- 2021年5月27日
- [公開書簡]
- 国・地域:日本
- トピック:性的指向と性自認
2021年5月26日
内閣総理大臣 菅 義偉 殿
公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 中川 英明
性的指向や性自認に基づく差別禁止を法律に明記することを求める要請書
性的指向や性自認に関する理解増進に関する法案が、今国会へ提出されることが予定されています。超党派「LGBTに関する課題を考える議員連盟」における与野党の協議を経てまとめられた法案要綱の「目的」や「基本理念」に「差別は許されない」という文言が入ったことは、一歩前進だと評価できるものです。
しかし、依然として法案には性的指向や性自認に基づく差別の禁止が規定されておらず、LGBTIの人権を保護するための法的枠組みとして不十分です。社会権規約委員会の2013年の総括所見および自由権規約委員会の2014年の総括所見などにあるとおり、国連人権機関は、性的指向や性自認を含むあらゆる理由に基づく差別禁止の法整備を行うよう日本政府に対して勧告しています。
アムネスティ・インターナショナルは、国際人権基準に合致した法整備に向けて、差別について国際基準に沿った定義を法律に明記するとともに、性的指向、性自認などに基づくあらゆる形の直接的、間接的な差別を禁止することを法律で明確に規定するよう要請します。
与野党協議によってまとめられた法案要綱を自民党が審議した際に、複数の出席者から差別的な発言があったことが報じられ、社会問題化しています。差別を容認したり助長したりする発言や行動は許してはならないものであり、政権与党の国会議員によるこれらの発言こそ、差別を法律で禁止する必要があることを端的に示しています。自民党の総裁としてこの件に適切にご対応なさるためにも、差別禁止の法制化にご尽力くださるようお願い申し上げます。
世界人権宣言や市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)などの国際人権諸条約は、いかなる差別も受けない権利をすべての人に保障しており、これは性的指向や性自認に基づく差別の禁止をも含意しています。人類共通の普遍的な価値である人権は、性的指向や性自認に関わらずすべての人に平等に適用されなくてはなりません。このことを日本政府として再確認するとともに、性的指向や性自認に基づく差別禁止の法整備を求める市民社会の声(※)に応え、国際人権基準に則った法改正をしてください。
以上
※性的指向や性自認に基づく差別禁止の法整備を求めるキャンペーンに賛同する累計約5万筆の署名が2017年からこれまでにアムネスティ日本に寄せられています。そのうち約4万5千筆は2018年5月に法務副大臣に手交いたしました。
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