ミャンマー(ビルマ):支援を断ち切り紛争避難民を死に追いやる国軍

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2021年12月27日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

ミャンマーの国軍は、2月1日に権力を掌握して以来、市民に無差別な攻撃を加え、家を追われた避難民への水や食糧の配給や医療支援を阻止する対応を取ってきた。アムネスティが、避難民4人、救援活動をする医療従事者や人道支援ボランティアら6人に聞き取りをして明らかになった。

軍は過去60年以上、自決権を求める少数民族武装勢力の支持基盤を崩すために、国境地帯で生活物資の流入ルートを断ち切る対応を取ってきた。今はこのやり方を、「人民防衛隊」(民主派が樹立した「国民統一政府」の部隊)が出動する地域にも適用し、軍のクーデターに抗議する勢力の弾圧を続けている。

市民による武装蜂起に対抗する軍は、無差別な空爆や家々の焼き討ちに加え、少数民族が住む地域への物資の流れを断つ戦術も取っている。

国連によると、クーデター以降、武力衝突や治安の乱れで284,700人の国内避難民が発生し、少なくとも200万人が、新たに人道支援を必要としている。また、2022年、人道支援の必要性は、さらに高まるという。

かろうじて生きながらえる避難民

5月、カヤー州各地で共闘する市民グループと軍との間で衝突が起きた。市民グループに呼応する少数民族武装勢力も戦闘に加わった。軍は、武器を手に抵抗する市民に空爆や砲撃、銃撃を加えるなどし、国連の推定では、6月8日時点で10万人が家を追われた。

ミャンマーの人権状況担当の国連特別報告者は6月、軍が救援物資の配送を妨害するなど、避難民が水や食糧、医薬品を入手するのを阻止していることで、飢餓、病気などで多数の死者が出るとの見解を示した。

カヤー州に住む身重の女性は、5月に夫と子ども2人とともに山に逃れた。防水シートの中で寝起きし、栄養価の高い食事を摂れないまま陣痛が始まったが、死産になり女性自身も亡くなった。

カヤー州の下半身が不自由な男性は、6月に村の仲間の手を借りて、先に森に逃れた妻ら家族3人に合流した。毛布と防水シートで凌いだが、食料と水は限られ、男性の世話に使うゴム手袋も尽きた。1カ月後、支援団体により男性家族は、避難所に落ち着いたが、他の人びと同様、食糧不足や軍の襲撃に怯える日々が続いている。

ミャンマー北西部サガイン管区や中部マグウェ管区、中西部チン州では、軍と、共闘する市民グループ・少数民族武装勢力との間の衝突で93,000人以上が避難した。

国連の推定によると、3月以降、カチン州の少数民族武装勢力と軍の衝突で避難した市民は、15,000人を超えた。

救援物資の遮断

地元で活動する支援者ら6人の証言によると、ミャンマー軍による拘束、食糧や医薬品、救援物資の没収、輸送の制限などで、車での救援物資の配給ができなくなった。

軍は、紛争で疲弊する避難民らへの食糧や医薬品の配給活動の阻止に躍起だった。この状況に対して11月、国連は、ミャンマー南西部の治安を「脆弱」、人道支援が「厳格に規制されている」と形容した。

武力衝突があった南部シャン州の管区で、6月、地元の若者が山中にいる避難民に届ける救援物資を車に乗せたところ、軍の兵士に銃撃された。物資を置いていた学校の倉庫は襲撃され、米などの食糧や医薬品などを根こそぎ奪われた。

車に積み込んだ物資に火をつけられたり、避難する山中に向けた発砲で避難民が移動せざるを得なくなったり、移動中に軍に物資を没収されたりすることもあった。

10月には、避難民に届ける食糧を積んだ車が行く手を阻まれ、荷物を没収され、運転手らが拘束された。その支援チームは、軍の横槍で配給用物資を調達できないなどの理由で、物資の調達をやめた。

5月から武力衝突が続くシャン州の別の管区で活動する支援者によると、6月、道路が封鎖され車に積んだ物資の点検を受けた。最近は、医薬品の配送が全面的に認められなくなった。

別の支援者によると、別の複数の管区でも医薬品の搬送は認められなくなったという。その支援者が所属する団体は、軍の目に付かないよう、支援車であることを示す旗を立てるのをやめ、輸送物資の量を少なくするなどの注意を払っているということだった。

まん延する恐怖

ミャンマー北西部で活動する支援者も同様の問題に直面する中、12月9日、国連はミャンマーの食糧、燃料、医薬品の不足を指摘する報告書を出した。

チン州の緊急対応グループは、道路が封鎖され食糧や医療物資を届けることができないことが多いため、バイクによる少量の物資の配送に切り替えた。

サガイン管区の村で支援活動をする女性は、「避難民を支援する物資が押収され、拘束される。だから、封鎖で動けない時は静観するしかない」と話した。女性が所属する団体は、医薬品はすべて没収されると聞いたため医療品の配布をやめた。

また、衝突が続くチン州とサガイン管区では、物資を運ぶ危険から運転手の手配も難しくなっている。

サガイン管区で活動するボランティア医師グループの1人は、「医薬品の配布ができなかったり、グループに配送される医療物資が届かなかったりする」と話した。この医師グループは、紛争地に赴いて住民の治療や人民防衛隊の手当てなどをする医療従事者のネットワークに入っている。

9月以来、ミャンマー中部と北西部でインターネットが遮断され、医師らは、治療を必要とする人たちの状況把握が遅れ、迅速な対応に大きな支障になっているという。

一方、医療従事者自身も、常に危険と隣り合わせだ。仮設の診療施設が、軍の砲撃を受け、また、医療ネットワークの医師数人が拘束されることがあった。

一連の証言は国中で起きている問題を象徴し、市民に欠かせない食糧や医薬品をミャンマー軍が組織的に奪っている様子を明らかにしている。

軍が市民に対しこのような卑劣な対応を取り続ければ、さらに多くの命が失われるだろう。軍は、紛争で疲弊する人びとへの人道的支援の門戸を全面的に開かなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2021年12月17日

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