権に及ぼしている恐ろしい影響を確認する必要がある。

エルサルバドルで起こりつつある人権危機に歯止めをかけるには、国際社会の支援が必要だ。同時にエルサルバドル政府には、人権侵害をやめこれまでにあった人権侵害行為の調査が求められる。

背景情報

3月27日、エルサルバドルの国会は、前週末に犯罪組織関連の殺人が急増したとの報告を受け、ブケレ大統領の要請により非常事態を承認した。この非常事態令は、弁護権や拘束理由を知らされる権利など、国際法上いかなる状況下でも逸脱してはならない特定の基本的権利を停止させる。

国会は3月30日、勾留期限の撤廃、被告人不在の裁判、犯罪組織に所属する12歳から16歳の少年の犯罪に10年以下の実刑、「犯罪組織との関係で直接的、間接的に利益を得る行為」の処罰などを承認した。そのほかにも、国際基準に合わない措置が取られている。

4月5日の法改正では、犯罪組織が作成したと思われるコンテンツを複製する行為が、犯罪になった。犯罪組織関連の暴力事件を報道するジャーナリストが検閲を受け、刑事罰に問われることが懸念される。

ブケレ大統領によると、非常事態宣言が出されてから4月25日までの30日間での逮捕者は、少なくとも1万7千人になる。

市民団体や拘束された人たちの家族は、治安部隊による拘束は不当だと訴えている。治安部隊に拘束された人が、暴力的な扱いを受けている様子を撮った動画も拡散している。例えば、制服を着た人物が、取り押さえられて横たわる人物の顔の上に足を置いて立っている様子の動画もあった。ツイッターの警察のアカウントに投稿されたこの動画は、その後削除されたという。

報道によると、非常事態の中で、少なくとも4人が拘束中に死亡している。一方、エルサルバドル政府は、非常事態宣言に批判的な市民を容赦なく攻撃し、市民団体の幹部や国際団体と関わる人びとを激しく非難している。

アムネスティ国際ニュース
2022年4月25日

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