アフガニスタン:全土で人権を踏みにじるタリバン

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2021年9月29日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:アフガニスタン
トピック:

タリバンがカーブルを掌握して5週間余り。この20年間に築かれた人権状況は、タリバン支配下で悪化の一途をたどっている。アムネスティ・インターナショナル、国際人権連盟(FIDH)、拷問などの暴力根絶をめざす団体連合OMCTは、アフガニスタンの人権状況を調査して、こう報告した。

タリバンは繰り返し、市民の人権を尊重すると主張するが、市民や降伏した戦闘員の殺害、反タリバン勢力の拠点があるパンジシールでの人道支援の阻止など、人権を侵害する行為が絶えない。これらの人権侵害は、国際法上の違反行為にあたる。また、タリバンは、女性や市民社会の表現の自由に対する制限も復活させている。 

タリバンが、人権の擁護や尊重に真摯に取り組む意思がないことは、明らかだ。報復攻撃や女性に対する各種制限から、抗議デモ、メディアや市民社会の弾圧にいたるまで、その人権侵害は広がるばかりだ。

多くの地域で携帯電話がつながらず、インターネットが遮断され、全土に恐怖心がまん延する中、市民が直面する問題は、数多い。国連人権理事会は、アフガニスタン全土で現在起きている国際法上の犯罪や他の重大な人権侵害の調査、証拠の収集・保存の権限を持つ、強力で独立した機関を設置するべきだ。

人権活動をおそれる風潮

8月15日以降ほぼ毎日、人権を擁護する人たちへの暴力が発生している。タリバンは、人権活動家を見つけ出そうと家々をしらみつぶしにあたったため、多くの活動家が身を隠した。

アムネスティなどの調査団が聞き取りをした1人が、国外に逃れた活動家Mさん(匿名希望)だ。Mさんはタリバンがカーブルに侵攻した日、所属するNGOの車両や装備品、現金などの引き渡しを求める電話をタリバンから受けた。相手は、こちらの名前などを知っているようで、「協力するしか選択肢はない」と迫った。 

その後数日間、電話やWhatsAppメッセージが届き、住所を尋ねられ、指定場所で会うように告げられた。所属する団体の同僚たちは、タリバンから暴行されたことがある。その1人を撮った写真には、背中や腕に受けたムチや暴行の痕が映っていた。

アフガニスタンの人権活動家が直面する脅威は、紛れもない現実だ。タリバンに敵視されているため、いつどこで襲われるかわからない。現実に事務所や自宅に押し入られ、同僚は暴行を受け、身を隠さざるを得なくなる事態が起きている。いつ逮捕や拷問を受けるか、さらに最悪の事態が起きるのではないか。活動家たちは、恐怖と隣り合わせの日々を送っている。かろうじて出国できたとしても、軍基地や隣国で足止めされ、最終的にどこに行けるのか、穏やかな生活に戻れるのか、知る由もない。

アフガニスタンの人たちは、道義的、政治的使命を掲げ、人権、ジェンダーの平等、法の支配、民主的自由などのために懸命に活動している。国際社会は、いかなる手段を行使してでも、この人たちを擁護しなければならない。

記者の迫害

首都カーブルで活動する女性記者2人は、タリバンから受けた脅迫など当時の恐怖をアムネスティに語った。1人は、雇用主から身の危険があると言われ、首都を離れたが、家族は、自身が家を出たことを知ったタリバンから脅迫を受けていた。

もう1人の女性は、タリバンの支配が始まった2週間は、恐怖と不安でいっぱいだったという。当初は、仕事を続けるつもりだったが、タリバンが自宅まで来たために、家族に説得され出国を決意した。

男性記者アブダルさんによると、編集者、記者らが、タリバンからシャリア法とイスラム教の規則に従って仕事をするように告げられたという。「旧政権の崩壊以降、職場に顔を出していない。タリバンが数度、自宅にやってきたため、身を隠しているし、事務所は閉鎖されたから」と話す。

女性・少女の権利、抗議する権利

タリバンの支配で社会に恐怖心が広がった結果、女性の多くは、ブルカを身に着け、男性後見人の付き添いなしでの外出を控え、暴力や報復を誘発する振る舞いを自制するようになった。一方、女性の権利に数多の脅威が迫っているにもかかわらず、全土で女性が、タリバンに抗議の声を上げている。

実施を認められたデモもあるが、多くは認められず、弾圧された。9月4日のカーブルであった女性100人あまりのデモでは、特殊部隊が出動し、空への発砲や催涙ガスも使用され、女性たちは排除された。

活動女性のNさんは9月8日、女性の権利を求めるデモに参加した男友達が、タリバンに激しく殴られた。Nさんはアムネスティに、「男友達はデモ中に拘束され、その後、警察でひどい暴行を受け、腕を骨折した・・・着ていた服が血だらけだったので、服を着替えさせられた上で釈放された」と話した。

内務省は9月8日、「デモに対する方針が成文化されるまで、全土のデモや集会を禁止する」との命令を出した。

国際社会は、タリバンによる人権侵害に対し、見て見ぬふりをしてはならない。国連人権理事会は、具体的な行動の一環として、人権侵害は必ず裁かれるというメッセージを送ると同時に、アフガニスタン全土に拡大する人権侵害の防止に貢献する必要がある。これらの取り組みは、人道に対する罪や戦争犯罪を行った全当事者に対する責任追及のために、国際刑事裁判所で進む捜査の支援と連携して進められるべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2021年9月21日

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