モザンビーク:カーボ・デルガドでの紛争 横行する市民への残虐行為

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2021年3月10日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:モザンビーク
トピック:地域紛争

(C) AFP via Getty Images
(C) AFP via Getty Images

モザンビークの北東部カーボ・デルガド州で治安部隊・軍の傭兵と反政府武装組織との間の武力紛争が続く中、何百人もの住民が、紛争の全当事者から狙われ、惨殺されるという悲惨な事態が起きている。50万人以上が家を追われ、人道の危機に瀕している。

アムネスティの調査で、紛争当事者が、多くの住民を殺害し、家屋を破壊するなど、重大な国際人道法違反を犯していることが明らかになった。調査報告書では、反政府武装組織アル・シャバブ(ソマリアのアル・シャバブとは別組織)による住民への暴行や殺害、治安部隊による超法規的処刑、政府が契約した南アフリカの軍事会社ディック・アドバイザリーグループ(DAG)の戦闘員の無差別攻撃などについても詳述した。

民間人の生きる権利や国際人道法が無視され何百人もの市民が犠牲になった一方で、国際社会はこの3年間、事態への対応を怠り、武力紛争の激化を招く結果となった。

アムネスティは、すべての紛争当事者に対し民間人を標的とする攻撃や暴力を直ちに停止するよう呼びかけている。また、モザンビーク政府に対し、3者が行った戦争犯罪を至急、調査するよう求めている。

今回の調査にあたり、アムネスティは、モザンビーク15地域の国内避難民79人に聞き取りをした。また、衛星画像、写真、医学や弾道解析の専門家による情報、ソーシャルメディアの情報などを検証し、国際機関のアナリスト、ジャーナリスト、人道支援員、現地人権モニターへの聞き取りもした。

昨年3月、カーボ・デルガド州ではアル・シャバブが大規模な攻撃を仕掛けてから紛争が激化したが、調査は、その戦闘の激化による影響に主に焦点を当てている。

アル・シャバブの残虐行為

アル・シャバブの戦闘員は、住民に卑劣な行為を繰り返している。昨年3月下旬には、キサンガの町を襲撃し、数週間にわたり、殺害、暴行、斬首、焼き払い、強奪などを行った。10代の若者数人の拉致もした。

避難した若い女性や少女は、拉致、拘束、強かん、戦闘員との結婚などの難を逃れたと語った。1人の男性はアムネスティに、「連中は少年も少女も連れて行く。首を切り落としたり、妻にしたり、基地で働かせたり、少年を兵士にしたりする」と語った。

7月、妊娠7カ月の女性が乗っていたバスが、武装組織に襲撃され、乗客全員がバスから降ろされ、銃で撃たれた。その女性は、出血多量のまま置き去りにされたが九死に一生を得て助かり、2カ月後に出産した。

政府側の暴力

警察や軍などの治安部隊もまた、キサンガの住民を捕まえ、暴行や殺害をした。町がアル・シャバブの攻撃を始めてから3日後、治安部隊は、反政府武装組織に協力したとして住民を超法規的に「処刑」してその遺体を穴に投げ入れ、また女性たちを強かんした。

ソーシャルメディアで共有された動画には、逃げようとした女性が、軍の兵士に殺害される様子が映っていた。棍棒で打たれ、多数の銃弾を浴び、道路に置き去りにされた。軍は、本来なら保護すべき住民に狼藉の限りを尽くしていた。

アムネスティは以前、モザンビークの治安部隊による囚人の斬首や拷問、武装組織の戦闘員らの手足の切断、殺害後の死体の投棄が横行していることを指摘した。

軍事会社

治安部隊がアル・シャバブとの戦闘で何度も敗れて以降、政府はディック・アドバイザリーグループ(DAG)を雇い、軍の代替要員として反政府武装組織との戦闘に送り込んだ。

目撃者53人によると、DAGは、ヘリコプターから病院、学校、民家などに機関銃で攻撃し、人が密集するところに手榴弾を投じた。

6月、モシンボア・デ・プライアでのDAGの戦闘を見た女性が語った。「ヘリコプターが飛んできて、銃撃し、爆弾を落とした。両手を挙げたグループは撃たれなかったが、武装した連中と一緒にいて、両手を挙げなかった人たちは、撃たれて殺された」。戦闘員は、ヘリコプターからアル・シャバブの要員が隠れている病院を銃撃し、破壊した。

得られた証言は、DAG戦闘員が住民に容赦ない攻撃を繰り返し、家屋や施設を破壊していることを裏付けた。攻撃は、明らかに国際人道法違反であり、DAGの責任は問われなければならない。

カーボ・デルガド州の紛争

カーボ・デルガド州は過去数十年、国や企業から顧みられず、投資の対象にもならなかった。一方で、自然災害が多く、新型コロナウイルスの流行で、経済状況はさらに悪化していた。しかし、最近、天然ガス、ルビー、黒鉛などの天然資源に恵まれていることがわかり、国際企業が開発権の取得に凌ぎを削りだした。

2017年10月、アル・シャバブが、北の港町モシンボア・デ・プライアを襲撃して以来、戦闘は激化した。

紛争や人道危機の情報収集・分析をするNGOの調べでは、紛争で住民1,300以上が死亡したとされる。国連はカーボ・デルガド州で53万人以上が家を失い、ユニセフはそのうちのほぼ25万人が子どもだという。

アムネスティ国際ニュース
2021年3月2日

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