アフガニスタン:長きにわたる紛争 戦争犯罪と民間人の犠牲

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2021年12月22日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:アフガニスタン
トピック:地域紛争

アフガニスタンでは、今年8月にガニ政権が崩壊するまでに、タリバン、米軍、アフガニスタン軍・治安部隊のすべての紛争当事者が紛争の中で、多数の民間人死傷者を出していたことが、アムネスティの現地での聞き取りなどで明らかになった。

紛争末期には、タリバンによる市民の拷問、超法規的処刑、殺害があり、一方で、米軍とアフガニスタン治安部隊による地上戦と空爆で、多数の民間人死傷者が出た。

今回アムネスティが新たに行った聞き取りや入手した情報は、タリバンが主張する円滑な政権移行にはほど遠い混乱の中、アフガニスタンの人びとは再び、大きな代償を払っていることを示している。

各地で市民が死傷し、自宅、病院、学校、店舗が、犯罪現場のようになった。アフガニスタン市民にとって、あまりに長い紛争だ。被害者が被った損害や失った家族の補償を受けられるようにすること、また、加害者の責任が明らかになることが、不可欠だ。

国際刑事裁判所は、米国とアフガニスタン軍の作戦に対する捜査の優先順位を下げる決定をしているが、この判断は誤りであり、戦争犯罪にあたるすべての事案の捜査を早急に始めなければならない。

国連アフガニスタン支援ミッションによると、今年前半で市民1,659人が殺害され、3,524人が負傷した。

タリバンの残虐行為

タリバンは、全土を制圧した7月と8月に、少数民族、宗教的少数派、治安部隊の元兵士、ガニ政権派とみなした市民らに拷問を加え、殺害した。

9月6日、タリバンは、パンジシール州のバザラックに侵攻した時、およそ20人の住民を異教徒だとして2日間拘束し、食糧や水を与えず、暴行を加え、処刑をするような仕草で脅迫した。けが人の治療を訴える住民には、「死ねばいい」と言い放った。

同じ日、タリバンは近くの村にも入り込み、一軒一軒しらみつぶしにあたり、前政権のために働いたかどうか、尋問した。タリバンは、この日だけで少なくとも6人に、戦争犯罪にあたる処刑を実行した。

また、タリバンは、カンダハール州スピンボルダックでも前政権派の市民を処刑した。ガズニ州とダーイクンディ州では少数派ハザラ人を虐殺している。

タリバンは、各地で携帯電話通信網を遮断したり、インターネットの使用を厳しく制限したりしているため、全土の被害状況の把握はできない状況が続いている。

米国とアフガニスタンの空爆による民間人の犠牲

調査ではこの数年で起きた4回の空爆について調べた。そのうちの3回は米軍、1回はアフガニスタン空軍によるものとみられる。4回の空爆で市民28人が亡くなり、6人が負傷した。空爆は人口が密集する地帯が多く、民間人が犠牲になっている。

昨年11月には、クンドゥズ州であった米軍によるとみられる空爆で、自宅にいた5人が死亡し、6人が負傷した。

民間人を巻き添えにする空爆は、紛争が終わる8月末まで続いた。8月29日には、カーブルにおける米軍のドローン攻撃で、子ども7人を含む10人が犠牲になった。その後米軍は、民間人が犠牲になったことを認めた。

地上戦でも犠牲になる民間人

8回の地上戦についても調べ、計12人が亡くなり、15人以上が負傷したことがわかっている。法の軽視や無視が相まって、米軍が訓練したアフガニスタン治安部隊の迫撃砲が家屋に命中し、潜んでいた住民が亡くなることもあった。

6月にあったクンドゥズ州での戦闘は、特に激しかった。アフガニスタン政府軍は、人口密集地に向けて迫撃砲で攻撃した。一方、攻勢に転じるタリバンは、学校やモスクを襲撃し、家内に潜んでいた住民に食糧を渡すよう要求した。

同じ日、同じ地域で治安部隊によるとみられる迫撃砲が住宅に命中し、子ども1人が亡くなり、2人が負傷した。金属片が脊椎に刺さった12歳の少女は、体が麻痺する中で亡くなった。

住民の1人によると、タリバンはよく攻撃を予告し、退避を促したが、治安部隊や政府軍からの警告は一度もなかったという。

賠償と責任追及

聞き取りをした市民の多くは、攻撃で被害を受けても国の賠償はまったく、あるいはほとんどなかったという。

タリバン政権には、被害者らに補償を提供する法的義務があり、市民が受けた物理的、肉体的、精神的損害の問題に真摯に対応すべきだ。

タリバンと米国は、強固で透明性ある枠組みを作り、市民からの賠償請求に応じることで、国際的義務を果たすべきだ。

紛争の被害者と遺族は、賠償金を受け取り、責任が問われる全当事者は、民間法廷での公正な裁判でその責任を明らかにしなければならない。

調査方法

アムネスティは、今年8月1日から15日にかけてカーブルで現地調査を行い、8月から11月にかけて被害者と目撃者にリモートで聞き取りをした。

また、カーブルで65人に対面での聞き取りを実施し、10州の36人に暗号化された携帯電話アプリで聞き取りをした。

また、アムネスティは、衛星画像、動画、写真、医療情報、弾道情報を精査し、それぞれの専門家からも話を聞いた。

アムネスティ国際ニュース
2021年12月15日

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