- 2022年8月18日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:アフガニスタン
- トピック:
1年前にアフガニスタンを掌握して以来、タリバンは人権に対する攻撃を続けている。少数民族を迫害し、平和的な抗議行動を激しく取り締まり、女性の権利を抑圧し、超法規的処刑や強制失踪でアフガニスタンの人びとに恐怖を与えてきた。
アムネスティの調査で、この1年間のタリバン政権下での目に余る人権侵害が明らかになった。
タリバンは政権発足時、女性の権利、報道の自由、前政府関係者の恩赦を約束していた。にもかかわらず、反タリバン派の人たちへの拷問、報復殺人、強制立ち退きなどが横行している。
1年前、タリバンは人権保護とその促進を公約したが、20年にわたって築かれた人権の体制が一瞬にして崩れ落ちた。タリバンが暴力的な抑圧よる統治を推し進めており、変化への希望はすぐに消え去った。
恣意的な拘束、拷問、失踪、即決処刑が日常的に行われ、女性や少女は権利を奪われ、教育を受けられず、家庭に縛りつけられ、希望のない未来に直面することになった。
アムネスティはタリバンに対し、人権侵害と国際法に違反する行為を直ちに停止するよう求めている。事実上の政府としてタリバンは早急に人権の回復、保護、促進に取り組むべきだ。
一方、国際社会はアフガニスタンでの人権危機に歯止めをかけるために、実効性のある行動を起こし、タリバンの犯罪責任を問うべきだ。
表現と集会の自由
アムネスティの調査で、タリバンの治安部隊が、平和的な抗議活動を取り締まるために、過剰な暴力を用いていることが明らかになっている。いくつかの大都市で、治安部隊は武器を持たないデモ参加者を殴打、銃撃して、集会を妨害した。
治安部隊の暴力で怪我を負ったヘラート州出身のデモ参加者は、アムネスティにこう語った。「道路の側溝で血の海に横たわる男性がいた。殺されたのだと思う。私も腕を折られたが、病院には行かなかった。抗議デモに参加したために逮捕されるのが怖かったから」
表現の自由に対する弾圧は人権擁護者や市民活動家を標的にしており、その多くが嫌がらせや脅迫、拘束を受け、殺害されることもあった。
報道の自由も攻撃を受けた。昨年10月19日、政府メディア情報センターはマスメディアに対し、「イスラム教に反する」報道や「国家的な著名人を侮辱する」報道を禁止する通達を出した。
これまで、80人を超える記者たちが、抗議活動を報道したために逮捕され、拷問を受けている。ある記者はアムネスティにこう語った。「あまりにひどく両脚を殴られ鞭で打たれたため、立つこともできなかった。釈放後、自分の身に起きたことを公言しないと約束する文書に、家族が署名させられた。もし私が口外したら、タリバンは家族全員を逮捕することができる」
恣意的逮捕、拷問、虐待
昨年8月以降、タリバンの命令を破った市民、あるいは前政権に協力しているとみなされた人たちが、タリバン兵から暴行を受けている様子が広く報じられてきた。
何百人もの市民が違法に拘束され、その多くがライフルの銃尻で殴られ、鞭で打たれるなどしている。抗議活動をする女性の1人は、「タリバン治安部隊に解放されたとき、身体中があざだらけだった」とアムネスティに語った。
「裁判も、罪状も、法的手続きもない。路上でいきなり拉致され、私設の刑務所に数日間入れられ、家族や弁護士や公的機関に連絡を取ることもできない。同じ房にいた女性や少女の何人かは、二度と戻ってこず、どうなったのか誰もわからない」
超法規処刑と強制失踪
報復殺人や抵抗勢力とみなされた兵士の即決処刑などが、タリバンの政権奪取以来、繰り返し行われてきたが、これらは戦争犯罪にあたる可能性がある。
数百件におよぶ超法規的処刑が行われ、犠牲者の遺体には銃痕や拷問の跡が残っていた。前政権下で働いていた、あるいは反タリバン勢力に関わったという嫌疑をかけられた人たち多数が行方不明になったままだ。
トラブ・カカールさん(34歳)は、「アフガニスタン国防治安部隊の隊員だった友人はタリバンから『赦免状』を受け取っていたにもかかわらず、タリバンに連行されて以降、行方がわからない」と話した。「タリバンは、友人に目隠しをし、後ろ手に縛った上で、何度も殴った。妻や子どもらが泣き叫ぶ中のことだった。その後、友人が連れ去られた場所を探していた家族が、当局から『捜すな』と警告された」ということだった。
少数民族や宗教的少数派への迫害
政権を掌握してから数週間足らずで、タリバンはハザラ人やトルクメン人、ウズベク人などパシュトゥーン人以外のアフガニスタン人を家や農場から強制的に追い出し、協力者たちに与えた。
強制立ち退きはアフガニスタン全土にわたっていることが報告されており、国内避難民の数がさらに増える要因になっている。国連の推定によると、今年6月までで国内難民は82万人を超えている。
ダイクンディ州で昨年8月30日、タリバンは17歳の少女を含むハザラ人13人を殺害した。アムネスティが聞き取りをした目撃者の証言によれば、13人のうち9人は、タリバンに投降した国防治安部隊の元メンバーだった。この殺害は、戦争犯罪にあたる可能性がある。
女性と少女への制限
タリバンが政権を握って以来、女性に対する暴力が激しさを増している。時には、家族を罰する手段として女性が暴力を受ける。
国防治安部隊の元隊員の妻で、妊娠8カ月だったリダさん(22歳)は、オートバイに乗った2人の武装タリバン兵に銃で撃ち殺された。一緒にいた2人の子ども(2歳と4歳)も犠牲になった。
多くの女性が、自由を奪う制約が高まる中で権利を求めて抗議活動を行ったために逮捕・拷問されている。
タリバンは教育を受ける権利を制限し、何百万人ものアフガニスタンの少女たちの希望を打ち砕いた。昨年 9月17日に中等学校が再開した際、タリバンは6年生以上の女子生徒たちの登校を禁じた。タリバンは、女性教師の増員採用や男女別教育での「適切な」環境が整うまでの暫定的措置と主張しているが、今日にいたるまで何ひとつ実行していない。
カーブル出身の教師(29歳)は、娘の将来への絶望をこう語った。「歴史が繰り返されている。制服を見ると、学生時代や生徒、先生たちのことを思い出す。でも家にいるしかない」
私たちは市民全体の人権が崩壊するのを傍観しているだけではいけない。この1年間アフガニスタンの人たちが耐えてきた悪夢を終わらせるには、国際社会が強く結束し、実効性ある対応を取ることが唯一の希望だ。
アムネスティ国際ニュース
2022年8月15日
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