アフガニスタン:タリバンの抑圧で追い詰められる女性・少女

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2022年8月 3日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:アフガニスタン
トピック:女性の権利

アフガニスタンでは、昨年8月タリバンが実権を掌握して以来、女性・少女の教育、労働、移動などの権利が侵害される事態が続いている。家庭内暴力を受けても保護を求めることができず、差別的な決まりにわずかでも違反すると拘束される。子どもの強制結婚が急増する事態にもなっている。

少女は学校に行くかどうか、働くかどうか、家を出るかどうかなど、日常のさまざまな面で管理され、その管理は日に日に強まっている。

アムネスティは昨年9月から今年6月まで調査を実施し、20州の女性90人と少女11人に聞き取りなどを実施、こうした抑圧的な規則に抗議した女性たちが、脅迫、逮捕、拷問などを受けている実態を明らかにした。調査にはアフガニスタンで活動する団体や活動家、専門家も加わった。

アムネスティはタリバンに対し、女性と少女の権利保護に向けた基本的な方針と施策の転換を求めている。また、国連加盟国と国連安保理を含む国際社会は、至急方針を転換するようタリバンに圧力をかける必要がある。

デモに参加して拘束や拷問

政権を掌握した当初タリバンは、女性と少女の権利を保護することを約束したが、実際は権利を侵害する対応を取った。この差別的対応に抗議した女性たちを待ち受けていたのは、タリバンによる嫌がらせや虐待、強制失踪、心身両面での拷問だった。

アムネスティが聞き取りをした女性の1人は拘束中、家族の写真を見せられ、「俺たちはお前の家族を皆殺しにすることもできるぞ」とタリバン兵に何度も脅された。

別の女性2人は、負傷した仲間の写真がSNSに投稿された後、タリバンは負傷の様子の投稿を阻止する方法を編み出したと語る。公表しづらくするために、乳房や股間を殴るというものだ。歩行中に近寄ってきたタリバン兵に胸を殴られ、「その気になればここでお前を殺すこともできるし、殺しても誰も何も言えない」と罵られたそうだ。こうしたことが、何度もあったという。

タリバンに抗議して拘束されていたことがある女性たちは、拘束中は換気が悪い房に入れられ、少量の食事や水、衛生用品しか支給されなかった。釈放の担保として、自分や家族が二度と抗議活動に参加しない、あるいは拘束中に受けた扱いについて口外しないことを誓約させられた。

「道徳的腐敗」が理由での逮捕と拘禁

女性は、マフラム(近い血族)の男性の付き添いがない外出、あるいはマフラム以外の男性との外出を禁止されている。タリバンが運営する拘禁施設の内部告発者4人によると、マフラムをめぐる決まりに従わなかったとして、「道徳的腐敗」容疑で逮捕される事例が増えている。

拘束されたことがある女子大学生はアムネスティに、「マフラムに関する違反で逮捕され、取り調べで暴行や電気ショックなどを受け、売春婦呼ばわりされた」と話した。

児童婚、早婚、強制婚

今回の調査では、タリバンの支配下で強制婚、女子教育の制限、低就業率などの要因が重なり、児童婚が急増していることも明らかになっている。急増の背景には、経済や人道の危機、女性や少女の将来についての教育的、専門的見識の不足、タリバン関係者との結婚を強いる家族の存在、タリバンによる自分たちとの結婚の強要などの問題がある。

児童婚、早婚、強制婚に取り組む団体の責任者はこう話す。

「アフガニスタンでは、児童婚を加速させるあらゆる要因が揃っている。家父長的な政府、戦争、貧困、干ばつ、学校に通っていない少女たち……。これらがすべて重なれば、児童婚が急増するのは目に見えている」

アムネスティが聞き取りをした母親の1人(35歳)は生活に困窮していた昨年9月、6万アフガニスタンドル(約86,500円)の「花嫁料」と引き換えに、娘(13歳)を隣人(30歳)に嫁がせ、「娘が空腹から解放される」と胸をなで下ろした。その母親は10歳の娘も嫁がせようと思ったが、もっと勉強して将来は家族を養ってほしいと考えているという。ただ、「学校が再開しなければ、あの子も嫁がせるしかない」と話す。

教育を受ける機会の制限

タリバンによって少女が中等教育を受けられない状況は続いている。今年3月、女子生徒の通学は一旦再開されたかにみえたが、タリバンが制服を問題視し、その日のうちに停止となった。女子大学生たちも嫌がらせや振る舞い・服装の制限などを受けて通い辛くなり、多くの女子大生が通学を諦めた。

女子大生の一人は、「大学の警備員からは『服やスカーフを直せ』、学部長からは『いいか、我々があなたたちを守れるのは校内だけだ』と言われた」と話す。

国際社会の責務

国際社会には、安全保障理事会の決議に基づくタリバンの制裁や入国禁止などの措置、あるいは女性と少女の扱いに対する責任をタリバンに問う何らかの圧力が求められている。

国際社会が行動を起こさなければ、アフガニスタンの女性と少女は見捨てられ、至るところで女性らの人権が損なわれる事態になる。

アムネスティ国際ニュース
2022年7月27日

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