ミャンマー(ビルマ):勇気ある市民の抗議 国際社会は一層の支援を

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2022年5月 5日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:

昨年4月、ミャンマー情勢を協議する東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳級会合で合意に至った5項目(暴力の即時停止、建設的な対話、人道支援の受け入れなど)が、1年経った今も実現しない中、ミャンマーの市民は身の危険を顧みず、軍事政権に対する抗議を続けている。

アムネスティは数カ月にわたり、ミャンマー各地でデモを組織したり、デモに参加したりする17人に聞き取りをした。

抗議をする人たちがよく使う手法の一つが、フラッシュモブだ。突然街に現れ、数分、通りを駆け抜けて解散する。前触れもなく、短時間で終わるため、当局の銃撃や摘発を受けにくい。自宅に閉じこもる「サイレント・ストライキ」もよく行われている。ストライキ中は、商店や事務所のシャッターが下ろされ、通りには人影がなくなる。

また、バス内でチラシを配る、壁に抗議文をスプレーで書く、国軍系企業の商品・サービスのボイコットを呼びかけるなどの抗議活動もある。

国軍は、抗議する市民に戦闘用の武器を使用しているため、抗議する市民は国際社会に対し、国軍への武器禁輸という形での支援を求めている。

一方でASEANは、合意した5項目の一つ、即時暴力の停止をミャンマー国軍に強く求めるべきだ。また、国軍の人権侵害を批判し、不当に拘束されている市民の釈放を求める必要もある。

デモの集団に突っ込む軍車両

昨年2月のクーデター直後から、アムネスティなどの人権団体は、国軍に対して非暴力で抗議する市民への銃などの武器の使用をやめるよう訴えてきた。軍の弾圧が続き、多くの市民が、レジスタンス組織に参加し、現在は全土でレジスタンス組織が活動している。

アムネスティは、自制と国際法の遵守、警察の機能再開なども求めてきた。だが、これらの要請は顧みられず、ミャンマーの人権団体「政治犯支援協会」によると、国軍は昨年2月の政権掌握後、市民1700人以上を殺害し、1万3000人以上を拘束してきた。

聞き取りをした人たちは、デモ中に銃撃や殴打や車両の突入など、軍部による非情な攻撃を目撃したり実際に経験したと語った。こうした軍の対応の結果、街頭での抗議活動は目に見えて減少した。また、多くの市民がレジスタンスの一員として戦闘に参加するようになっている。

「デモの参加人数は、最初は数万人、それが数千人、さらに数百人に。今はわずか20人ほど」と話すのは、中部マンダレーの大学生シリーさんだ。以前は政治に無関心だったが、国軍のクーデターで政治に関心を持つようになり、今は女性活動グループのリーダーを務める。

抗議デモの規模が大幅に縮小している中、聞き取りをした何人かは、少人数で動くのも一つの戦術だという。

首都ヤンゴンの大学生でゼネスト委員会の委員リナさんも、「多人数での抗議は危険。昨年12月に20人くらいのフラッシュモブに参加したとき、軍のトラックに突っ込まれ、自分は助かったけど、数人が轢かれた」と話す。

聞き取りをした学生の中には、他にも軍車両に轢かれそうになったという人がいた。

北西部サガイン管区で昨年から抗議活動を組織するエンジニアのヤー・ザーさんは、兵士や警官が村人に銃を向けるのを2度目撃したことから、デモは、兵士の目につかない狭い道を選ぶという。

また、国軍に抗議する人たちは、国軍系企業の商品やサービスのボイコットを呼びかけるチラシの配布や抗議メッセージをソーシャルメディアで送っている。

逃亡生活

聞き取りをした人たちの多くは、「警官らが果物売りや三輪自転車のドライバーになりすまし、また密告者があちこちにいるため、監視や尾行を常に受けている気がする」と話す。

また、各地にある検問所で、通行人は無作為に止められ、所持品検査を受けるため、検問所を通る時は、携帯電話を自宅に置いておくか、メッセージやアプリを削除するという。

ヤンゴンのゼネストの委員長は、「頻繁に抗議が行われる場所には、私服警官らが配置されているので、抗議の場所選びは慎重を期さないといけない」と話す。

話を聞いた人たちのほとんどは、身の安全のために自宅に帰っていないという。帰宅すると当局に捕まるおそれがあるからだ。同時に、自宅を離れて安全な隠れ場所を見つけるのも難しいと嘆く。一方、活動する本人が不在の自宅に当局が踏み込んできたという人が4人もいた。

クーデター直後から国軍に抗議に参加する南部エーヤワディ管区の僧侶ユーヨーさんは、僧院が踏み込まれて便所に隠れて難を逃れた。その後、マンダレーの僧院に身を寄せたが、その僧院も軍の手入れを受け、身分証明書と現金を没収された。

他の地域でも自宅や住み慣れた僧院を離れる人たちが多く、安全な隠れ場所の確保に四苦八苦している様子が浮かび上がってきた。

家族への脅威

メディアのよると、多くの場合、家宅捜索時に本人が不在の場合、替わりに家族の誰かが身柄を拘束されるという。

聞き取りした1人は、「母親を自由にして欲しければ、お前が自首しろ」と言われた。 結局、当局に賄賂を提供して当人も拘束を免れたが、身の安全のため家族は引っ越しを余儀なくされた。また、同様の被害にあった家族は他にも3世帯あった。

国軍が、家宅捜索するはずだった抗議活動のリーダー女性の隣人宅に踏み込み、銃弾を受けた隣人が亡くなるという悲劇も起きている。自身の家族は難を逃れたが、女性は、家族の安全のために連絡を取らないまま、点々と住処を替えている。

しかし、「不当行為に黙っているわけにはいかない」と抗議の組織化は続けるという。非暴力の抗議を続ける決意は、他の多くの活動家も同じだ。

多大な危険と困難と背中合わせの中、国軍に抗議する人たちの多くはミャンマーに留まり、抗議を続けるという選択をしている。僧侶のユーヨーさんは、「抗議を続けることで、みんなに勇気を与え、抗議に立ち上がり、希望が広がるようにしたい。分断と諦めが何よりも怖い」と話す。

モンユワ市の抗議活動のリーダー、ジンマーさんが訴える。「ミャンマーでは市民が殺されている。命の危険はあるが、抗議は続ける。他の国は私たちを助けて欲しい」

アムネスティ国際ニュース
2022年4月22日

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