- 2025年12月23日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:アフガニスタン
- トピック:難民と移民

国連の最新統計で、イランとパキスタンだけで今年260万人以上が違法にアフガニスタンに送還されたことが明らかになった。送還された人の約60%は女性と子どもだった。トルコとタジキスタンからも、数千人が送還されている。アフガニスタンへの難民・庇護希望者のすべての強制送還を直ちに停止すべきだ。
同国ではタリバンが人権侵害を激化させ、特に女性や少女に壊滅的な影響を与えている中、最近相次いだ自然災害によって人道危機がさらに深刻化している。帰還者が重大な危害を受ける現実的なリスクは高まっており、慣習国際法であるノン・ルフールマン原則を遵守することは極めて重要である。すべての国に法的義務を負わせる同原則は、重大な人権侵害の現実的なリスクがある場所への強制送還を禁じている。
今年に入り、欧州諸国もアフガニスタン出身者の強制送還を加速させており、メディア報道によればドイツ、オーストリア、欧州連合(EU)は、事実上の当局であるタリバンと強制送還を円滑化するための交渉を行っている。
タリバンによる人権抑圧が十分に立証されているにもかかわらず、イラン、パキスタン、トルコ、タジキスタン、ドイツ、オーストリアなど多くの国が、とりわけ女性、少女、体制批判者に対する人権侵害が広範かつ組織的に行われている国に、アフガニスタンの人びとを送還しようと躍起になっている。人道危機も深刻化しており、同国人口のほぼ半数にあたる2,200万人以上が支援を必要としている状況だ。
アフガニスタンへの強制送還を急ぐ動きは、彼らが国を逃れたそもそもの理由、そして送還された場合に直面する深刻な危険を無視している。これは国家の国際的義務に対する明らかな軽視であり、法的拘束力のあるノン・ルフールマン原則に違反している。
タリバン政権下では、女性・少女が公共生活から体系的に排除されている。12歳以上の教育は禁止され、移動の自由や表現の自由は否定され、国連やNGOでの勤務、国務への関与も禁じられている(空港警備、初等教育、医療などは例外)。旧政権、特に治安・防衛部隊出身者や、人権活動家、ジャーナリストなどタリバンの過酷な政策を批判した人も、深刻な報復に直面し続けている。
アムネスティは2025年7月から11月にかけ、11件のリモート取材を実施した。うち7件はイランあるいはパキスタンから強制送還された人、4件はイラン、パキスタンから即時に送還される危機にあった難民・庇護希望者に対するものだ。
元政府職員に対する攻撃
タリバンとの衝突を受け、パキスタンはアフガニスタン難民の強制送還を強力に推し進めている。一方、2022年に少なくとも260万人のアフガニスタン人が「人口登録」制度のもとで、一時保護と公教育、就労許可、公的医療などの基本的なサービスを受けられていたイランでは、この保護が突然、失われた。2025年3月12日、内務省傘下の外国人移民管理センターが、「人口登録証」がイラン暦1404年(2025年3月21日)の年明けから自動的に失効し、社会経済サービスが受けられなくなると発表したのだ。
さらに、2025年6月のイスラエルとイラン間の敵対行為が激化したことで、イラン当局による大規模な国外退去が拡大。2025年1月から10月までに約160人のアフガニスタン人が違法に国外追放されたが、うち7月から10月にかけて追放された人は、90万人以上に上る。
2021年8月のタリバン政権掌握前、旧アフガン政府や国際機関で勤務していた女性は、2022年初頭にイランへ逃れたが、数カ月後にビザの期限切れで強制送還された。帰国直後にパキスタンへ逃亡し、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のもとで難民申請することができた。しかし2025年6月、警察に家宅捜索され、家族と共にアフガニスタンに強制送還された。
彼女はタリバン支配下の状況をこう語る。「家から自由に外出できない。仕事もない。女子校は閉鎖され、雇用機会もない。私たち(元政府職員や活動家)は、身元が判明するのが怖くて、タリバンが運営する事務所に直接行くことができない」
アムネスティが取材した複数の元政府職員、旧治安部隊員、活動家は、過去の職務や活動のため恐怖の中で生活し、出身州や以前の居住地に戻れないと語った。旧政権下で働いた人たちへの恩赦を宣言したにもかかわらず、タリバンは元政府職員や治安・防衛部隊員を標的にし、恣意的逮捕、拷問、違法拘禁、超法規的殺人を続けている。
こうした人権侵害は、強制送還された人たちに対しても起きている。国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)は、2025年7月から9月までの間に、治安・防衛要員の元メンバー14人の殺害、21件の恣意的逮捕、拷問、虐待を記録した。11月21日、国外で活動するアフガニスタンメディアは、イランから国外退去させられ、故郷のパンジシール州へ向かっていた5人の元治安要員がタリバンに逮捕されたと報じた。
2021年8月以前に治安・防衛機関で勤務していた男性は、2025年4月に「人口登録書」の有効期限切れを理由にイランから強制送還された。男性によれば、イラン当局からアフガニスタン国籍者はアフガニスタンのイラン大使館・領事館で就労ビザを申請すれば再入国が可能だと説明があったが、アフガニスタンに送還された場合に直面する重大な危険については一切言及がなかった。
「領事館で就労ビザを申請できると言われても、元治安要員である私は、そもそもパスポートの申請が恐ろしくてできない。生体認証データが登録されているからだ。それに、イラン領事館に問い合わせた人から、そのような就労ビザは存在しないと聞いた」。
2025年8月、UNHCRの調査で、帰還者の82%が債務を抱えていると報じられた。避難生活、雇用不足、アフガニスタン到着後の生活必需品調達のための借金などが理由だ。
女性・少女への迫害
ジェンダー迫害という人道に対する罪に相当するほどの、世界でも最悪のジェンダーに基づく差別がはびこっているにもかかわらず、女性・少女が大量にアフガニスタンに強制送還されている。国連推計によれば、パキスタンからの送還者の半数が女性・少女であり、イランからの送還者の30%が女性と少女だった(2025年6月時点)。
ある女性の権利活動家は2021年のタリバン政権掌握後パキスタンへ逃れたが、UNHCRに難民として登録され、米国の人道定住プログラム対象者であったにもかかわらず、2025年9月に強制送還された。タリバンは彼女の居場所を言わせようと家族を逮捕し暴行を加えた。送還後、別の州に移住したが、再び国外へ脱出した。
彼女はこう話す。「アフガニスタンにいた時は、家から一歩も出なかった。タリバンに正体を見破られることだけでなく、ヒジャブを着用していないことで逮捕されるかもと、怖かった。女性たちはタリバンを恐れている。タリバンへの恐怖から、みんなの心の中で希望が潰えてしまったと感じている」
すべての国は、アフガニスタンの人びとの強制送還を直ちに停止し、国際法上のノン・ルフールマン原則を遵守しなければならない。これを怠ることは、アフガンニスタン人が直面する重大な危険を無視し、法的・道義的責任から目を背けることを意味する。また、再定住の手段を拡大・迅速化し、アフガニスタンの人権活動家、女性・少女、元政府関係者、ジャーナリスト、その他の高いリスクにさらされている人びとを、 「一応の」難民(一見して明白で、客観的な状況に基づいて難民と認める)とみなすべきだ。
アムネスティ国際ニュース
2025年12月16日
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