アフガニスタン:アフガニスタンに関する調査機関の設置に向けた行動と市民の安全な避難への支援を求める要請書

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2021年9月 9日
[公開書簡]
国・地域:アフガニスタン
トピック:

2021年9月9日

外務大臣 茂木 敏充 殿

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
事務局長 中川 英明

 

アフガニスタンに関する調査機関の設置に向けた行動と市民の安全な避難への支援を求める要請書

 

アフガニスタンではたった数週間で旧政府が崩壊し、タリバンが政権を掌握しました。強制的な連行、集団強かん、大量殺りくなど、過去に組織的な人権侵害を行ったタリバンが復権したことで、すでにアフガニスタン国内では人権が危機にさらされています。報復と迫害の恐怖から何千人ものアフガニスタン人が、カーブル国際空港に押し寄せ、国外避難を望んでいます。

タリバンが制圧したガズニ州において、ハザラ人男性9人が7月上旬に虐殺されたことについては、6人が銃殺、3人は腕を削がれるなどの拷問によって殺害されたという調査結果が明らかになっています。これらの殺害の残虐性は、これまでタリバンが組織的に行ってきた数々の人権侵害を想起させるとともに、ハザラ人のような宗教的・民族的少数派が依然として特別な危険にさらされていることを物語っています。

さらに、各国政府による避難計画が難航していることも相まって、市民に対する報復の危険が高まっています。特に、人権活動家、市民活動家、ジャーナリスト、メディア関係者、学者、女性の指導者、国際機関やアフガニスタン国外での就労経験のある個人が、迫害や攻撃の標的にされています。

同時に、人道危機も深刻化しています。銀行や政府機関は閉鎖され、食糧や水などの生活必需品の価格は上昇しています。今後、食糧をはじめ生活必需品が不足することが懸念されます。また、いつおこるかわからない暴力への恐怖や、人道支援団体に対する規制によって支援物資の供給が困難であり、約500万人の国内避難民にとって先行きが不透明な状況が続いています。

国連人権理事会は、このようなアフガニスタンの人権状況をめぐり8月24日に特別会合を開催しました。しかし、強力な調査権限を持つ機関の設置を求める市民団体などの要請には耳を傾けず、国連人権理事会は国連人権高等弁務官に対して、現行の調査の継続と2022年3月にさらなる報告を行うよう求めるにとどまりました。アフガニスタンの多くの地域で携帯電話の通信が遮断されるなど、人権侵害の実態の把握がますます困難になっている今、アフガニスタン国内において、取り残された市民や、人権侵害と闘う活動家を取り巻く状況は悪化の一途をたどっています。

アムネスティ・インターナショナルは、アフガニスタンにおける人権侵害と人道危機に重大な懸念を表明するとともに、アフガニスタン人の人権を守るよう、日本政府に対し、a) 国連人権理事会第48回通常会合に際し、アフガニスタンに関する事実調査団、あるいはそれに準ずる調査機関の設立実現に向け、早急に行動すること、そして b) アフガニスタンの人たちの安全な避難を支援すること、の2つを要請します。

a) 事実調査団あるいはそれに準ずる調査機関の設立

これまでの交渉や特別会合において、アフガニスタン独立人権委員会、国連人権高等弁務官、国連特別手続き、アムネスティ・インターナショナルなどが、上述の機関の重要性を一貫して明確に訴えてきました。継続的かつ積極的な監視を可能にするメカニズムを設計するためにも、この調査機関には次の4つの⾧期的なマンデートを与えることを提案します。

  1. タリバンだけでなくアフガニスタンのすべての関係者が犯した、すべての国際法上の犯罪および人権侵害について、ジェンダーの側面を含めて調査すること。
  2. 国際法上の犯罪の責任があると疑われているすべての関係者を、通常の民事裁判所における公正な裁判で、死刑に頼らずに裁くための取り組みに貢献すること。これには、刑事責任があると疑われる者の特定や、起訴に向けた証拠の収集・保全に加え、免責をなくし、重大犯罪への説明責任を確保するために必要な措置を勧告することなどが含まれます。
  3. アフガニスタンにおいて、報復行為や差別、権利はく奪に直面している市民(特に女性や少女、人権活動家、ジャーナリスト)の権利保護に向けて、具体的な行動を勧告すること。
  4. 国連人権理事会だけでなく、国連総会、国連安全保障理事会、その他関連する国連機関に対して、それらの会期中に限らず、定期的に報告を行うこと。

これらはすべて、アフガニスタンにおける人権侵害や人道危機に歯止めをかけるために必要な次のことを実現するために、極めて重要なマンデートです。

  • 女性の人権活動家をはじめとする、重大な危険を冒して活動を続ける勇敢な人権活動家への支援
  • 危機への継続的な対応について、国際社会が定期的かつ証拠に基づく報告を行う機会の確保
  • 自らの行動が綿密に調査されているという明確なメッセージを加害者に対して発信すること
  • 責任を追及されることがないがゆえに重大犯罪を助⾧し続けている現在の状況への対処

このような調査機関の設立に向けて、国連人権理事国である日本政府が、9月13日から開かれる人権理事会第48回通常会合において、引き続き建設的な役割を果たしてくださることを期待いたします。

b) アフガニスタンの人たちの安全な避難支援

タリバンに狙われる危険性のあるすべての人びとが必要としているのは、カーブル国際空港およびその他の適切な場所から避難することを現実のものとするための国際社会からの支援です。また、そのためには空港まで安全にたどり着けるようにすることも必要です。避難支援の対象には、政府関係者、各国大使館の現地職員、通訳など諸外国に関係する人々だけでなく、女性活動家、人権活動家、市民社会活動家、学者、ジャーナリスト、脆弱な立場にある特定の集団に属する人々なども含めるべきです。

報復の危機にさらされている人びとが空港までたどり着くためには、現地語での書類作成に加え、移動の際の護衛やタリバンとの交渉が必要とされていますが、現地ではこれら必要な支援が行き届いていません。

アフガニスタンの人たちが安全に避難できるよう支援するために、国際社会との連携の下、積極的な役割を担ってくださるよう日本政府に要請いたします。

以上

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