シリア:包囲で追い詰められる市民

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2021年9月11日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:シリア
トピック:変革を求める中東・北アフリカ

シリア政府は6月24日から、反政府派勢力の拠点であるダルアー県ダルアー・アル・バラド地区を包囲し、人や物資の流入を阻止してきた。数千人は地区外に避難したが、現在、2万人にものぼる市民が包囲下で、食糧や医薬品などの不足で困窮する事態に陥っている。

包囲網の中にいる人びとは、食料や水、医薬品などの入手に日々、悪戦苦闘している。とりわけ唯一の医療拠点が政府軍の爆撃を受けて閉鎖を余儀なくされてから、状況はさらに悪化した。わずかな物資が密売ルートから流入しているが、途方もない価格で売られている。人道支援団体は同地区への出入りができなくなり、すでに限られていた人道支援や医療支援さえも止めせざるを得なくなった。

市民は、自分たちが望んだわけでもない戦闘で大きな犠牲を払っている。政府は今すぐ包囲網を解き、人道団体による支援活動を認め、病人や負傷者の移動を認めるべきだ。

また、すべての紛争当事者は違法な攻撃をやめ、地区外への退避を希望する市民に安全な通行を保障し、国際人道法に準拠した行動を取るべきだ。

アムネスティは8月18日から24日にかけて、医師、活動家、住民、人道支援活動家ら6人に話を聞いた。

人道支援活動家によると、現地の食糧はあと2週間から4週間ほどで尽きるだろうという。電気も医薬品もない。シリア政府は、包囲された地区外の国内避難民にしか援助物資の配給を許可しておらず、支援団体は包囲地区に入ることができない。

人道危機

政府軍は、残る武装勢力を一掃して県全体を支配下に置くために、幹線道路をすべて閉鎖し、締め付けを強めている。

住民によれば、女性と15歳以下の子どもだけが徒歩で域外への移動を許されたが、身分証明書を預けなければならないという。

国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、女性と子どもなど38,000人が、ダルアー・アル・バラド地区から周辺に逃れた。政府が一時検問所を開けて移動を認めたためだが、その後は検問所が閉じられて脱出ができなくなった。国内避難民の多くは親戚や友人の家に身を寄せるが、それ以外の人たちは学校やモスクなど6カ所の避難所で暮らしている。

同地では7月末以来、政府軍と武装グループとの衝突で、市民数百人が死傷した。7月26日の政府軍の攻撃では、地域で唯一の医療施設に砲弾が命中した。2人の医師の話では、患者を自宅に戻し、医者らが自宅を訪問してできる限りの治療をしているという。

重い病状の患者は、以前は政府支配地域の病院に搬送できたが、今は、ほとんど認められなくなっている。病人やけが人の多くは、政府軍による拘束や報復をおそれて、地元から離れない。

住民女性の一人がアムネスティに語った。

「食べ物はほぼ底をつく。パスタ、米、食材など家にあるもので、なんとかしのいでいる。いとこは緊急入院が必要だったが、入院できないまま亡くなった。主要道路が閉鎖されてから、急を要する治療のための他地域への移動も、ほとんど認められない。だから、人道支援と医療支援は絶対必要だ」

メディア関係の活動家によると、包囲は5月の大統領選挙にこの地域が敵対する姿勢をとったことが背景にあるのではないかという。

シリア政府はまたしても、「降伏か餓死か」という戦術に訴えている。

市民の居住地域の不当な封鎖と無差別爆撃を併用し、反政府武装勢力を降伏させ、一掃するのが狙いだ。同地区の市民は、反政府的意見を表明しただけで、飢餓に追いやられ、最低限必要な物資さえ奪われる事態が続いている。

アムネスティ国際ニュース
2021年8月27日

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