- 2021年6月 2日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:日本
- トピック:性的指向と性自認
© AFP/Getty Images
与野党が合意した、性的指向と性自認に関する理解増進を図る法案が、国会に提出される手前にある。
日本が世界に向け、「我が国には差別の余地はない」とのメッセージを発信する歴史的な機会である。このメッセージの発信を可能にする唯一の手段は、差別禁止を法案で明確に示すことである。差別が禁止されない限り、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス(LGBTI)の人びとを完全かつ平等に保護するという、日本が担う国際的な人権義務を果たすことはできない。
今この法案の提出を見送ってはならない。オリンピックを間近に控え、国は、すべての人に対する平等と包摂を擁護する時宜を得た決断ができるはずである。平等と包摂はオリンピック精神に沿うばかりか、日本のLGBTI、その家族やアライ(理解者・支援者)、そして平等と正義を尊重するすべての人びとが長らく求めてきた願いを叶えることになる。
この法案は、単にLGBTIの差別に対する意識を高めるだけで終わってはならない。法律には性的指向や性自認に基づく差別を禁止する明確なルールを誠実かつ包括的に規定し、差別被害者に対する実効性ある救済制度を整えなければならない。
こうした点を踏まえた法整備により、日本は、LGBTIの人びとが日常的に直面する蔑視や差別に対処する諸政策の立案に向け一歩を踏み出せるはずだ。
背景情報
日本には、性的指向、性自認、インターセックスに基づく差別を禁止する法律は、いまだにない。
日本では、差別禁止法の導入に関する議論は延々と引き延ばされてきた。2016年、野党が性的指向や性自認に基づく差別を解消するための法案を提出する一方、自民党は、寛容な社会の推進を目指すというだけの法案の概要を発表した。これに対して、LGBT法連合会をはじめとするLGBTIを擁護する多数の団体は、性的指向や性自認を理由とする差別の禁止に触れていないとして、自民党の法案を批判した。
今年5月、与野党による協議の結果、自民党案に「性的指向や性自認に基づく差別は許さない」との文言が加えられた。だが、この法案が自民党内で協議される中、多数の保守派議員が「差別を理由に裁判が起き社会が混乱する」という懸念を示した。また、LGBTIは「種の保存に反する」などの差別的な発言もあった。
これらの発言に対する世論の批判が高まる中、自民党の総務会幹部は今週、国会への法案の提出を見送ることを再び表明した。法案の提出については、まだ議論の余地はある。アムネスティ・インターナショナルは、自民党に対し、LGBTIへの差別禁止を法案に盛り込むこと、および速やかに法案を国会に提出することを強く求めている。
日本では、7月から東京オリンピック・パラリンピックが開催される。今年1月、100以上のLGBTIの人権団体が菅義偉首相に対し、「オリンピズムの根本原則」として「あらゆる種類の差別」を禁止するオリンピック憲章に沿った差別禁止法の制定を政府に求める書簡を送った。「あらゆる種類の差別」には、性的指向に基づく差別も含まれる。
日本は、市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)や経済的、社会的、文化的諸権利に関する国際規約(社会権規約)など国際人権条約を批准している。両条約は、加盟国に対し市民を差別から保護することを義務付けている。
地方裁判所は3月、国が同性婚を認めなかったのは違憲とする初の司法判断を示した。同判決は、日本での婚姻の平等への扉を開いたと言える。現在、102の市町村と3県が同性カップルの関係を公的に認めるパートナーシップ制度を設けている。
アムネスティ国際ニュース
2021年6月1日
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