ミャンマー(ビルマ):キリン ミャンマー国軍企業との提携解消へ

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2021年2月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:企業の社会的責任

日本の飲料メーカー大手キリンホールディングス(キリン)は、ミャンマー国軍が所有する複合企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)との提携を解消すると発表した。アムネスティは、キリンの決断を歓迎する。

アムネスティは長年、キリンが関係するMEHLへの対応に重大な問題があると指摘してきた。その一つが、4年前、国軍が、ロヒンギャの人びとに対する暴力的な掃討作戦を展開していた最中、キリンの子会社ミャンマー・ブルワリーが国軍に献金していたことだ。

アムネスティは昨年9月の調査報告書の中で、国軍の幹部や部隊が、MEHL株を保有し、その配当金を受け取っていたことを明らかにし、国際法上の違法行為や重大な人権侵害に関与する国軍の資金づくりに、キリンほか韓国や中国などの大手企業が関係していると指摘した。

MEHLは、鉱業から製造業まで幅広い業種で国内外の企業と提携している。同社の株主の多くが国軍の幹部や部隊であり、MEHL から配当を受け取る。この株主の多くが、カチン、ラカイン、シャン州などの少数民族に対し、戦争犯罪など国際法違反の犯罪や重大な人権侵害を犯してきた。したがって、MEHLと提携している企業は、国軍が行う人権侵害との関わりが問われるおそれがある。

一方でMEHLは、提携企業との適切な関係作りや株主情報の透明性確保、アムネスティや国連が指摘する点を含む諸問題の解決に向けた組織改革などへの意欲をまったく示していない。

軍事クーデター

2月1日、国軍がクーデターを起こした。その後、抗議する市民多数が拘束され、反対意見など表現の自由の権利が弾圧されている。軍事クーデターを指揮したミンアウンフライン総司令官は、MEHLの株主であり、同社の取締役会を監督するグループの一人だ。MEHLによる人権侵害が、今あらためて問われる事態になっている。

キリンは2月5日付けのニュースリリースの中で、「(国軍の)行動を大変遺憾に思っています」としたうえで、現状では「合弁事業の提携自体は解消せざるを得ません」との見解を示した。

MEHLと合弁事業をしている企業には、韓国の鉄鋼メーカー・ポスコ、シンガポールの投資会社RMHシンガポール、中国の鉱業会社・万宝鉱業などがある。アムネスティは、これらの企業もキリンにならい業務提携を解消するよう求めている。

クーデター以降、MEHLの提携企業が人権侵害に関わるリスクは、ますます高まっている。

ミャンマーに進出するすべての企業へ

アムネスティは、軍事クーデターで議員や活動家が拘束されたことを深く憂慮する。国際企業に対し、ミャンマーでの事業や提携が同国の人権状況に悪影響を与えていないか、あらためて見直すよう求める。

国連のビジネスと人権に関する指導原則は、企業に対し状況を問わず人権デューディリジェンス(企業活動が人権に及ぼす影響を回避・緩和するために取引先などを精査すること)を求めている。

ミャンマーでは、クーデターで人権が損なわれるリスクが高まっている。国軍は、経済関連の省庁を含む政府機能を掌握しているため、今後、企業に対し国軍との直接的取引を求める可能性もある。したがって、これまで人権侵害とは無縁の企業も含め、企業は、それぞれの企業活動や提携が直接的な人権侵害を引き起こさないよう対応が求められている。

アムネスティ国際ニュース
2021年2月5日

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