- 2021年11月16日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:インド
- トピック:
インド・テランガーナ州の都市ハイデラバードで、広範な監視により人権が危険にさらされている。各国に顔認証技術の使用禁止を求めるアムネスティの調査で明らかになった。
世界でもとりわけ市民の監視を強めている都市ハイデラバードで、リアルタイムでの顔認証を可能にするCCTV(監視カメラ)のネットワークに接続する司令塔施設の建設が始まった。インターネット・フリーダム基金の調査によると、テランガーナ州は、インドでの顔認証プロジェクト数が最も多い。
ハイデラバードの全市民が当局の監視下に置かれるのは、時間の問題だ。そうなれば、通りを歩いていて監視カメラを避けることが、ほぼ不可能になる。
CCTVを使った監視だけでなく、タブレットを使って市民を職務質問し、写真を撮る警察の手法も顔認証に利用されるおそれがある。
顔認証技術は、個人を特定し、行き先、職業、友人関係などを調べあげることもできる。その結果、プライバシーの権利を含む人権が脅かされ、社会的弱者が一層疎外されるおそれがある。
現在、インドにはプライバシー保護の法律がない。政府は、人権侵害につながる技術の使用を直ちにやめるべきだ。
これまで当局は、顔認証技術を利用して市民の人権を脅かしてきた。最近では、新型コロナウイルス感染拡大でのロックダウンの適用、自治体選挙での有権者の身元確認、抗議デモの取り締まりなどで、この技術が利用された。特に、イスラム教徒やトランスジェンダーの人びと、また、社会から疎外される人びとは、監視されるおそれが高い。
アムネスティは、各国政府に対して市民監視の全面的な禁止を求める運動をしてきた。直近では今年始め、米ニューヨーク市民の監視状況を調査し、報告した。
ハイデラバードの調査には、インターネット・フリーダム基金とアーティクル19(表現の自由・知る自由を擁護する国際人権団体)も参加した。
アムネスティは、官民を問わず大規模な監視を目的とする顔認証技術の開発・製造・販売・輸出・利用の全面的な禁止を求めている。
監視をめぐる嫌がらせ
近年テランガーナ州は、顔認証技術の実験場になっている。
建設中の司令塔施設は、最大60万台の監視カメラが捉えた情報を瞬時に処理する能力があるという。カメラの設置地域が、州全体に拡大する可能性もある。監視カメラは、州警察で導入済みの個人を追跡する顔認証ソフトと併用することもできる。
アムネスティ、インターネット・フリーダム基金、アーティクル19の3団体は、ハイデラバードの2地域を選び、それぞれでのCCTVの設置場所を示す地図を作成した。地理空間分析から、各地域面積のそれぞれ53.6%と62.7%に、CCTVの監視が及んでいることがわかった。
2019年11月から2021年7月の間にハイデラバードの警官が通行人にマスクを取らせ、写真を撮っている写真や動画が、ソーシャルメディアで拡散した。警官が、無作為に市民の顔写真を撮り、指紋を取る場面もあった。
インドの法律は、警官が、容疑がない個人の写真を撮ることを禁じている。
顔認証技術の規制
アムネスティは、監視技術を提供する5社(IDEMIA、NECインド、Staqu、Vision-Box、INNEFU Labs)にインド国内での顔認証をめぐる対応や人権への取り組みについて、質問状を送った。
唯一回答したINNEFUは、「顧客ユーザーは、販売会社の規定や条件に従う義務はない」と記すだけで、各質問には答えなかった。その後届いた別の文書には、同社は人権方針を明文化していないことを認めた上で、「インドの法律とガイドラインに従っている」とあった。
アムネスティ国際ニュース
2021年11月9日
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