ミャンマー(ビルマ):激化する国軍の暴力 座視するASEAN

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. ミャンマー(ビルマ):激化する国軍の暴力 座視するASEAN
2021年6月28日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

(C) STR/AFP via Getty Images
(C) STR/AFP via Getty Images

国軍による市民への暴力が続き、ミャンマーの人権状況は悪化するばかりだ。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、国際的圧力や説明責任にさらされる国軍の盾になるような対応をやめるべきだ。ASEAN加盟国には、恣意的に拘束されている人たちの解放と国軍への武器禁輸措置の支持が強く求められている。

ASEANの相変わらずの不介入姿勢が国軍の暴挙に拍車をかけ、人権と人道上の危機を煽る結果になっている。この姿勢のままでは、ASEANが標榜する信頼性と安定性を著しく損なうことになる。

多数のミャンマー市民のASEANへの不信感は、募るばかりだ。今こそASEAN諸国は、方針を転換し、ミャンマー市民の擁護とアウンサンスーチーさんほか不当に拘束されている多数の市民の自由のために立ち上がり、国際社会とともに行動すべきだ。そして、ミャンマーの人たちの命綱の役割を果たすべきだ。

アウンサンスーチーさんの裁判は、6月14日に始まった。腐敗対策法、国家機密法、電気通信法、輸出入法(無線機の違法輸入)、自然災害管理法、刑法(扇動)違反の計7件で訴追されている。有罪なら数十年の収監に加え、被選挙権も事実上、失う。

国軍は、植民地時代のものも含む多数の抑圧的な法律を使って、アウンサンスーチーさん、野党幹部、多くの反体制派を投獄して、声を封じ、身動きを取れなくすることに躍起だ。

治安部隊による市民の殺傷と拘束は、今も続いている。ビルマ政治囚支援協会によれば、2月1日以来、863人が犠牲になり、負傷者は数えきれない。拘束中の拷問や死亡も報告されている。また、インターネットの規制も続き、メディアの活動、厳しく制限されている。

国軍と、武装した民族組織や抗議グループとの間の戦闘も、激しさを増し、民間人の死傷、家財の破壊が拡大している。何十万もの人が家を追われ、最近起きたカレン州やカヤー州での武力衝突だけでも、約10万人が避難を余儀なくされた。今年、これまでにおよそ20万人が避難しており、人道支援を必要とする国内避難者数は、50万人以上に膨らんでいる。

ASEANは不当に拘束された人びとの解放を

ASEANのジョクホイ事務総長とASEAN議長国であるブルネイのエルワン第2外相らが6月4日、ミャンマーの首都ネピドーでミンアウンライン国軍司令官らと会談した。会談では、先のASEAN首脳会議でまとまったミャンマーの暴力の停止、人道的支援、ASEAN特使の派遣など「5項目の合意」の実施について意見が交わされたが、会議後、対話の進展がうかがわれる報告はなかった。

この会談でエルワン氏がミャンマー側に政治囚の解放を求めたことは、一歩前進と言えるが、ASEANは、この要請をASEANの総意としなければならない。現在拘束されている人びとの参加なしには、ASEANの調停が破綻するのは、火を見るよりも明らかだ。

ASEANは国軍に対し、指導的立場の政治囚は無論、不当に拘束されているすべての市民の解放を強く要請し、同時に、市民に表現の自由・結社の自由・集会の自由の権利を認めるよう求めるべきだ。ビルマ政治囚支援協会によると、2月のクーデター後から6月13日までに拘束あるいは収監されている人は、4,863人にのぼる。

ASEAN首脳会議後、見えない進展

4月24日にジャカルタであったASEAN首脳会議では、ミャンマーからミンアウンフライン最高司令官が出席し、「5項目の合意」がまとまったが、国軍当局は、ミャンマーの情勢が安定化するまでは、「合意」には従わないと繰り返し述べている。

国軍は、4月の首脳会議から6月13日までに、新たに1,474人を恣意的に拘束または収監している。新たな犠牲者は115人にのぼる。

国軍の幹部らは、ASEANの腰が引けた対応を冷笑する始末であり、今後も、国軍による殺害や投獄は、止まることなく続き、「5項目の合意」実施が進まぬ間に、ミャンマーは破綻する事態に突き進んでいくだろう。

国連は、市民の安全確保、人道支援、国軍への武器流入阻止、恣意的に拘束されている人たちの解放などに取り組んでいるが、ASEANは国連のこの取り組みを後押しすべきだ。

国連で高まる武器禁輸要求

ASEAN諸国は、ミャンマーの人権問題に対応する国連総会決議を支持する国と、引き続き交渉しているが、ASEANの中で包括的な武器禁輸を支持する国は少ない。

ASEANはこの国連総会決議を支持すべきだ。不支持は、本来果たすべきASEANの役割の放棄であり、非暴力の市民を殺害・投獄する国軍を支持するに等しい。

たとえ、国連決議が採択されたとしても、決議には法的拘束力がない。従って、中国、ロシア、インドなどからの国軍への武器の流れを止めることはできないだろう。安保理は、早急にミャンマーへの武器禁輸措置をすべての国に義務付け、軍による自国市民の殺りくに歯止めをかけるべきだ。

ASEAN諸国間で反対や意見の相違があろうとなかろうと、ASEANは、国際舞台でミャンマー国軍の盾になっているのが現状だ。この状況を打破し、ASEAN諸国は結束して軍の残虐行為に断固抗議し、同国への武器禁輸を求める声を支持すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2021年6月15日

英語のニュースを読む