- 2021年1月21日
- [日本支部声明]
- 国・地域:日本
- トピック:
アムネスティ・インターナショナル日本は、今国会で示されている「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する 法律(以下、感染症法)」の改正案概要の一部に、新型コロナウイルス感染症の患者・感染者が入院措置や調査を拒否した場合などに刑事罰を科す内容が含まれていることに、強い懸念を表明します。
特に、懲役刑が含まれており、身体の自由という基本的人権を脅かすものになっていることに危機感を禁じえません。
新型コロナウイルスの感染急拡大という緊急事態に素早く組織的に対応するために、一時的に一定の人権を制限せざるを得ないのであれば、その場合に設けられる罰則は、あくまで目的を達成するために必要最小限のものであることに加え、人権を保障する相当な手段がなければならず、透明性の確保や第三者による監視などが、事前に設定されなければなりません。
今回提案されている法改正では、刑事罰の導入が感染拡大予防に資するかどうかという点について十分な検証もないまま議論が進められており、人権を制限する必要相当性が見出せません。
日本医学連合、公衆衛生学会、日本疫学会は、刑事罰の導入により、検査結果を隠す、検査に行かないなど、感染コントロールをかえって難しくするような状況を誘発するおそれがあると警鐘を鳴らしています。
入院措置や調査を拒否する理由としては、生計手段を失うことに対する不安や周囲からの偏見・差別などがあると報じられています。これらの事態に対処せずに患者・感染者に責任を押し付けるような拙速な法改正の提案は、国民を守る国家の義務をはき違えた政府による、人権を軽んじた政策であるように思えてなりません。
また、人権侵害を受けた個人を救済する独立した人権機関が設けられていない日本で、人権を制限するような刑事罰を導入するのであれば、恣意的な運用や警察権行使の乱用を防ぐための第三者機関による監視機能を同時に導入する必要があります。
かつて結核・ハンセン病で患者・感染者の強制収容が法律のもとで行われ、科学的根拠が乏しい中、蔓延防止の名目で著しい人権侵害が行われてきたという歴史の反省に立って成立したのが感染症法です。今回の改正案は、新型コロナウイルス感染症だけではなく、その他の一部指定感染症、将来発生しうる新しい感染症の患者・感染者も刑事罰の対象としており、過去の悲劇が繰り返されるのではという懸念が拭えません。
感染症法の改正においては
- 法の主旨に立ち返って感染者の人権が守られることを第一に考えること
- 患者・感染者の入院強制や調査の強要において、刑事罰に頼らないものにすること
- 法が恣意的に運用されないよう、第三者機関による監視などの保護措置を講じること
を求めます。
以上
関連ニュースリリース
- 2024年6月13日 [NGO共同声明]
日本:改定入管法施行後の世界において国際難民法・国際人権法に沿った対応を求める決意声明 - 2024年3月15日 [国際事務局発表ニュース]
日本:同性婚訴訟で画期的な判決 LGBTIにとって待ち望んだ勝利 - 2024年3月11日 [ブログ]
日本:難民・入管制度を改革し、繰り返される悲劇に終止符を - 2023年12月27日 [公開書簡]
日本:ガザ地区での即時停戦に向けた積極的な行動を求める要請書 - 2023年12月27日 [公開書簡]
日本:中国UPR 審査に関する要請書