- 2021年3月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ミャンマー(ビルマ)
- トピック:
(C) (Photo by Kaung Zaw Hein/SOPA Images/LightRocket via Getty Images)
- 戦場用武器が抗議デモ弾圧に転用されている:動画解析で判明
- 少数民族を迫害した兵士がミャンマー市街に配置
- 指揮官の命令での「超法規的処刑」や殺害が日常化
ミャンマー全土で市民が平和的に抗議の声をあげる中、国軍は、戦場で使用する銃器を市民に向けることが急増している。治安部隊の隊員や警官が抗議する市民を弾圧する様子を撮った50本以上の映像をアムネスティが検証したところ、殺害の多くが、「超法規的な処刑」にあたることもわかった。
映像を見ると、軍が使用する武器は、警備用ではなく戦闘用であることは明らかだ。市街地で無差別に実弾を発砲するなど、常軌を逸した行動が散見される。軍の殺りくは今に始まったことではないが、その残虐行為を撮った映像が世界にリアルタイムで配信されるのは、今回が初めてだ。
これらの行為は、抗議の声に狼狽した部隊の隊員個人の過失ではなく、人道に対する罪に関与した過去を持ち、兵士に残虐な手段で公然と殺害させる非情な指揮官らが引き起こしている事態だ。
チン、カチン、カレン、ラカイン、ロヒンギャ、シャン、タアンなどの少数民族は、国軍の残虐な行為に長らく苦しめられてきた。アムネスティは他の人権団体とともに、国連安全保障理事会に対しミャンマーの状況を国際刑事裁判所に付託し、ミンアウンライン最高司令官をはじめとする国軍の上級司令官らを裁判にかけるよう要請してきた。しかし、安保理は動かないまま今日に至り、同じ国軍が、今度は各地で声をあげる市民に発砲する姿を目の当たりにする事態になった。
ミャンマー人権状況担当の国連特別報告者によると、3月4日時点で抗議関連の犠牲者は計61人に上る。5日以降の死者を入れると、数字はさらに膨らむ。
国軍は、直ちに市民の殺りくをやめ、混乱を鎮静化し、不当に拘束した人びとを全員、釈放しなければならない。
アムネスティが検証した55本の動画は、2月28日から3月8日の間にダウェー、マンダレー、モーラミャイン、モンユワ、ミェイッ、ミッチーナ、ヤンゴンなどの都市で地元メディアなどが撮ったものだ。
制裁的な殺傷武器の使用
アムネスティは、殺傷武器の計画的な使用を裏付ける画像を複数、確認した。
3月2日、ヤンゴンのサンチャウン地区で撮影された動画では、狙撃銃を構える警官に指示を出していると思われる指揮官の姿があった。指揮官は、抗議する人びとの中で特定の人に狙いを定めて狙撃する命令を下しているように見える。
ヤンゴンの北オッカラパ地区で3月3日に撮影された動画も衝撃的だ。拘束され、抵抗する様子がなかった男性が、そばにいた警官に突然、撃たれた。男性は地面に倒れ、数秒後動かなくなり、引きずられていった。
カチン州ミッチーナで3月8日、2人が殺され、数人が負傷した。映像では、遠くで銃声がすると同時に黒煙が上がり、群衆が逃げ出した。パニックの中、「やけどがひどい」、「1人死んだ」という叫び声が聞こえ、頭部に大怪我を負った人が運び出された。他にも数人の負傷者が引きずり出され、地面には大量の血が残っていた。
2月28日のダウェーで撮られた動画では、軍の兵士が共に配属された警官にライフルを渡す様子が写っていた。そのライフルを構えた警官は、屈んで狙いを定め、引き金を引いた。周りの警官らから、歓声が上がった。この映像は、著しい人命軽視の姿勢を表しているだけでない。治安当局が計画的に連携していることを示している。
大規模な武器の投入
国営メディアによると、3月5日、複数の軍当局者が、一連の殺害への関与を一切否定し、「たちのわるい連中が、殺害事件の背後にいる(かもしれない)」と発言した。
しかし、アムネスティは、治安部隊がさまざまな軍用銃器で武装していることを確認している。自国製のMA-S狙撃銃、MA-1半自動ライフル、ウージーBA-93・BA-94軽機関銃や中国製RPD軽機関銃などだ。これらの武器を市民に向けて使用することが、不適切で論外であることは言うまでもない。
国連の指針では、治安部隊は死亡や重傷を負う危険がさし迫り、他に手段がない場合を除き、銃器の使用を控えるべきだとしている。しかし、国軍が配備した武器を見る限り、治安当局の鎮圧手法がいかに非情で危険きわまりないかがわかる。
殺傷性が低い武器を無差別に使うだけでも多分に問題だが、半自動ライフルや狙撃銃、軽機関銃などの殺傷性が高い武器の配備命令が、日々、出されている。間違いなく、市民の生死に関わる危機的状況が新たな段階に入っていることを示している。
3月7日にマンダレーで撮影された動画などで見られるように、治安部隊は、催涙ガス、放水車、韓国デクァン社製DK-44閃光弾(大きな爆発音と光を発する)など、物議をかもすデモ制圧手段を使っている。
また、ペッパーボール弾(催涙弾の一種)やトルコ製ゴム弾を仏・伊製薬きょうで使用する散弾銃など、従来の殺傷性の低い武器も使われていることも写真や動画から見て取れる。
殺傷武器の非情な無差別使用
動画を検証して、治安部隊が、多数の犠牲者を出すおそれがある殺傷武器を無差別に使用していることも明らかになっている。
3月1日にモン州モーラミャインで撮られた動画では、ピックアップトラックに乗った治安部隊の隊員が、民家などを見境なく無差別に発砲する光景が映し出されていた。
ヤンゴンのレーダン地区で撮られた2月28日の動画は、撮影者がバルコニーから撮ったものだった。兵士が通りの人たちに催涙ガスや実弾を発射する様子を説明する音声も入っていた。バルコニーには他にも数人いたが、通りにいた警官らがバルコニーの撮影者に気づき、銃声が響き、バルコニーにいた人が、「(誰かが)撃たれた!中に入れ!」と叫んだ。映像には、頭部を負傷した女性がバルコニーで横たわる姿が写っていた。
死者数が急増する中、安保理や国際社会は懸念を表明するだけではなく、直ちに暴力行為をやめさせ、一連の犠牲者を出した者の責任を追及する行動を起こさなければならない。
問題ある軍の配備
写真や動画の解析を進める中、新たにわかったことがある。多数の市民を犠牲にしてきた今回の鎮圧には、国軍からヤンゴン司令部、北西司令部、第33、第77、第101軽歩兵師団が参加し、警官に付き添って時に武器を貸与していたのだ。
第33軽歩兵師団はマンダレー、第77軽歩兵師団はヤンゴン、第101軽歩兵師団はモンユワに現在、配備されている。この3都市では最近、治安部隊による、殺害を含む過度の力の行使があった。
複数の師団は、ラカイン州、カチン州、シャン州北部で、残虐な人権侵害を行ったことで悪名高い。第33軽歩兵師団の兵士は、2016年と2017年にシャン州北部で戦争犯罪を、2017年にラカイン州でロヒンギャに人道に対する罪を犯したとして、アムネスティは非難している。
アムネスティ国際ニュース
2021年3月11日
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