ギリシャ:移民・難民への暴力と押し戻しが常態化

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2021年7月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ギリシャ
トピック:難民と移民

(C) Achilleas Chiras/NurPhoto via Getty Images
(C) Achilleas Chiras/NurPhoto via Getty Images

ギリシャの治安当局は、EU法と国際法の人権義務に反して、難民や移民の暴力的なトルコへの押し戻しが日常化していることが、アムネスティの調査で明らかになった。

トルコが一方的にギリシャとの国境を解放したことに対し、昨年2月と3月、ギリシャ当局は、国境を超えてきた移民・難民を強引に押し戻した。アムネスティは、移民・難民の排除のその後を調査し報告書を公表した。

調査では、昨年6月から12月にかけて、主にギリシャ北東部エブロスのトルコとの国境沿いで行われていた押し戻しの実態を調べた。調査にあたっては、移民・難民16人に聞き取りをした。

軍や国境警備隊などが、移民・難民を拘束し、暴力を振るった挙句、エブロス川付近に移送し、必要な手続きを取ることなくトルコに追放した。暴力的な移民の押し戻しが、事実上、国の方針になっていると言える。

治安当局の巧みな連携で、おおよそ1,000人の移民・難民がトルコに押し戻されたとみられる。その中には、何度も入国を阻止された人もいれば、収容施設に入れられた後、トルコに戻された人もいる。たとえ違法でも移民・難民の入国を阻止しようというギリシャの姿勢がうかがえる。

話を聞いた16人のほぼ全員が、当局から暴行を受けるか暴行を目撃していた。暴力には、杖や警棒での殴打、足蹴り、平手打ち、突きなどがあり、大怪我をした人もいた。複数の男性は、取り調べの時に裸にされるなどの屈辱を味わった。証言で明らかになった暴力行為のほとんどは、非人道的あるいは品位を傷つける扱いを禁じる国際法違反にあたる。中には「処罰だ」と言わんばかりに激しい暴力を受けた人もいた。

昨年8月に4回も入国を阻止されたシリア人男性(25歳)によると、共に行動していたグループが、待ち伏せていた兵士に拘束され、国境沿いの川に連れて行かれた。グループの中にいた2人が逃げようとしたところ、兵士に激しく殴られて負傷し、川向こうのトルコ側に運ばれ、トルコ側の救急車で搬送される事態になった。

別の人は、船に乗せられ、国境付近まで河川を移動中、小島の近くで船から降ろされ小島で数日間を凌いだ。ただ、泳げなかった1人は、島に辿り着けずに流されてしまった。

押し戻しが起こっているのは、国境沿いだけではない。ギリシャの内陸部にいた人たちも、拘束されエブロスに戻された。

話をした中で4人は、ギリシャ北部で拘束され、その後、トルコへ押し戻された。その中には、難民認定を受け、すでに1年近くギリシャで暮らしていた人もいた。

シリア出身ですでに難民認定を受けていた男性(31歳)は、北西部のイグメニツァで拘束され、警官に難民認定書を見せたところ、破り捨てられた。その後、エブロスの国境近くの収容所に入れられ、暴行を受けた後、およそ70人とともにトルコに押し戻された。

押し戻しを受けたと証言した全員が、欧州国境・沿岸の警備を担当する欧州対外国境管理協力機関(フロンテックス)の職員が派遣されている地域にいた。アムネスティなどの団体がこれまで、移民・難民が国境から不当に追放されている状況を批判しており、フロンテックスがこの人権侵害の実態を知らないはずはない。

フロンテックスには人権侵害を止める責任がある。その責任を果たせないなら、ギリシャでの活動を停止するか、同国から撤退すべきだ。

背景情報

ヒューマン・ライツ・ウォッチも、アムネスティがこの調査報告書を発表した6月23日に、ギリシャを含むEU域内での人権侵害に対してフロンテックスの説明責任を問う報告書を公表した。

アムネスティ国際ニュース
2021年6月23日

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