- 2020年10月 5日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:フランス
- トピック:
(C) Getty Images
フランスで、犯罪要件があいまいな法律が乱用され、平和的なデモ参加者多数が逮捕・起訴されている。アムネスティは新たな調査報告書で、新型コロナウイルス対策で抗議活動が全面的に禁止され、違反した人たち数百人が罰金を科せられてきたことを明らかにした。報告書ではまた、2018年から広がっている抗議運動の中、あいまいな法律の下で、救急隊員やジャーナリスト、人権活動をする人たちが標的にされてきたことも指摘している。
何千人もの人たちが犯罪とみなされるべきではない行為によって、不当に逮捕、勾留、起訴されてきたのだ。風船を放とうとしたり、横断幕を持ったりしただけで拘束された人もいる。
フランスでは、ここ数年、「黄色いベスト運動」、地球温暖化をめぐるデモ、米国でのジョージ・フロイドさん殺害に触発された警官の不処罰と人種差別への反対運動など、全国的な抗議活動が急増している。
あいまいな法律
2018年11月からの9カ月間で、黄色いベスト運動の参加者11,203人が、刑事施設に拘禁された。2018年・19年の2年間でデモ参加者を含む4万人以上が、あいまいな法律の下で有罪となった。こうした法律では「公務員の侮辱」「暴力を標榜するグループへの参加」「許可要件を満たないデモの実施」などを犯罪と定めている。
ある労働組合の幹部はこの2年間で、通常の組合活動の中で5回も罰金刑を言い渡された。ジャーナリストの男性は昨年4月、黄色いベスト運動を撮影中に拘束された。暴行、顔を隠した、暴力行為を準備していたという容疑で起訴されたが、その後、無罪となっている。
昨年、公務員侮辱罪で有罪判決を受けた人は、デモ参加者を含めて20,280人だった。彼らは、何が「侮辱」にあたるのかがあいまいな法律に違反したために、1年以下の刑と15,000ユーロ以下の罰金刑を受けた。
昨年5月、南西部の都市ナルボンヌで警察の暴力に抗議するデモがあった時、「(幸運の印である)スズランにイエス、ゴム弾にノー」と書かれた横断幕を掲げた4人が、「侮辱罪になるぞ」と警告された。南東部の都市マルセイユでは、女性を警棒で殴ろうとした警官を怒鳴りつけた男性が、侮辱罪で罰金刑を言い渡された。
マスクなどの着用をめぐる混乱
警察による催涙ガス、ゴム弾、催涙弾の使用が急増するにつれ、デモ参加者は、マスク、ヘルメット、防護眼鏡を着用するようになった。
これに対して、当局は昨年4月、デモなど抗議活動時のマスクや覆面など顔を覆う行為を全面的に禁止する措置を取った。禁止後の7カ月間で、210人の逮捕者を出し、昨年一年で有罪を言い渡された人は41人にのぼった。催涙ガスやゴム弾から身を守るゴーグルやマスクを所持していただけで起訴された人もいた。
マスクは、今や新型コロナウイルスの感染対策に不可欠であり、デモで顔を覆う行為の禁止は、極めて大きな混乱と困惑を招いている。
「暴力を標榜するグループへの参加」の規定でも、数百人が有罪判決を受けた。あらゆる状況に対応するために規定された犯罪要件が極めてあいまいなため、治安当局は、将来、犯罪を引き起こす可能性があるとみなしただけでも、市民を逮捕・起訴できるようになった。
黄色いベスト運動に参加した女性の1人は、フランス革命記念日にシャンゼリゼで風船を膨らませただけで、「暴力を標榜するグループへの参加」容疑で拘束された。
集会の自由への攻撃
逮捕・起訴は、集会の自由の権利を危機にさらし、抗議活動を委縮させている。これまでデモに参加していた人の多くが、デモへの参加をためらい、参加回数を減らし、大規模な集会を避けるようになったという。
社会を変えるために市民が団結する伝統を持つ国が、市民の抗議活動を処罰するのは、皮肉としかいいようがない。マクロン大統領が、選挙で平和的な集会の権利を守ると公約してから3年、抗議活動はかつてない攻撃にさらされている。
法律にもとづくデモ参加者の取り締まりは、デモ隊を暴力的に鎮圧するよりは目立たないだろうが、市民の権利を損なうことには変わりない。当局は、平和的に行動する市民の犯罪者扱いをやめ、集会の権利の障害となるすべての法律を改正すべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2020年9月28日
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